第1239回 マルセイユ、リーグカップ史上初めての連覇
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■連覇を狙うマルセイユ、初優勝を狙う
前回の本連載ではフランスカップの準決勝について取り上げ、5月14日の決勝戦にリールとパリサンジェルマンが進出することを紹介した。今季のリーグ戦の日程は最終節が5月28日に行われるが、混戦であるため、優勝争いはその最終戦までもつれ込み、フランスカップの覇者の決定する段階でリーグチャンピオンが決まっていない可能性があるだろう。
このようなタイトル争いの中で最初に栄冠の行方が決まるのが、今回取り上げるリーグカップである。今季のリーグカップについては第1207回から第1207回の本連載で紹介した通りマルセイユとモンペリエが決勝に進出している。マルセイユは昨年のこのタイトルと獲得した勢いでリーグ戦でも優勝し、1993年以来久しぶりのタイトルを獲得している。
一方のモンペリエであるが、これまでにタイトルはフランスカップで2回優勝しただけであり、1990年の優勝が最後である。
■決勝の6日前にリーグ戦で対戦した両チーム
第1207回の本連載でも紹介した通り、両チームは決勝の6日前の4月17日にリーグ戦第31節で対戦している。モンペリエの本拠地モッソン競技場で行われた試合で対戦している。タイトルをかけた一戦の前ということで手の内をさらけ出さない試合になるという可能性もあったが、そうではなかった。この31節を迎える段階でマルセイユは勝ち点55で首位リールと勝ち点差でわずか3の2位、そしてモンペリエは勝ち点43で6位である。マルセイユにとっては首位を奪うためにこのモンペリエ戦を落とすわけにはいかない。そしてモンペリエも欧州カップ出場のために勝利あるのみである。
したがってこの試合は激しい内容になり、日本の皆様が親しんでいる表現を使うと「ガチンコ」の試合になった。前半は得点こそなかったが両チームとも1枚ずつイエローカードを受ける。後半に入って先手を取ったのは地元モンペリエであった。64分にマルセイユのクリアミスをオリビエ・ジルーがフランス代表GKスティーブ・マンダンダの守るゴールを破り先手を取る。これに対してマルセイユも69分に左サイドからのパスをアンドレ・ピエール・ジニャックがゴールを決めて同点に追いつく。
この得点で試合はヒートアップする。78分にマルセイユのロイック・レミがペナルティエリア内で倒される。PKが与えられたが、このプレーをめぐってモンペリエのアブデルハミド・エル・カウタリとマルセイユのレミの両方が退場処分を受けた。そしてPKをタイエ・タイウォが決めて勝ち越し、首位リールと勝ち点1差に詰め寄ったのである。
■モンペリエの試合とほぼ変わらぬメンバーが先発した両チーム
そしてその1週間後、舞台をスタッド・ド・フランスに移して両者は戦う。両チームのメンバーであるがマルセイユはモンペリエの試合で退場になったレミ以外は同じメンバー、モンペリエもエル・カウタリ以外にGKとDFを1人変えただけで、ほぼ同じメンバーで今季最初のタイトルは争われた。スタッド・ド・フランスは8万大観衆が見守る。昨年のマルセイユはボルドーに決勝戦で勝ち、その勢いでリーグ戦も制覇した。今季もこの試合で勝利して、リーグ戦でリールを逆転する勢いをつけたいところである。ところがマルセイユは攻めるもののなかなか得点に結びつかない。そして両チームはファイルの応酬で、試合を組み立てることに四苦八苦する。
■タイエ・タイウォ、2試合連続の決勝ゴール
試合も残り10分となった時、マルセイユは好位置でFKを得る。このチャンスのキッカーはブルーノ・シェイルー、ゴール前で混戦となり、こぼれ球に反応したのはモンペリエで決勝点をあげたタイウォであった。モンペリエでの試合と同じような時間帯にマルセイユはリードを奪う。モンペリエは攻めるがマルセイユの厚い防御を崩すことができなかった。マルセイユはこのリードを守りきり、1-0で勝利、リーグカップの歴史の中で初めて連覇を果たしたのである。(この項、終わり)