第1057回 曲がり角のリーグカップ (3) 人気低迷、フランスのリーグカップ

■聖地で行われ、優勝チームには欧州カップの出場権

 前回の本連載では国内にリーグ戦、カップ戦、リーグカップという3つのタイトルがあるのは欧州の強豪国ではフランス以外にはサッカーの母国イングランドだけであり、それ以外に日本も同様であることを紹介した。しかし、リーグカップの位置づけはフランスとイングランドあるいは日本とは大きく異なるのである。今回はその相違点を紹介しよう。
 共通点は前回の連載で紹介したとおり、イングランドであればウェンブリー、フランスであればスタッド・ド・フランスとその国を代表する競技場で決勝が行わる。イングランドのリーグカップの決勝はウェンブリーで行われ、9万人近くの観衆の前で行われる。フランスのリーグカップの決勝もスタッド・ド・フランスに7万8000人の観衆を集める。これは日本のリーグカップも同様であろう。日本に置けるサッカーの聖地、国立競技場で4万8000人の超満員の観客の前で行われる。
 そして優勝チームには欧州カップ(欧州リーグ)への出場権が与えられるのである。

■決勝戦以外で人気が低迷するフランス

 相違点は規模であり、フランスの場合はプロであることが参加条件となっている1部ならびに2部のチーム、それから3部に相当するナショナルリーグのうち、チームのステータスがプロになっているチームだけが参加する。一方のイングランドはプレミアリーグならびに下部のリーグであるフットボールリーグのチームも参加するが、このフットボールリーグはチャンピオンシップ、リーグ1、リーグ2を24チームずつの3つのリーグに分かれており、イングランドのリーグカップの参加チームは92チームでほぼ倍である。しかし、この参加チームの違いはイングランドとフランスのプロチームの数の違いであり、リーグカップそのものの規模の違いではない。
 リーグカップそのものにおける違いは人気である。先述の決勝の観客動員だけを見れば差がないように思えるが、フランスにおいて決勝戦以外の試合の観客動員の低迷は深刻である。かつては決勝戦以外の平均観客動員数は1万3000人を越えてきたが、2007-08シーズンは1万1000人、そして2008-09シーズンにはようやく1万人を超える程度である。また、リーグカップの特徴として地上波のフランステレビジョンで多くの試合が放映されるが、その視聴者数も落ち込んでいる。

■準決勝以下も観衆の多いイングランド

 かたや、イングランドのリーグカップの状況であるが、準決勝の平均観客動員数は3万8000人、準々決勝は2万8000人、ベスト8決定戦は3万2000人である。日本のリーグカップも、決勝戦の観客動員数こそ収容人数の問題もあり絶対数は少ないが、例年プラチナチケットであり、昨年の決勝のチケットは発売開始20分で売り切れとなったと聞く。ワールドカップの本予選をしのぐような人気チケットであり、ファンの関心も高いことがよくわかる。

■リーグ戦にはるかに及ばないリーグカップでの観客数

 フランスでは、聖地スタッド・ド・フランスで行われる決勝は多くの観衆が集まるが、各チームの本拠地で行われる準決勝以下はさびしい限りである。カップ戦なので必ずしも人気チームが上位に進出するわけではないこと、リーグ戦と異なり対戦相手が試合の何ヶ月前から決まっていないことなど、リーグカップやフランスカップと言うカップ戦は往々にして観客動員には悩まされるのであるが、同一カードのリーグ戦と比較をすればいかにリーグカップの人気が低迷しているかがわかる。例えば、トゥールーズ-ナンシー戦というカードであるが、リーグカップはベスト8決定戦が1月13日にトゥールーズの市営競技場で行われた。平日である水曜日の夜に行われた試合で観衆はわずか5000人であった。そしてこの両チームはそのちょうど1週間後、リーグ戦でも対戦する。試合は20日の夜にトゥールーズの市営競技場で行われる。つまり同一曜日に同一の競技場に行われたわけだが、今度は1万3000人の観客が集まったのである。
 この傾向は人気チーム同士の対戦も同様である。サンテエチエンヌ-マルセイユ戦については、昨年12月19日のリーグ戦では2万7000人の観客を集めたが、リーグカップでは1月13日に行われ1万5000人しか集まらなかったのである。
 このようにフランスにおいてリーグカップの人気が低迷している理由はどこにあるのであろうか。(続く)

このページのTOPへ