第1009回 チャンピオンズリーグ本戦開幕(3) 殊勲の今季初出場ウルリッヒ・ラメ

■第1節に行われた注目の3カード

 前回の本連載ではグループリーグの中でリヨン-フィオレンチーナ(イタリア)、ボルドー-ユベントス(イタリア)、マルセイユ-ACミラン(イタリア)の3カードについてはチャンピオンズリーグあるいはその前身のチャンピオンズカップでの対戦経験があると紹介した。そして奇しくもその3カードはグループリーグの第1節で対戦することになったのである。
 9月15日にグループAのユベントス-ボルドー戦とグループCのマルセイユ-ACミラン戦がいずれも20時45分にキックオフされ、翌16日の同時刻にグループEのリヨン-フィオレンチーナ戦が行われる。

■激しい雨の中、攻勢に出るボルドー

 シード順位は低いとは言え、昨季フランスリーグを制した第3シードのボルドーがこのところ覇権から遠ざかっている第2シードのユベントスにどのように立ち向かうかが注目である。ユベントスは本来の本拠地のデッレアルピ競技場が改修中のため、冬季オリンピックでも使用されたトリノFCの本拠地オリンピック競技場を使用している。ユベントスは伝統の黒と白の縦縞のユニフォーム、そしてビジターのボルドーは赤と白の縦縞のユニフォームでこの一戦に臨む。
 激しい雨の中、ユベントスは攻撃に手間取るが、ボルドーは攻撃の手を緩めず、どちらがホームチームか、どちらが上位シードチームかわからない展開となった。それでもユベントスはイタリアのチームの伝統を見せ、カウンターアタックを仕掛ける。

■新加入GKセドリック・カラッソが負傷退場

 ボルドーのGKは現在フランス代表のセドリック・カラッソ、マルセイユの近くのアビニョン出身で18歳でマルセイユでプロとしてデビューする。クリスタルパレス(イングランド)やギャンガンに一時的に移籍したことはあったが、2005-06シーズンから試合に出場し始め、2006-07にはリーグ戦の全38試合に出場、UEFAカップでも活躍している。
 ところが2007-08シーズンは2部のルアーブルからスティーブン・マンダンダが移籍してきて状況は変わる。カラッソはマンダンダにポジションを奪われる。このシーズンはマルセイユはチャンピオンズリーグにも出場したが、マンダンダが出場し、カラッソはリーグ戦4試合に出場しただけであった。マンダンダに出場のチャンスを奪われたカラッソはトゥールーズに移籍する。トゥールーズでは37試合に出場し、チームの上位進出、UEFAカップ出場に貢献し、今季ボルドーに移籍し、ボルドーでも堂々の正GKとなった。
 そしてこのユベントス戦が初めてのチャンピオンズリーグの試合である。カラッソは数は少ないが鋭いユベントスの攻撃をストップしていたが、アクシデントが起こる。55分にカラッソはビンチェンツォ・イアクインタとの接触プレーで負傷し、ピッチを去ることになったのである。

■元フランス代表のウルリッヒ・ラメ、ユベントスの攻撃をストップ

 フランスで控えGKの背番号は16、ボルドーの背番号16はウルリッヒ・ラメである。1972年生まれの37歳のベテラン、2000年の欧州選手権の優勝メンバーであり、2001年のコンフェデレーションズにも出場しており、日本の皆様もよくご存知の選手であろう。チャンピオンズリーグやUEFAカップの出場キャリアも十分あるが、今季はカラッソがトゥールーズから移籍したためにポジションを奪われ、今季はまだ1試合も出場していない。そのラメにとってシーズン最初の試合がアウエーでのユベントス戦というのは重荷であろう。
 そして代わったラメにユベントスの攻撃陣が襲い掛かる。63分にイタリア代表のビンチェンツォ・イアクインタがゴールを決めて先制する。ユベントスは守勢でもこの1点を守りきるかと思われたが、赤いユニフォームを着たボルドーの力は本物だった。ボルドーはチェコ代表のヤロスラフ・プラシルが75分にFKのこぼれ球をゴールに決め、同点に追いつく。その後もACミランは決定的なチャンスを迎えたが、このシュートをことごとくストップしたのが今季初出場のラメであった。
 これまでユベントスは地元でフランス勢に対し8勝1分と圧倒的な成績を残していたが、ラメの活躍により、ボルドーは敵地トリノで見事に勝ち点1を獲得、シード順は低くともボルドー侮るなかれというメッセージが欧州中に伝わったのである。(続く)

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