第1168回 ルーマニア、ルクセンブルクと連戦 (9) ルクセンブルク戦前に注目されたFWの人数
■波乱のスタートとなったグループD
今回の予選グループDはフランス、ルーマニアという有力チームが初戦を勝利でスタートすることができず、波乱含みの開幕となった。波乱の主人公はベラルーシであり、第1戦でフランスをスタッド・ド・フランスで破り、第2戦ではルーマニアを迎えてドローに持ち込んでいる。そしてもう1つの主人公はアルバニアであり、第1戦はアウエーでルーマニアと1-1の引き分け、第2戦ではルクセンブルクを1-0と下しており、第2節が終わった時点で勝ち点4でこの両チームがならび、総得点の差で1位アルバニア、2位ベラルーシという誰も予期せぬ順位になった。
■勝ち点6で首位のフランス、勝ち点1で最下位のルクセンブルク
フランスが第4戦で対戦するルクセンブルクは第1戦はボスニア・ヘルツェゴビナを迎え、0-3と敗れており、連敗スタートで指定席が待っていると思われた。地元に2位のベラルーシを迎えた試合の観衆はわずか1800人、国民の期待も高くないことがよくわかる。しかし、この試合でルクセンブルクはスコアレスドローに持ち込み、貴重な勝ち点1をあげたのである。開幕前にフランスの最大のライバルと目された第2シードのルーマニアは3戦終了した段階で2分1敗の勝ち点2、ルクセンブルクと勝ち点1しか差がないのである。
しかし、FIFAランキング130位、プロのサッカー選手はわずか1人でしかもフランスの2部リーグ、さらに今年2月にはホームでフランスの2部のメッスに敗れているというルクセンブルク、いくらフランスが調子を落とし、FIFAランキングを27位まで下げたといってもフランスの優位は明白である。そして第3戦を終了した段階でフランスは勝ち点を6に伸ばし首位に立っている。
ルクセンブルクと対戦するのは1986年のワールドカップ・メキシコ大会予選以来のこととなる。この時はアウエーで4-0、ホームでフランスが6-0と大勝している。これまでフランスはルクセンブルクとワールドカップ予選で7試合対戦し、欧州選手権予選では4試合対戦してきたが、フランスが11試合すべてに勝利している。11試合のうち2点差の試合が2回あるだけで、それ以外はフランスが大勝し、フランス総得点48に対し、ルクセンブルクの総得点はわずかに5と一方的な戦績になっている。
■大量得点を奪うための2トップ
調子をあげてきたフランスはこのルクセンブルク戦でローラン・ブラン色を明確にし、チームの新たな方向性を模索したいところである。おそらくはルクセンブルクは守備を固めた陣形で臨むであろう。その超守備的なチームに対し、勝利しかも得点差をつけて勝利するということが必要な場面が来るであろう。そのような状況にも対応できるようにするためのテストとしてこのルクセンブルク戦を使いたいところである。このような局面では1トップではなく2トップにするのが定石である。
例えば、レイモン・ドメネク時代のフォーメーションを振り返ってみると、基本的には1トップであったが、最後に2トップでドメネク監督が戦ったのは昨年10月のワールドカップ予選のフェロー諸島戦であった。ドメネク監督は相当力に差のあるチームと対戦する際に起用し、その目論見通り5-0とフランスは大勝している。
■ボルドー以来の2トップシステムを封印したローラン・ブラン監督
一方、ブラン監督自身はボルドーでは2トップシステムを利用してきた。そして就任後の初戦となる8月11日のノルウェーとの親善試合ならびに最初の欧州選手権予選となる9月3日のベラルーシ戦ではロイック・レミーとギヨーム・オラオを2トップに起用している。しかし、この2試合はいずれも敗れており、就任3戦目のボスニア・ヘルツェゴビナ戦からはベンゼマの1トップとなり、ルーマニア戦でも同様にベンゼマの1トップにして連勝した。
連勝の勢いを止めないためにベンゼマの1トップか、それとも対戦相手との力の差を考慮して2トップにするのか、ブラン監督の判断に注目が集まったのである。(続く)