第1260回 フランス代表の東欧3連戦(5) 2人の新人の活躍でウクライナに勝利
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■欧州選手権に向けて盛り上がりを見せていないウクライナ
来年の欧州選手権の共同開催国となるウクライナに乗り込んだフランス代表、戦いの場はドネツクのドンバス・アリーナである。来年の欧州選手権はウクライナ、ポーランドでそれぞれ4会場が準備されており、このドンバス・アリーナも熱戦の舞台となる。ドンバス・アリーナは2年前にオープンしたばかりであり、近年欧州カップで躍進著しいシャフタール・ドネツクの本拠地である。5万1000人の収容人員を誇るが、このフランス戦はわずか1万1000人の観客しか集まらず、欧州選手権に向けてまだ盛り上がりを見せていないようである。
■フランス代表の国内での史上最多観客動員を記録したウクライナ戦
フランスとウクライナの対戦と言うとはこれまでに欧州選手権の2000年大会と2008年大会の予選で4回対戦し、それ以外に親善試合を1試合行っている。この中で2008年欧州選手権予選のホーム、スタッド・ド・フランスでの試合は2007年6月2日に行われ、80,051人と言う観衆を集め、フランスが2-0で勝利した。この観客数はフランス代表がこれまで国内で記録した最多観客動員数である。対戦成績はフランスの2勝3分で負けなしであるが、ウクライナの地ではキエフで2戦して2引き分けである。
■代表出場歴が豊富なオレグ・ブロヒンとローラン・ブラン
フランスはベラルーシ戦ではセカンドユニフォームの横縞の「マリン」を着用したが、この日は上から青白赤のトリコロールのファーストユニフォームであり、一方のウクライナは上から下まで黄色のいでたちである。ウクライナを率いるのはオレグ・ブロヒン、1975年の欧州最優秀選手であり、1978年には訪日したことから日本のファンの皆様にとってはこの時代に日本を訪れたペレ、ヨハン・クライフなどと並んで懐かしいスターであろう。ブロヒンの現役時代の代表出場歴は101試合、一方のローラン・ブランは97試合、代表監督2人合わせて代表出場歴が200試合に近いというケースは珍しい。
■代表デビューのユネス・カブールとマルバン・マルタンの活躍
その代表経験が豊富な両監督の前で代表デビューを果たしたのがユネス・カブールである。モロッコ国籍とフランス国籍を持つ二重国籍の選手であるが、この試合に先発出場し、フランス代表としてのキャリアを歩むことになった。フランス代表の弱点と言えるストッパーとして、空中戦を中心にまずまずの動きを見せる。36分にはペナルティエリア内でハンドかと思われたがイングランド人の主審はノーホイッスル。そして前半は両チームともノーゴール。
53分に均衡を破ったのはウクライナの主将のアナトリ・ティモシュチュクであった。フランスはベラルーシ戦に続いて先制点を許す。フランスも5分後にCFのケビン・ガメイロの得点で同点に追いつく。
64分にブラン監督は選手を一気に3人交代、3人の攻撃陣を中央にカリム・ベンゼマ、右にフランク・リベリー、左にフローラン・マルーダとレギュラー3人を投入する。また76分には2人の攻撃的MFをアルー・ディアビーとマルバン・マルタンに入れ替え、マルタンも代表デビューを果たす。しかしながら、勝ち越し点をあげることができず、試合はいよいよ終盤を迎える。
残り3分、夢のような時間帯がフランスに訪れた。87分には今季のフランスリーグのアシスト王のマルタンが25メートルのロングシュートを決める。89分にはフランスはCKのチャンスを得る。キッカーは2分前にゴールを決めたばかりのマルタン、このフランスリーグのアシスト王の蹴ったCKをヘッドでゴールにたたきこんだのは先発で代表に仲間入りしたカブールであった。そしてフェスティバルは止まらない。92分にはベンゼマからのパスをマルタンが得点を決めて、フランスはラスト数分の3得点で4-1とウクライナを下す。
途中出場で代表デビューを飾ったマルタン、代表デビュー戦が途中出場で2得点を記録したマルタンであるが、これは1994年8月17日のジネディーヌ・ジダン(チェコ戦)、2008年5月27日のバフェタンビ・ゴミス(エクアドル戦)に次ぐ偉業である。
2人の新人がフランス代表を勝利に導いたのである。(続く)