第1184回 2010年デビスカップ決勝 (3) ワールドカップ決勝直前にスペインを87年ぶりに下す

■最強国スペインを支えるラファエル・ナダル

 フランスは第3シードのドイツに勝利し、今世紀に入って10回目のデビスカップのうち9回目の8強入りと安定した成績を残している。そして7月9日から3日間行われる準々決勝の相手は昨年の優勝国であり、第1シードのスペインである。スペインは2000年、2004年、2008年そして2009年と過去10年間のうち4回優勝している21世紀の最強国である。
 スペインの牽引車となっているのはラファエル・ナダルであろう。今年のジャパンオープンの覇者ということで日本の読者の皆様はよくご存じの選手であろうが、ジャパンオープン以外のトーナメントでも活躍している。クレーコートを得意とし、ローラン・ギャロスでは2005年に初優勝して以来5回優勝、全豪オープンも昨年初制覇し、ウィンブルドンも2008年に初優勝し、この準々決勝の前週に行われた今年の決勝ではチェコのトマーシュ・ベルディハをストレートで破り、2年ぶり2回目の優勝を果たしている。

■両国の主力が負傷のため欠場

 ところがナダルは以前から痛めていた膝の療養のため欠場する。そしてナダルはスペインを離れ、南アフリカへ飛ぶ。ナダルは膝の療養を兼ねてこのフランス戦と同時期に行われるワールドカップの決勝のスペイン-オランダ戦を観戦しに行ったのである。ジャパンオープンで訪日した際もナダルは日本-アルゼンチン戦を観戦している。実はナダルはかつてスペイン代表のDFとして活躍したミゲル・アンヘル・ナダルの甥なのである。
 前週にウィンブルドンをナダルが制し、ワールドカップでは代表が決勝に進出し盛り上がるスペイン、一方のフランスはワールドカップではチームの内紛によりグループリーグで惨敗しており、このスペイン戦で意地を見せたいところである。しかし、フランスもナンバー1のジョー・ウィルフリード・ツォンガが膝の負傷のため欠場、さらにリシャール・ガスケも背中を痛めておりメンバーから外れる。

■ガエル・モンフィス、ミカエル・ロドラ、格上相手の接戦で勝利

 この結果、シングルスでフランスはガエル・モンフィス(ATPランキング17位)とミカエル・ロドラ(35位)で、スペインのフェルナンド・ベルダスコ(10位)とダビデ・フェレール(12位)という格上の選手に挑戦することになる。
 スペイン戦の舞台はフランス中部のクレルモンフェラン、ピエール・スベストルがその青春時代を送った町として有名な町である。スベストルを育てた街にふさわしく、フランスはリスクマネジメントに優れ、ハードコートを準備する。
 ドイツ戦とは打って変わり、接戦となった。まず第1試合のモンフィス-フェレール戦は第1セットからタイブレークとなる。このタイブレークをモンフィスが奪い、第2セットもモンフィスが連取、ところが第3セット、第4セットとフェレールが反撃し、ついに最終セットへ。最終セットをモンフィスが6-4と制し、フランスは先勝したのである。続く第2試合はロドラの登場である。ロドラはデビスカップではダブルスでの出場が多く、シングルスには1試合しか出場したことがなく、勝利したことがない。ロドラの相手のベルダスコとの過去の対戦成績は1勝1敗、長丁場のデビスカップを考えるならば、ダブルスプレーヤーのロドラのシングルスでの活躍も不可欠である。そしてロドラは期待に応えた。第1セットはタイブレークで落としたものの、第2セットと第3セットを連取し、逆転する。そして迎えた第4セットはタイブレークとなる。このタイブレークを7-2と圧勝し、フランスはドイツ戦に続き、初日のシングルスを連勝した。

■土曜日のダブルス、日曜日のシングルスもフランスが勝利

 フランスは翌日のダブルスはロドラがジュリアン・ベネトーと組んで出場、スペインのフェリシアーノ・ロペスとベルダスコのペアを圧倒した。第1セット6-2、第2セット6-1と連取し、第3セットこそ逆転を許し、タイブレークを落としたが、第4セットはタイブレークで競り勝って、ダブルス戦もフランスは勝利する。前日のシングルスと合わせて3勝をあげたフランスは、実にスペイン戦87年ぶりの勝利となったのである。
 メンバーを入れ替えて3セットマッチで行われた日曜日のシングルスでもフランスは連勝する。3連覇を目指したスペインのメンバーは0-5という大敗に肩を落とし、ワールドカップの決勝を観戦することになったのである。(続く)

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