第1217回 王国ブラジルと対戦 (4) 好調カリム・ベンゼマのゴールを守り切った守備陣

■新ユニフォームで登場した11人

 新たなサプライヤーの新しいデザインのユニフォームに腕を通したフランス代表のイレブンが2月9日の夜スタッド・ド・フランスに登場した。ピッチでラ・マルセイエーズを歌ったメンバーを紹介すると、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、アディル・ラミ、フィリップ・メクセス、エリック・アビダル、守備的MFは右にアルー・ディアラ、左はヤン・エムビアとダブルボランチを採用する。攻撃的MFは3人、中央にヨアン・グルクフ、右にジェレミー・メネス、左にフローラン・マルーダとなる。そして1トップにカリム・ベンゼマを起用する。

■ブラジル相手に真価が問われる守備陣

 11月のイングランド戦とメンバーを比較するならば、GKならびにDFの守備陣のメンバーは変わらない。注目の初選出のストッパーの、ローラン・コシールニーはベンチからのスタートとなる。そして中盤より前は守備に重きを置いた布陣となった。ダブルボランチで相手の攻撃をかわし、両サイドから崩して最後は代表チームでは絶好調のベンゼマにつなぐというシナリオである。
 そしてイングランド戦ではロリスが6年ぶりにGKとして務めた主将であるが、イングランド戦のベンチスタートから先発の座に復帰したアルー・ディアラがキャプテンマークをつけることになった。ローラン・ブラン体制になってからボルドー時代の縁で主将を務めるのはこの試合で4試合目となるが、ブラン監督は主将は模索中としながらも、アルー・ディアラで決まりであろう。
 ブラジルはスタッド・ド・フランスでフランスと戦うのはこれが3試合目であるがこれまでの連載で紹介した通り一度も勝利したことはない。昨年秋にアルゼンチンに敗れているブラジルにとって親善試合と言っても連敗は許されない。連敗をストップする意欲に燃える新生ブラジルは手ごわいチームであり、守備陣の真価が問われる試合となった。

■フィリップ・メクセスの活躍、ブラジルMFの退場

 試合はブラジルが支配するが、守備陣が健闘する。アビダルが復帰し、本職の左サイドに配置し、中央はメクセスとラミ、そして右サイドはワールドカップ以前から定位置のサーニャにアルー・ディアラとエムビアを合わせた守備陣は初めて力のある相手の攻撃にさらされる。ここでアイアンマンとして最高のプレーを見せたのがメクセスであった。その才能は早くから認められながら、レイモン・ドメネク監督との確執で不遇時代が続き、ようやく南アフリカの悪夢の後、表舞台に再登場したメクセスがブラジルの攻撃をストップした。
 ブラジル優勢のリズムが変わったのが40分のことであった。ブラジルのMFエルナネスがベンゼマに対し飛び蹴り、この危険なプレーに対しドイツ人主審のウォルフガング・スターク氏はレッドカードを突きつける。親善試合においてレッドカードというのは極めて珍しいことであり、フランスの対戦相手では2年ぶりのことであり、フランス自身は1996年にフランク・ルブッフがメキシコ戦で記録して以来15年間ないことである。

■カリム・ベンゼマ、3試合連続ゴール、ウーゴ・ロリスのスーパーセーブ

 数的優位に立ったフランスはこの10年間のフランスになる。残り少なくなった前半こそ無得点であったが、後半に入り、均衡が破れる。右サイドの攻撃的MFに起用されたメネスがドリブルで攻め込む。ロビーニョ、アンドレ・サントスというブラジルの名手をかわしセンタリング、そしてこれを決めたのがベンゼマであった。ベンゼマはこれでルクセンブルク戦、イングランド戦についで3試合連続ゴール、3戦連続得点は2003年のダビッド・トレゼゲ以来のことである。
 なおも攻撃を続けたフランスであるが、連敗ストップに燃えるブラジルはしぶとかった。85分にパトに代わって東京ヴェルディやコンサドーレでも活躍したフッキがセンターフォワードの位置に入る。ロスタイムに入った90分、フッキがロリスと1対1になるが、これをロリスがスーパーセーブ、守備陣の健闘によりフランスは1-0で勝利した。
 これでフランスは4年ぶりの5連勝を記録し、完全に復調したと言えるであろう。(この項、終わり)

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