第1028回 アイルランドとのプレーオフ(2) 5度目のプレーオフとなるアイルランド
■リバプールでのオランダとの戦いに敗れる
フランスはこれまでホームアンドアウエー方式のプレーオフを経験してこなかったが、対戦相手のアイルランドはこれまでに多くのプレーオフを経験している。
ワールドカップ、欧州選手権の本大会出場国の増加、東欧諸国の自由化による小国の独立、チャンピオンズカップのチャンピオンズリーグへの変革による試合数の増加という理由によって、1990年代の半ばから欧州での予選にプレーオフが組み込まれることになった。欧州でのプレーオフの嚆矢は本大会出場枠がそれまでの倍の16になった1996年の欧州選手権予選である。開催国のイングランド以外の15の椅子を争う史上最大の予選となった。8つのグループに分かれて予選を行った。1位チームならび2位チームのうち成績のよい6チームまでが本大会出場、2位チームのうち成績の悪い2チームでプレーオフを行い最後のチケットを争った。この時の2位チームの中での順位付けは上位4チームとの対戦成績、グループ1で2位のフランスは2勝4分で勝ち点10、8チーム中6位となり最下位での本大会出場であった。
プレーオフに回ったのはグループ5のオランダ（2勝2分2敗、勝ち点8）、グループ6のアイルランド（2勝1分3敗、勝ち点7）の両チームである。この時のプレーオフは翌年の開催地となるリバプールのアンフィールド競技場で12月13日に1試合だけ行われ、パトリック・クライファートの2ゴールによりオランダが勝利、アイルランドは本大会初出場を逃したのである。
■ベルギーに敗れ、フランス行きを逃す
アイルランドはこのプレーオフ出場を契機に4大会連続でプレーオフに出場することになる。1998年ワールドカップ予選、グループ8はルーマニアが独走、アイルランドとリトアニアが2位を争う。予選終盤のリトアニアでの直接対決でアイルランドが勝利し、グループ2位となりプレーオフに出場する。グループ7でオランダとの首位争いで最後に敗れたベルギーがアイルランドの相手である。この大会からプレーオフはホームアンドアウエー方式で行われる。ダブリンでの第1戦は1－1のドロー、ブリュッセルの第2戦では1－2と敗れ、またもや本大会出場を逃したのである。
■グループ首位に届かず、アウエーゴール2倍ルールでトルコに敗れる
そして2000年欧州選手権予選、グループ8は3強（アイルランド、クロアチア、ユーゴスラビアの3チームが激しく競り合った。最終節を迎える段階で、首位ユーゴスラビア、勝ち点1差で2位アイルランド、さらに勝ち点1差で3位クロアチア、そして最終節はクロアチアがユーゴスラビアを迎え、アイルランドはマケドニアに乗り込んだ。ユーゴスラビアはアウエーでクロアチアと引き分けたが、アイルランドも下位のマケドニア相手に引き分けてしまう。アイルランドの順位は2位のままでプレーオフに回ることになった。プレーオフの相手はトルコ、ダブリンでの第1戦の終盤にアイルランドはロビー・キーンのゴールで先制するが、その直後にPKで追いつかれてしまう。そしてブルサで行われた第2戦、スコアレスドローとなり、アイルランドはアウエーゴール2倍ルールが適用される。アイルランドは3大会連続してプレーオフで敗れたのである。
■イランに勝利、4度目の挑戦で2002年ワールドカップに出場
そしてようやくアイルランドがプレーオフで勝利したのが2002年のワールドカップ韓国・日本大会である。グループ2はアイルランド、ポルトガル、オランダが同居するタフなグループとなった。アイルランドとポルトガルはいずれも無敗で7勝3分、勝ち点24で全日程を終え、直接対決の結果は2試合とも1－1、得失点差で上回るポルトガルが1位となりワールドカップ出場、アイルランドは4大会連続のプレーオフ出場となった。プレーオフ出場チームは9チームあったが、アイルランドは抽選の結果、アジアのチームとプレーオフを戦うことになった。開催国である韓国と日本が予選免除で本大会に出場することもあり、アラブ首長国連邦との戦いを制したイランがアジア第5代表としてアイルランドと戦うことになった。ダブリンでの第1戦、アイルランドは難なく2－0とセーフティリードで勝利する。そしてテヘランでの第2戦、アイルランドは余裕の試合運びで終了間際に1点を許すが、通算スコア2－1で極東行きのチケットをつかむ。実に4回目のプレーオフで初めて勝ち抜いたのである。
それ以降、アイルランドはプレーオフにも届かず予選で敗退している。久しぶりのプレーオフ、そして本大会出場に燃えているのである。（続く）
