第1005回 最後の山場、9月の連戦(6) 過去3戦3敗のマラカナで戦うフランス
■残り3試合となった段階での順位
ルーマニアと失意の引き分けに終わったフランス、まだ予選は終わったわけではない。フランスが所属するグループ7の状況であるが、9月5日には5位のオーストリアが最下位のフェロー諸島を迎え、オーストリアが3‐1と勝利している。この結果、グループ7はすべてのチームが7試合ずつ消化したことになる。この段階での順位を確認すると1位セルビア(勝ち点18、得失点差+10)、2位フランス(14、+2)、3位オーストリア(10、0)、4位リトアニア(9、0)、5位ルーマニア(8、-3)、6位フェロー諸島(1、-9)となり、残り3試合である。
フランスは9月9日にセルビアとアウエーで戦うが、この試合でフランスが勝利しても、勝ち点でセルビアを逆転することができない。セルビアの残り試合(10月10日のホームのルーマニア戦、10月14日のアウエーのリトアニア戦)での取りこぼしを期待するだけである。フランスの10月の試合は10日にホームでフェロー諸島戦、14日にもホームでオーストリア戦が予定されている。フランスにとって心配なのは、3位オーストリアの存在である。セルビア戦で敗れるようだと、最終戦の直接対決がプレーオフをかけた戦いになる可能性もあるのである。
■試合前夜にベオグラード入りしたフランス
圧倒的に攻めながらオウンゴールによる失点で追いつかれてしまったルーマニア戦の翌日の日曜日は休養日、翌々日の月曜日から練習が非公開で再開された。そして試合前日の火曜日の夜にパリからベオグラードに2時間半のフライトで移動したのである。ベオグラードに向かった23人のメンバーはルーマニア戦と同じである。ルーマニア戦で警告を受ければ、セルビア戦に累積警告により出場できなくなる危険性を持った選手はウィリアム・ギャラスとヨアン・グルクフの2人がいたが、グルクフはルーマニア戦の終盤にそのリスクを回避する意味もあり、ベンチに退いている。
さて、勝ち点4差でフランスを迎えるセルビアはこの試合で勝利すれば、残り2試合を残しながら首位突破が決定する。このフランス戦の舞台はベオグラードのツルヴェナ・ズヴェズダ競技場、英語ではレッドスター競技場、その名のとおりレッドスター・ベオグラードの本拠地であり、地元ではマラカナと呼ばれている。
■レッドスターと代表チームの本拠地、マラカナ
また、セルビアの前身であるユーゴスラビア代表の本拠地としても、1963年以来、数多くの名勝負の舞台となった。1973年にはチャンピオンズカップ決勝でヨハン・クライフ率いるアヤックス・アムステルダム(オランダ)がユベントス(イタリア)を下して3連覇を達成している。
そして東欧で初開催となった1976年の欧州選手権はメインスタジアムとなり、準決勝のユーゴスラビア-西ドイツは満員の観衆の中で行われ、大会史に残る好ゲームとなった。終盤までユーゴスラビアが2-1でリードしていたが、前回優勝国の西ドイツが追いつき、そして延長戦で4-2と逆転して決勝に進出している。決勝は西ドイツとチェコスロバキアの対戦となり、空席の目立つ中での戦いとなったが、大会史上初めてのPK戦の末、チェコスロバキアが東欧勢として16年ぶりに優勝を果たしている。これが東欧勢の欧州選手権、ワールドカップでの最後の優勝である。
■フランス代表は過去3戦3敗
肝心のフランスの成績であるが、ユーゴスラビア時代にこの競技場でユーゴスラビア代表と3回試合を行っている。最初は1966年ワールドカップ予選、1965年4月18日に対戦しているが、0-1で敗れている。ちなみにこの試合には元日本代表監督のイビチャ・オシムも出場している。1968年欧州選手権でフランスとユーゴスラビアは準々決勝で対戦する。当時は準々決勝を勝ち抜いた4チームが本大会開催国に集まる方式であった。マルセイユでの第1戦は1-1の引き分け、ベオグラードのマラカナでの2度目の対戦となる第2戦はユーゴスラビアが5-1と大勝する。そしてマラカナでの3回目の対戦は1990年ワールドカップ予選のことである。キプロスに引き分けてアンリ・ミッシェル監督を更迭し、ミッシェル・プラティニ監督の初陣となったが、フランスは2-3と敗れている。つまり、過去3戦3敗という相性の悪いスタジアムでフランスは戦うことになるのである。(続く)