第109回 2004年欧州選手権予選開幕(5) キプロスに辛勝
■フランスにとって久しぶりの予選
2002年のワールドカップに前回優勝国として出場したフランスにとって今回の欧州選手権予選は4年ぶりの予選である。親善試合やワールドカップの本大会と異なり、予選ではベンチ入りの人数が制限される。20人が代表に選出されたが、ベンチ入りは18人。チュニジア戦で代表にデビューしたブルーノ・シェルーと今回代表に初選出されたシルバン・アルマンがメンバーから外れた。2人とも期待される若手選手であるが、シェルーはティエリー・アンリ、アルマンはバンサン・カンデラのそれぞれ負傷による離脱のバックアップメンバーとしてキプロス入りしたわけであり、ベンチ入りにもれたのは仕方のないことであろう。
■サンティーニ監督の選んだ先発イレブン
ニコシアのGSPスタジアムのピッチで「ラ・マルセイエーズ」を聞いたイレブンはGKグレゴリー・クーペ、DFはフィリップ・クリスタンバル、マルセル・デサイー、リリアン・テュラム、ミカエル・シルベストル、MFパトリック・ビエイラ、ジネディーヌ・ジダン、クロード・マケレレ、FWシルバン・ビルトール、ジブリル・シセ、スティーブ・マルレというメンバーであり、サンティーニ監督は4-3-3システムを起用したのである。
前々回の本連載の最後に1990年代のGKについて言及したが、ファビアン・バルテスの次のGKが2000年代の課題となるであろう。サンティーニ監督が今回の代表メンバーに選んだ2人のGKはクーペとミカエル・ランドロー、クーペは代表歴2試合、ランドローは代表歴1試合、2人あわせて3試合しか代表経験がない。バルテスに次ぐ代表でのキャリアを誇っているのはリオネル・レティジであり、ウルリッヒ・ラメである。
しかし、ジャック・サンティーニ監督はクーペを非常に高く評価し、若手のランドローとともに2人のGKを選び、クーペを先発メンバーに登録する。また、注目のセンターバックはデサイーとクリスタンバルがコンビを組む。右にテュラム、左にシルベストルというDFラインを形成する。初先発のシセを中央に、右にマルレ、左にビルトールという攻撃陣である。
■試合を支配された前半
世界ランキング82位のキプロスの監督はユーゴスラビア人のモスタ・ブコティッチ、今までのキプロスの欧州選手権予選の通算成績は6勝8分52敗、得失点差は-155である。ブコティッチ監督は「我々は失うものは何もない。自分たちのサッカーをやればいい」と自信を持ってイレブンをピッチに送り出す。フランスはこの術中にはまったのか、試合開始から全く機能せず、試合はゆっくりしたペースで進み、キプロスが支配する。そして15分、サンティーニが熟考の末に選んだデサイーとクリスタンバルのセンターバックのコンビ、何の疑問を持たずゴールを任せたクーペという守備をキプロスのイオアニス・オカスが破り、先制点。その後もキプロスが試合を支配する。
■初先発のシセが流れを変える同点ゴール
しかし、この流れを断ち切ったのは期待されながら、フランス代表では今までの6試合で交代出場ばかりだったシセである。7試合目にして背番号9は先発メンバーに名を連ね、38分に同点ゴールを決める。これで試合の流れは変わる。後半に入るとフランスが試合を支配し、52分にはプレミアリーグでも好調なスタートを切ったビルトールが勝ち越し点を奪う。その後もフランスが攻め続け、両翼のマルレ、ビルトールはそれぞれシドニー・ゴブー、オリビエ・カポが試合終盤に交代出場する。コートジボアールのアビジャン出身のカポは、U-21代表で大活躍し、以前から注目をされていたが、ついに同郷のバジル・ボリと同じブルーのユニフォームを着てピッチに立った。
結局、試合は2-1でフランスが勝利をおさめる。前半のもたつき、後半に追加点が奪えなかったことなど、不満は多い。試合の4日前に行ったある世論調査では4分の1にあたる24%の人々が現在のフランス代表よりも以前のフランス代表が好きである、というような結果もでている。内容はともかく、公式戦の勝利は2000年7月2日に行われた欧州選手権の決勝のイタリア戦以来2年2月ぶりのことである。次の試合は10月12日、久しぶりのサンドニでの試合である。グループ内で唯一今回のワールドカップに出場し、予選の初戦でマルタに3-0と完勝したスロベニアが相手である。(この項、終わり)