第1113回 南アフリカ入り前の3試合(3) チュニジア相手に先制点を許しドロー

■2008年のチュニジア戦以来の逆転勝利となったコスタリカ戦

 交代出場で代表にデビューしたマチュー・バルブエナの勝ち越しゴールでフランスはコスタリカに逆転勝ちした。勝利はしたものの、この試合でもフランスは先制点を許している。振り返ってみれば、3月のスペイン戦、昨年11月のスタッド・ド・フランスでのアイルランド戦も先制点を許し、3試合連続で先手を取られている。そしてその先手を取られた3試合の戦績は1勝1分1敗である。フランス代表の逆転勝ちは2008年10月14日のスタッド・ド・フランスでのチュニジアとの親善試合以来のことである。
 そしてワールドカップ前の2試合目がそのチュニジアとの対戦である。フランス代表は、5月26日にコスタリカと対戦した後、チュニジアに移動し、27日から30日まではスースで合宿に入る。そのチュニジア合宿の最終日にチュニジア代表と親善試合を行う。

■4回目の対戦となるチュニジア戦

 フランスはチュニジアとこれまで3回対戦している。いずれも親善試合で最初の対戦は1978年5月にビルヌーブ・ダスク、2回目の対戦は2002年8月にチュニスで、そして最後の対戦は先述の2008年秋のことである。最初の対戦はワールドカップ・アルゼンチン大会の直前の準備の試合である。そして2度目の対戦は韓国でのワールドカップで1点も奪うことができずに惨敗し、チームの再出発となる試合である。また、2008年秋の対戦は今回のワールドカップの予選が始まったばかりの段階でスタッド・ド・フランスで対戦している。スタッド・ド・フランスの試合は多くのチュニジア系住民が集まり、国歌演奏の際にブーイングの嵐となり、国内が大騒動となったことは本連載第904回で紹介したとおりである。
 試合会場となったラデスの11月7日競技場には5万5000人の観衆が集まった。大会前の3試合の中では最も多い観客の中で試合を行う。そして試合前には両国の国歌演奏が行われるが、ブーイングもなく混乱のないままにキックオフを迎える。

■GK以外はコスタリカ戦と同じ先発メンバー

 注目のフランスのメンバーであるが、GKに第1GKのウーゴ・ロリスを起用した以外はコスタリカ戦とまったく同じである。DFは右からバカリ・サーニャ、ウィリアム・ギャラス、エリック・アビダル、パトリス・エブラ、MFは右からヨアン・グルクフ、ジェレミー・トゥーララン、フローラン・マルーダ、FWは中央にニコラ・アネルカ、両翼は、右にシドニー・ゴブー、左はフランク・リベリーである。コスタリカ戦に引き続き、4-3-3システムを採用する。フランス代表としては新しいシステムであるが、選手の所属する国外のクラブチームではこのシステムを採用しているチームが少なくない。そのような理由もあり、コスタリカ戦は新システムに選手たちは問題なく適合したかに見えた。
 チュニジアはワールドカップ出場を逃し、今年初めに行われたアフリカ選手権でもグループリーグで3引き分けで敗退している。それ以降は試合を行っておらず、5か月ぶりの試合である。メンバーの中にはベテラン選手も含まれ、完全に若手中心と言うわけではないが、比較的簡単な相手である。また、先発メンバーにはフランスリーグに所属する選手が3人名を連ねている。ちなみにフランスの先発メンバーでフランスのクラブに所属する選手はロリス、トゥーララン、ゴブー(以上リヨン)、グルクフ(ボルドー)の4人である。

■4試合連続で先手を奪われ、3年ぶりのセットプレーからの得点でドローに

 試合はチュニジアがフランスのクラブに所属している選手の活躍で先手を取った。6分にランスに所属のイッサム・ジャンマがバランシエンヌのファイド・ベン・カルファラのクロスにあわせゴールを決める。これでフランスは4試合連続で先制点を奪われる。フランスは試合を支配し、7割がたボールを支配するものの、得点を奪うことができず、ハーフタイムを迎える。
 後半開始時にフランスは選手を交代する。ミスの多かったアビダルに代え、マルク・プラニュスを投入し、代表デビューを飾る。またリベリーに代わったティエリー・アンリはキャプテンマークを腕に巻く。そして63分にグルクフがFKを蹴り、これをギャラスがヘッドで同点ゴールを決める。実はフランスはセットプレーからの得点が極端に少なく、ほぼ3年ぶりのセットプレーからの得点である。
 フランスはその後も優位に試合を進めたが、勝ち越しゴールを奪うことはできず、引き分けと言う結果だけではなく、内容的にも不満の残る試合でアフリカでの初戦を終えたのである。(続く)

このページのTOPへ