第1003回 最後の山場、9月の連戦(4) ルーマニアと痛恨のドローで自力での首位突破が消える

■勝利を狙うフランスの先発メンバー

 注目のフランス-ルーマニア戦の行われるスタッド・ド・フランスには78,209人の観衆が集まった。プレーオフ無しで本大会に出場できる首位になるためにはフランスは勝利が必須である。また、この段階で5位と出遅れているルーマニアも勝ってプレーオフへの望みをつなぎたいところである。
 そしてフランスの先発メンバーは以下のとおりである。GKウーゴ・ロリス、DFは右サイドはバカリ・サーニャ、左サイドはパトリス・エブラ、中央にはウィリアム・ギャラスとジュリアン・エスクーデ、守備的MFは右にラッサナ・ディアラ、左にジェレミー・トゥーララン、攻撃的MFは中央にヨアン・グルクフ、右にニコラ・アネルカ、左にティエリー・アンリ、そして1トップにアンドレ・ピエール・ギニャックという布陣である。

■フェロー諸島戦とほぼ同じメンバーのフランス

 直近の試合である8月12日のフェロー諸島戦と比較すると、左の攻撃的MFのフローラン・マルーダに代えて負傷から立ち直ったアンリを起用しているだけで、残りの10人は同じメンバーである。注目すべき点としては、ロリスはフェロー諸島戦以前は第1GKであったスティーブ・マンダンダに変わる存在として先発出場している。また、フェロー諸島戦ではキャリアを積んだ選手の不在が課題となったが、1997年にフランス代表入りしたアンリが復帰している。そしてそのアンリの復帰に伴い、本来ならばギニャックに代わってもいいはずだが、ギニャックがフェロー諸島戦でいい動きをし、唯一の得点をあげたことから、CFの位置を譲ることなく、マルーダが押し出された格好となった。また、この結果として選手商会の際に最も観客から声援の大きかったフランク・リベリー、レアル・マドリッド(スペイン)に移籍して注目を集めたカリム・ベンゼマがベンチでスタートすることになったのである。苦戦を強いられたフェロー諸島戦とほとんど同じ11人を選んだレイモン・ドメネク監督には容赦ないブーイングが浴びせられたことは想像に難くない。

■1年前と大幅にメンバーの入れ替わったルーマニア

 昨年10月11日に行われたルーマニアとのアウエーでの試合の先発メンバーと比較すると、ロリス、ギャラス、エスクーデ、ラッサナ・ディアラ、アネルカ、ギニャックの6人が入れ替わったメンバーであり、1年足らずの間に半数以上の選手が交代したことはこの間のフランスの苦しみを物語っている。一方のルーマニアは前回の本連載で紹介したとおり、フランス以上の苦しい予選となった。予選途中で監督が交代したが、選手も大幅に入れ替わり、スタッド・ド・フランスで国歌を歌った11人のうち、昨年10月のフランス戦に先発していた選手はわずか2人だけである。

■圧倒的に攻めるが痛恨のオウンゴールでドロー

 フランスは立ち上がりからリズムをつかみ、再三ルーマニアのゴールを襲うが、アンリのシュートがクロスバーに嫌われるなど得点にはいたらない。逆に前半終了間際にルーマニアはビッグチャンスを迎えるが、ルーマニアの選手のシュートミスに助けられ、失点を免れる。フランスは前半に数多くのチャンスをつかむが得点できず、両チーム無得点でハーフタイムを迎える。
 前半と同じメンバーで後半は始まる。そして48分、グルクフからのCKをギャラスがヘッドで落としたところをこの日が代表112試合目となるアンリが至近距離から落ち着いてシュート、代表49得点目となるゴールでフランスが待望の先制点を奪う。ところが、55分、フランスにとっては痛恨のプレーが起こる。ルーマニアのクロスをストッパーに入っているエスクーデがクリアミス、後方に飛んだボールはロリスも届かず、痛恨のオウンゴールとなってしまったのである。
 どうしても勝ち点3のほしいフランスはリベリー、ベンゼマをピッチに送り込むが、勝ち越しのゴールは奪えない。6分間という長いロスタイムも大観衆を失望させるための時間でしかなかった。フランスは必勝を期したルーマニア戦で引き分けに終わる。セルビアとの直接対決で勝利してもなお、勝ち点2の差がある。つまりフランスはこのルーマニア戦の引き分けで自力での首位突破が消えたのである。(続く)

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