第1129回 不振に終わった南半球遠征(1) 期待を集めたラグビーのフランス代表

■期待されていなかったサッカーのフランス代表

 グループリーグ最下位で惨敗してしまったワールドカップ南アフリカ大会のフランス代表であるが、ある意味、大会前のファンの予想通りだったともいえよう。予選のグループ分けはさほど難しいグループではなかったにも関わらず、本大会ではグループDで最下位に終わったセルビアに次ぐ2位でプレーオフに回っている。そしてアイルランドとのプレーオフはティエリー・アンリの疑惑のハンドでようやく勝ち抜いた。さらに本大会出場決定後の親善試合はシーズン中には3月にスペイン戦を組んだだけである。欧州王者であり世界王者になるスペインとの戦いは全くいいところがなく完敗。そしてメンバーが決まってからシーズン後にコスタリカ、チュニジア、中国という本大会出場を逃した格下のチームと対戦するが1勝1分1敗と大苦戦を強いられて南アフリカ入りしている。指揮官であるレイモン・ドメネク監督は世論に全く耳を貸そうとせずに本大会を迎えた。このような状態で優勝を期待しているフランス人は皆無であったといえるであろう。

■北半球最強のラグビーのフランス代表が南半球に遠征

 このような大会前から期待されていなかったサッカーのフランス代表に代わって国民の期待を集めていたのがラグビーのフランス代表である。本連載第1115回で紹介したとおり、国民は強いフランスの象徴として今年の6か国対抗をグランドスラム(全勝優勝)で飾り、北半球で最強のチームとして来年のワールドカップを目指すラグビーのフランス代表に注目した。
 さて、サッカーのワールドカップは6月から7月にかけて行われており、今回は1978年のアルゼンチン大会以来32年ぶりの冬のワールドカップである。一方、ラグビーの世界ではこの時期に北半球のチームが南半球を訪問し、冬のテストマッチを行う。つまり今年の6月はラグビーとサッカーの強豪国がそろって南半球に移動することになる。フランスは6月12日に南アフリカとテストマッチを行った後、大西洋を渡り、アルゼンチンを訪問、18日にアルゼンチンA(ブエノスアイレス選抜)と親善試合を行った後、26日にこの夏のツアーの締めくくりとしてアルゼンチンとテストマッチを行う。

■ワールドカップの前半は国内で戦うラグビーの南アフリカ代表

 一方、サッカーのワールドカップ開催と重なった南アフリカのスケジュールは異例である。夏のツアーシーズンの最初の試合はウェールズに遠征し、6月5日にウェールズと対戦する。ワールドカップが始まってからは国内でテストマッチを行い、6月12日にフランス、イタリアとは19日並びに26日にテストマッチを行う。そして7月に入ると南半球の3か国対抗が始まり、ニュージーランドとアウエーで対戦する。このようにワールドカップ前半戦は南アフリカ国内で最強のチームであるスプリングボクスが南アフリカ国内でテストマッチを行うのである。

■最近の3試合はフランスがいずれも勝利している南アフリカ戦

 南アフリカは現在世界ランキング2位であるが、アウエーのウェールズ戦は苦戦を強いられた。相手のウェールズは今年の6か国対抗では2勝3敗で4位、世界ランキングも9位であり、英国4協会の中で最も低い位置にある。南アフリカの楽勝と思われたが、カーディフのミレニアム競技場には6万人を超える大観衆が集まり、前半はウェールズが16-14とリード、後半に入って南アフリカが逆転し、34-31で勝利するが、トライ数は両チーム3と同数であり、夏のシーズンに向けて南アフリカの調子が上がらないのではないかとささやかれた。
 一方のフランスは先述の通り、6か国対抗で全勝優勝し、世界ランキングは北半球で最高の4位である。今回の南半球遠征で実績を作り、来年のワールドカップでは悲願の初優勝を成し遂げたいところである。これまでのフランスと南アフリカの対戦成績は37戦して南アフリカが20勝6分11敗と圧倒しているが、過去3試合はフランスが勝利しているのである。(続く)

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