第1186回 2010年デビスカップ決勝 (5) 決勝は今年初めての敵地での戦い

■驚異的な成績で決勝進出を決めたフランス

 1回戦でドイツ、準々決勝でスペイン、準決勝でアルゼンチンを破って決勝に進出したフランス、この準決勝までの成績は14勝1敗と驚異的な数字である。またこれまでの対戦ではすべて土曜日のダブルスを終えた時点で勝利を決めている。準決勝において決勝進出が最終日を待たずに決まったのは1993年のドイツ以来17年ぶりのことであり、ノーシードから勝ち上がってきたフランスの勢いは止められない。

■選手1人の重みがあるデビスカップ

 さて、準決勝は9月15日から17日にかけて行われたが、決勝は12月3日から5日にかけて行われる。準決勝は全米オープンの直後に行われ、四大大会が全部終わってから準決勝、決勝が行われるスケジュールとなっている。四大大会を頂点とする毎週行われるツアーがサッカーの場合は各クラブでの国内外の大会に相当し、国別対抗戦であるデビスカップが代表チームの試合に相当するであろう。しかし、テニス選手にとって、ツアーとデビスカップの違いは、サッカー選手におけるクラブの試合と代表チームの試合以上の差がある。
 まず、選手の構成である。サッカーの場合もクラブでの負傷により代表チームの試合を欠場する選手がいるが、サッカーは団体球技であり、11人、ベンチ入りも入れると18人が戦う競技である。しかし、テニスはシングルの場合は1対1、ダブルスの場合でも2対2、そして出場する選手は、最低の場合、つまり2日間ともシングルスを同じメンバーで戦い、その2人がダブルスでペアを組む場合は2人、逆に最高の場合、つまりシングルスは1試合ずつしか出場せず、ダブルスはシングルスに出場しない選手がペアを組む場合でも6人と少人数である。したがってこの中で1人が負傷で離脱した場合の影響の大きさはサッカーの比ではない。

■サーフェース、応援でホームアドバンテージのあるデビスカップ

 そして、次は開催地である。サッカーの場合は予選は基本的にはホームアンドアウエー方式、本大会はセントラル方式で行われるが、デビスカップの場合は、出場するいずれかの国で行われる。すべてのスポーツでホームアドバンテージがあるが、デビスカップの場合、地元開催国は自国の選手に有利な環境でコートを設営できる。つまり屋内か、屋外か、そしてサーフェースに関しても球足の速いハードコートか、球足の遅いクレーコートか、さらにはハードコートの場合でも球足の非常に速い素材を敷き詰めることもある。
 最後に、応援である。テニスの試合では基本的に声援はご法度、プレーが途切れた時の拍手のみが許され、声援をしようものなら審判からの注意が観衆に対してなされる。ところが、デビスカップでは観客の声援が飛び交い、場合によってはインプレー中にも掛け声や歓声が飛び交う。四大大会は屋外コートで行われるが、デビスカップは屋内で行われることが多い。もちろん1回戦や決勝などは開催時期の問題もあるが、屋内の場合は声援が響き、ホームチームに大きなアドバンテージを与えるからである。したがって選手には通常以上の集中力と精神力が要求される。

■もう1つの準決勝はセルビアがチェコに逆転勝利

 したがって決勝をどちらの国で開催するのかは、大きな関心事であるが、もう1つの準決勝でチェコが勝利すれば、フランスのホームゲーム、セルビアが勝利すればフランスはセルビアで戦うことになる。そしてどのコートで開催するかは決勝進出を決めてからの関心事となった。フランスが決勝進出を決めた段階でもう1つの準決勝はチェコが2勝1敗とリードしている。関係者はフランス開催が濃厚とみて土曜日の夜から決勝の開催を検討した。すでにパリのベルシー総合体育館は既に他のイベントが入っており、使用不可能であり、ニースやパリ郊外のビルパントの体育館の確保に走った。
 しかし、セルビアは日曜日のシングルス2試合を連勝し、決勝の相手はセルビアとなり、異国の地で9年ぶりの優勝を目指すことになったのである。(続く)

このページのTOPへ