第1086回 マルセイユ、久しぶりのタイトル獲得 (4) 歓喜と熱狂のマルセイユ、17年ぶりの優勝
■連覇と最多優勝を狙うボルドー、初の決勝となるマルセイユ
今年のリーグカップ決勝は3月27日に行われ、ボルドーとマルセイユの顔合わせになった。ボルドーは昨シーズンのリーグカップの勝者である。これまでにボルドーは3回リーグカップを獲得しており、パリサンジェルマンと並んで最多優勝を誇る。
一方のマルセイユであるが、リーグカップを獲得したことはなく、決勝進出の経験すらない。そもそもリーグカップが現在の形になったのは1994-95シーズンからである。リーグカップが始まった頃、マルセイユは1993年の八百長疑惑で2部に降格させられていたのである。マルセイユは1993年のチャンピオンズリーグ、フランスリーグで優勝したものの、タイトルを剥奪されており、その後17年間は国内外のタイトルから見放されている。近年国内リーグでは常に上位に入っているが、不思議とタイトルには縁がない。
■シルバーメダルコレクターのマルセイユ
この17年間を振り返ってみると、国内リーグでは過去16シーズンに7チームが優勝しており、フランスカップでは9チームが栄冠に輝いている。そしてリーグカップでは実に11チームが優勝している。過去16シーズンでいずれかのタイトルを獲得しているチームは実に16チームに上る。マルセイユがなぜこのタイトルホルダーの仲間入りができないのか不思議であるが、1999年と2004年にはUEFAカップ決勝で敗れ、フランスカップでも2度決勝で敗れている。そして最もファンが待望する国内リーグでは1993-94、1998-99、2006-07、2008-09の4シーズンは2位に食い込んでいる。つまり過去16年間で8つの銀メダルを獲得したシルバーメダルコレクターなのである。
そのマルセイユの17年ぶりの優勝なるか、それとも昨季二冠のボルドーが連覇して最多優勝記録を更新するか、対照的なチームの顔合わせとなった。ボルドーはマルセイユがタイトルから遠ざかっているうちに、リーグ2回、リーグカップ3回、合計で5回のタイトルを獲得している。リヨンの黄金期において、2番目に成績がよかったチームはボルドーであり、昨季の優勝もある意味では順当である。
■マルセイユ全盛期にしのぎを削ったボルドー
そして、1980年代後半から1990年代初めにかけてボルドーは大物会長クロード・ベスが率い、マルセイユに対抗したが、ボルドーは財政的な問題を抱え、マルセイユより一足早く1991年に2部降格の憂き目に遭っている。そしてこの時期にマルセイユとボルドーの両チームに所属した選手はベルナール・パルド、ディディエ・デシャンなど少なくない。パルドの場合はボルドーの大物選手をマルセイユがそれ以上の条件で引き抜き、デシャンの場合はマルセイユではポストがなかったということになる。そのデシャンは監督としてマルセイユを率いる。
20年前に似たような姿であり、しのぎを削った両チームの対戦であり、盛り上がりを見せた一戦となった。両チームには2万枚ずつチケットが分配されたが、マルセイユは満員になったにもかかわらず、ボルドー側は空席が目立つ。両チームのサポーターの熱気に差が出る。空席の若干目立つスタッド・ド・フランス、7万5000人の観衆の前でいよいよキックオフ。
■途中出場のマチュー・バルブエナが活躍、ディディエ・デシャン監督の采配的中
前半はややマルセイユが優勢であり、ブランドンのシュートが目立ったが、元フランス代表GKウルリッヒ・ラメが防ぐ。
後半になってデシャン監督がまず動く。52分に主将でCFのママドゥ・ニアンをベンチに下げ、マチュー・バルブエナを投入する。この選手交代がずばり当たる。61分にはルーカスのCKをスーレイマン・ディアワラがヘッドで先制点、67分にはハテム・ベンアルファのパスを受けたバルブエナがラメの守るゴールネットを揺らす。さらに77分にはバルブエナのFKがボルドーの選手に当たり、オウンゴールとなり、バルブエナの加わったマルセイユは3-0と瞬く間に大差をつける。ボルドーも84分に1点を返すが、マルセイユが3-1と勝利し、リーグカップを獲得したのである。
マルセイユにとって優勝は1993年5月のチャンピオンズリーグ以来のことであるが、ミュンヘンでビッグイヤーを主将として掲げたデシャンは監督として今度はリーグカップを掲げたのである。(この項、終わり)