第98回 2002-03シーズンいよいよ開幕(2) リヨン、14年連続で開幕戦勝利を逃す

■最優秀サポーターに輝いたガンガンのファン

 ガンガンの本拠地ルドゥルー・スタジアムでシーズンが開幕した。ガンガンの人口はわずか8000人であるが、このスタジアムの収容人数はそれを上回る1万8000人である。ブルターニュ地方も数多くのサッカークラブが存在し、ファンの応援が盛んな地方であり、昨年このガンガンのサポーターは1部リーグ最優秀サポーターに選出されている。これは審判の投票によって決定されるものであり、熱狂的ではあるが、常に節度を保ったサポーターがガンガンならびにその周辺から集まってきていたことを意味している。シーズン開幕となった金曜日の夜には1万4000人の観衆がスタジアムにつめかけた。これだけの観衆が集まった理由は開幕戦に加え、相手が前年度の覇者であるからであろう。どんなチームも前年度の覇者を迎え撃つことは年に1回しかない。その年に1回が第1節になり、しかも他の試合よりも1日早い日程で行われたのである。

■スペクタクルな点の取り合いになった開幕戦

 ピッチには世界チャンピオンに輝いたリヨンのエジミウソンの姿がない。ワールドカップの疲労がとれず、まだ戦線に復帰していないが、もし復帰したとしてもストッパーのポジションを同じブラジル人のクラウディオ・カサパと争わなくてはならない。それほどの厚い選手層を抱えるリヨンは文句なしの優勝候補最右翼である。
 そして、20時45分にキックオフ。ファンの期待通りのスペクタクルな試合になった。リヨンは開始早々の3分にジュニーニョが先制点を決めた。一方の地元ガンガンも24分にはブルターニュ地方出身でファンの期待も大きいステファン・カルノが同点に追いつくゴールを決める。ところが37分にはジャン・マルク・シャヌレにヘッドで勝ち越し点を決められ、後半も序盤にあたる51分にソニー・アンデルソンに追加点を許し、2点差となり、さすがに優勝候補との実力の差がスコアになって表れたかと思われた。
 しかし、2点差を追うガンガンは気落ちすることなくボールを追った。主将でクラブ生え抜きのクロード・ミッシェルはピッチを走り回り、前線に球を供給し続ける。そしてその主将の鼓舞に終了間際の88分にようやく応えたのが、セドリック・バルドンである。ブルターニュ出身の背番号9のゴールに沸くスタンド、しかし、間もなくロスタイム4分という表示。ロスタイムも残り少なくなった93分にはディディエ・ドログバが右サイドからのセンタリングをグラウンダーのシュート。待ち構えるのはフランス代表GKのグレゴリー・クーペ、しかしクーペの両足の間をボールは抜け、ゴールネットを揺らした。70分に途中出場させたベルトラン・マルシャン監督の采配が見事に的中したのである。

■開幕戦が苦手なリヨン

 開幕戦で勝利を飾れなかったリヨンであるが、興味深い記録がある。リヨンは1989年に1部復帰し、それ以来1部リーグでは安定した成績を残し、昨年は初優勝を飾っているが、なんとこの間1度も開幕戦で勝利したことがなく、14年間で開幕戦は7分7敗と言う成績にとどまっている。1989年は7年ぶりに1部に復帰した時は前シーズンに2部で優勝し、当時アイルランド代表の主将で今回のワールドカップではアイルランド代表を率いたミック・マッカーシー、フランス代表のジル・ルセ、レミー・ガルドなどを擁する充実した戦力でファンの期待を集めた。開幕戦は地元のジェルラン競技場である。しかし、相手が悪かった。7年ぶりの1部リーグの試合は前年の覇者マルセイユとの対戦である。リヨンはのちに5連覇を達成するマルセイユに1-4と大敗を喫する。この大敗がいまだに続く開幕戦に対する苦手意識の原因となっているのであろう。優勝した昨年も開幕戦はランスに0-2で敗れている。1981-82シーズンの開幕戦でナンシーに2-0と勝ってから20年以上、リヨンは1部リーグでの開幕戦勝利とは無縁なのである。(続く)

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