第1110回 ワールドカップに臨む23人(3) ラッサナ・ディアラ離脱、ウィリアム・ギャラス回復で23人決定
■人材難のストッパー、ウィリアム・ギャラスが負傷
ワールドカップや欧州選手権前の恒例となったティーニュでの合宿。最終エントリーメンバーより1人多い24人が招集された。この1人多い理由はストッパーの人選である。今回の予選で苦労したポジションはストッパーである。ウィリアム・ギャラスが軸となったが、もう1人のパートナーが固定しなかったことを本連載第1036回でも紹介したとおりである。本来ならば、フィリップ・メクセス、ジャン・アラン・ブームソンにこのパートナーを委ねればいいわけであるが、メクセスはレイモン・ドメネク監督との確執からメンバーからはずれ、ブームソンはワールドカップ予選のルーマニア戦で致命的なミスによる2失点のためにメンバーから除外されている。
前回の本連載で紹介したとおり、ギャラス以外のストッパー候補はセバスチャン・スキラッチ、マルク・プラニュスに加え、本来はサイドバックであるエリック・アビダルが名を連ねている。ところが、ギャラスのふくらはぎの負傷からの回復状況が思わしくないため、このティーニュ合宿での状況を見て、ギャラスが復調していれば、ストッパーのメンバーを外し、ギャラスの状態が思わしくないようであれば、ギャラス自身を外すと言うのが選手選考の責任者であるドメネク監督の目論見であった。
■ラッサナ・ディアラ、ティーニュ合宿から離脱
しかしながら、ここで思わぬアクシデントが起こった。ティーニュ合宿入りして以来、体調不良で練習を休んでいた選手がいたと前回の本連載の最後に書いたが、それがラッサナ・ディアラである。ラッサナ・ディアラは腸の調子が悪く、検査したところ、血液の病気と言うことで5月22日にティーニュから下山することになってしまった。2007年3月のリトアニア戦で代表にデビューしたラッサナ・ディアラはパトリック・ビエイラが負傷した2008年以降は守備的MFとしてフランス代表でのレギュラーの地位を不動のものにしている。ラッサナ・ディアラは、昨年レアル・マドリッド(スペイン)に移籍し、背番号10を背負い、ビッグクラブでも活躍している。予選の終盤はジェレミー・トゥーラランと守備的MFのコンビを組んだ。そのラッサナ・ディアラの離脱は非常に痛いことである。守備的MFのバックアップとしてティーニュ合宿のメンバーに選ばれなかった19歳のヤン・エムビラを代表合宿に選ぶ案も考えられたが、ドメネク監督はラッサナ・ディアラの代役となる選手を招集しないことを発表する。
その一方で、ふくらはぎの負傷でワールドカップ出場が懸念されたギャラスにはゴーサインが出た。
■守備的MF1人で臨む4-3-3システム
この結果、フランス代表の弱点はストッパーではなくなり、守備的MFとなる。フランスは4人のDFラインの前に守備的MFを2人配置し、攻撃的MFを3人配置し、1トップという4-2-3-1システムを基本としてきた。これは上述のトゥーラランとラッサナ・ディアラが存在していたからこそとることができる布陣である。信頼できる守備的MFが1人となってしまったので、フランスは4-3-3というシステムへの変更を余儀なくされるであろう。これは守備力だけではなく、攻撃に関してヨアン・グルクフのポジションもトップ下ではなくなることを意味している。また、守備的MFのジェレミー・トゥーラランの負担も増えることは必至であり、大会後半の戦いは心配である。
■23人のメンバーが決定
そして、23人のメンバーが決定し、あわせて背番号も発表された。GKは1.ウーゴ・ロリス、16.スティーブ・マンダンダ、23.セドリック・カラッソ、DFは2.バカリ・サーニャ、3. エリック・アビダル、4. アントニー・レベイエール、5.ウィリアム・ギャラス、6.マルク・プラニュス、13.パトリス・エブラ、17.セバスチャン・スキラッチ、22.ガエル・クリシー、MFは8. ヨアン・グルクフ、14. ジェレミー・トゥーララン、15.フローラン・マルーダ、18.アルー・ディアラ、19. アブー・ディアビ、FWは7.フランク・リベリー、9.ジブリル・シセ、10.シドニー・ゴブー、11.アンドレ・ピエール・ジニャック、12.ティエリー・アンリ、20.マチュー・バルブエナ、21.ニコラ・アネルカとなったのである。(この項、終わり)