第89回 アジアで活躍したフランスのクラブの選手(1) セネガル代表の21人
■フランスのクラブから56人が登録された今大会
フランスが早々に敗退した今回のワールドカップ。フランス国内ではテニスのローランギャロス、フランス代表ラグビーチームの南半球遠征、というスポーツイベントの陰に隠れ、サッカー界では来シーズンに向けた各チームの補強、代表監督の人選などの話題が中心となり、テレビの視聴率も低迷した。しかしながら日曜日の昼にキックオフされた決勝戦では前回の決勝のほぼ半分に当たる1200万人の国民がテレビ観戦をした。
今大会、フランス代表が敗退しても継続的にフランス人がサッカーを視聴したのは、フランスのクラブに所属している選手が数多く出場しており、地元のチームの選手がアジアの地で活躍している姿を見るためであろう。本連載第26回ではフランスのクラブから今大会に出場する選手は40人くらいであると書いたが、実際にはそれを上回る56人が登録された。これは過去最大の数字であり、全登録選手の7.6%に相当する。
■フランス人選手はわずか5人、51人は外国人選手
ところが、肝心のフランス代表には本連載第65回で紹介したとおり、控えGKのウルリッヒ・ラメ(ボルドー)とグレゴリー・クーペ(リヨン)、DFのフランク・ルブッフ(マルセイユ)、MFのクリストフ・デュガリー(ボルドー)、FWのジブリル・シセ(オセール)わずか5人であり、残り51人は外国人選手である。
■23人中21人がフランスリーグに所属しているセネガル
その中で多数を占めたのは開幕戦でフランスを破ったセネガルである。23人の選手の中で21人がフランスのクラブに所属し、監督もフランス人のブルーノ・メツである。セネガルの選手の特徴はいわゆるビッグクラブに所属している選手が少ないということである。マルセイユ、パリサンジェルマン、リヨンに所属している選手はいない。選手の所属で最も多いのは最終節までリーグ首位をキープしながらリヨンに負けてしまったランスの4人。アフリカ選手権に出場したフェルディナン・コリー、エル・ハジ・ディウフ、パプ・サール、パプ・ブーバ・ディオップがそのままワールドカップにも選出されている。倒れこみながら決まったディオップのシュートがフランスを大きく狂わせ、セネガルの今大会の躍進のスタートになったことはあらためて紹介する必要もないだろう。
4人のランスに続くのが昨シーズンリーグ14位のスダンの3人である。スウェーデン戦で同点ゴールとゴールデンゴールを決めたアンリ・カマラに加え、ムサ・エンディアエ、サリフ・ディアオがスダンの選手である。2人を送り出しているチームがオセール(昨季リーグ3位)、レンヌ(12位)、モナコ(15位)、ストラスブール(2部リーグ2位で今季は1部に昇格)であり、それ以外にリール(5位)、ソショー(8位)、モンペリエ(13位)、ロリアン(18位)、サンテエチエンヌ(2部13位)、グーニョン(2部14位)の6チームには1人のセネガル代表選手が所属している。
このように選手の所属は12チームにわたり、セネガル人選手がフランスのサッカーシーンに欠かせない存在であることを意味している。彼らの多くはフランス生活が長く、フランス国籍を有しているケースも少なくないが、セネガルのユニフォームを選び、生活の基盤であり母国とも言えるフランスを破ったのである。
■フランスのクラブから国外のビッグクラブへ移籍
一方、セネガル出身でありながらフランス代表のユニフォームを着ているのがパトリック・ビエイラである。さらに元フランス代表となるとペルージャ時代の中田英寿のチームメートであったイブラハム・バもセネガル出身である。ビエイラは若き日をカンヌで過ごし、バはボルドーで頭角をあらわし、国外のビッグクラブに移籍していった。
もちろん、今大会でベスト8に進出したセネガルの選手に多くの国外のクラブから移籍のオファーがかかっている。彼らのサッカー選手としての更なる成功を期待したいが、フランス人選手同様、セネガル人選手についても、フランスリーグが最初のステップとなっていることについては、若干の寂しさを感じざるを得ない。ところが、この傾向は次回紹介するカメルーン人選手の場合は異なっているのである。(続く)