第1093回 リヨン、初めての準決勝(3) 長距離バス移動での第1戦、0-1で惜敗
■アイスランド火山の噴火の影響を受けたリヨン
チャンピオンズリーグ準決勝のリヨンとバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)との戦いは4月21日にまずミュンヘンで行われた。このたびのアイスランド火山の噴火で欧州サッカー界も大きな影響を受けた。現在の欧州サッカー界には欠かせない航空機による移動ができなくなったのである。
ドイツでのアウエー戦を得意としているリヨンであるが、移動のハンディキャップを背負うことになった。リヨンがミュンヘンする入りするまでの足跡をたどってみよう。
■準々決勝で争ったボルドーとリーグ戦で戦い、バスでミュンヘン入り
リヨンは、4月7日にチャンピオンズリーグの準々決勝でボルドーとアウエーで戦って0-1と敗れながら、2試合合計の成績で準決勝に進出したが、11日にホームで行われたリーグ戦のリール戦は1-1でドロー。17日にはリーグ戦でボルドーとの再び対戦することになった。昨季リーグチャンピオンのボルドーは国内リーグでは2月中旬まで首位であったが、最近になって調子を落とし、3連敗で順位を5位まで落としてしまう。さらに、リーグカップでは決勝戦まで進みながらマルセイユに敗れ、チャンピオンズリーグでも先述の通り準々決勝敗退である。地元シャバン・デルマスでリヨンに対するリベンジを果たしたいという執念でこの一戦に臨み、ボルドーはリヨン相手に常に先手を取り、2-2のドロー、久しぶりの勝ち点をあげる。
ボルドーに勝つことができなかったリヨンは4日後にミュンヘンでの試合を迎えることになったが、飛行機に移動が不可能であり、バスによる陸路移動を余儀なくされた。ボルドーから約800キロのバス移動でミュンヘン入りしたのである。
クラブ史上初めてのチャンピオンズリーグの準決勝をバスによる長距離移動で迎えることになったリヨンであるが、途中シュツットガルトを経由して、余裕を持ってのミュンヘン入りである。
一方のバイエルン・ミュンヘンは13回目の準決勝である。そして忘れてはならないのが、審判団である。飛行機の利用ができないことから、主催者は控えの審判団も他国から準備していたが、予定通りイタリアからの審判団がミュンヘン入りした。
■攻勢のバイエルン・ミュンヘン、フランク・リベリーが退場
移動のなかったバイエルン・ミュンヘンは直前のリーグ戦でもハノーバーに7-0と大勝している。その勢いもあり、試合開始からバイエルン・ミュンヘンは攻勢にでる。バイエルン・ミュンヘンの左サイドのフランス代表のフランク・リベリー、右サイドのオランダ代表のアリエン・ロッベンという両サイドからの攻撃に対し、リヨンの守備陣は落ち着いて対応する。リヨンはシュートチャンスはほとんどなく、守勢一方に回る。
そしてなかなか得点を奪うことができないバイエルン・ミュンヘンは次第にリズムを失う。その結果として37分にリベリーがリサンドロ・ロペスに対して後方からタックルを犯してしまい、イタリア人の主審はレッドカードを提示する。交通手段の混乱により他国から審判団が来ていたとしても同じ判定であろう
■10人対10人の戦いに、アリエン・ロッベンが決勝ゴール
守勢だったリヨンには思わぬプレゼントとなり、試合は後半に突入する。ところが、リヨンもジェレミー・トゥーラランが54分にこの日2回目の警告で、ピッチを去ってしまう。6万6000人の大観衆の前でピッチの上には両チーム10人ずつになってしまった。ここから試合は再びバイエルン・ミュンヘンに一方的なものとなる。なかなかゴールを奪うことができない赤いユニフォームの地元チームであったが、69分、ロッベンが25メートルの距離から自らシュートを放つ。このシュートが前方にいたフランク・ミューラーの頭をかすめてややコースが変わりながらもゴールの枠を捕らえる。ここまで好守を続けてきたフランス代表GKのウーゴ・ロリスもこのコースの変化についていくことができず、ボールはゴールネットを揺らす。
リヨンは攻撃陣を大幅に入れ替え、同点を狙ったが、ゴールはバスで移動してきたミュンヘンよりも遠かった。0-1という最少失点で敗れてしまったが、長距離移動のアウエーでの第1戦でのこのスコアは決して悲観するものではないのである。(続く)