第1233回 ベスト4が出そろったフランスカップ (1) シャンベリー、モナコ戦に続きブレスト戦もPK勝ち
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■国内タイトルだけに専念するフランスのクラブ
チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグとフランス勢のベスト8進出はなく、フランス代表も3月下旬のルクセンブルクとクロアチアの連戦の次は6月まで試合がない。つまりフランスのサッカー界にとってシーズンのクライマックスである4月、5月には国際試合がなくなることになり、各クラブは国内のタイトル争いだけに専念することになる。
国内タイトルについてはリーグ戦、フランスカップ、リーグカップがあるが、リーグ戦は折り返し時点で首位だったリールがマルセイユなどの追撃を受けながら首位をキープしている。リーグカップについては本連載1203回から1207回にかけて紹介した通り、決勝進出チームが決まり、モンペリエとマルセイユが4月23日にスタッド・ド・フランスで戦うことが決まっている。
フランスカップについては年始に行われたベスト32決定戦の模様を本連載第1199回から第1202回で紹介し、次々と1部勢が敗退したことを紹介したが、その後のフランスカップの状況を今回から紹介したい。
■ベスト16決定戦で立ち直りが注目される1部勢
ベスト32決定戦は1部勢が年末年始の休暇明けに戦い、挑戦者である下位のリーグのチームの本拠地で戦うことが多いため、ジャイアントキリングが起こりやすいことは毎年の初めの本連載で繰り返し説明している。1部勢にとって初戦であるベスト32決定戦では思いもよらぬ相手に不覚を取るが、その後のベスト16決定戦以降で1部勢が立て直してくるというのが例年のパターンである。
今年のベスト16決定戦は1月21日から23日にかけて行われ、1部10チームは下位チームとの対戦が8試合、1部勢同士が1試合である。組み合わせとしては。21日の金曜日には1試合だけ行われ、1部のソショーがナショナルリーグのパリFCを迎える。パリFCはベスト32決定戦でトゥールーズを下しているが、その後ナショナルリーグでは連敗し、順位も10位まで下げてしまい、2部昇格が遠のいてしまった。勢いを失ったパリFCはソショーに1-2と敗れてしまう。
■5部チームとして3年ぶり10回目のベスト16入りしたシャンベリー
1部勢はソショーが幸先の良いスタートを切ったわけであるが、10試合行われた翌日の22日には驚きが待っていた。土曜日の午後、14時15分に最初にキックオフを迎えたのはサボワ県の県庁所在地シャンベリーである。5部リーグに相当するCFA2部に所属するシャンベリーはベスト32決定戦でモナコをPK戦で下し、この日もブレストを迎える。ベスト16決定戦に進出した32チームのうち、所属しているリーグが最も下位であるのはこのCFA2部であり、シャンベリー、アジャン、バスケアルの3チームがいずれも1部のクラブに挑戦する。シャンベリーの小さな市営競技場には3500人の観客で満員となる。試合は両チーム無得点のまま延長戦に入る。そして延長前半もゴールネットが揺れることはなく、延長後半に入る。延長後半に入って108分に先制点をあげたのは赤いユニフォームのブレスト、これで勝負あったかと思われたが、地元ファンの声援に押された黄色いユニフォームのシャンベリーは117分に同点ゴールをあげる。これでPK戦となったが、5人中4人が成功させたシャンベリーが勝利し、5部に相当するリーグのチームとしては3年ぶり10回目のベスト16に残ったのである。
■下位チームに敗れたボルドー、1部勢対決に敗れたリヨン
さらに17時キックオフのボルドーも敵地で2部のアンジェに敗れる。2年前のリーグチャンピオンであるボルドーも今季のリーグ戦では中位であり、無冠でシーズンを終えることになりそうであり、監督のジャン・ティガナには厳しい目が向けられた。
ジャイアントキリングが続出かと思われたが、この日はロリアンがCFAのフォントネイ・ルコントを、ナンシーが2部のニームをそれぞれ延長戦で下し、翌日の日曜日はレンヌ、パリサンジェルマン、リールが下位チームに90分で勝利している。
そしてニースとリヨンという唯一の1部勢対決は20時45分にベスト16決定戦最後の試合としてキックオフされた。この試合は1部勢同士の試合としてふさわしい内容となり、延長にもつれ込み、決勝点をあげたのはニースのフランソワ・クレルク、古巣のリヨン相手のゴールで古豪が最後にベスト16に勝ち残る。1部勢は7チームが残ったのである。(続く)