第1262回 フランス代表の東欧3連戦(7) 新戦力の活躍で有終の美を飾る

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■東欧3連戦最終戦の先発メンバー

 前回は来年の欧州選手権に向けて強化を図るポーランドを紹介したが、一方のフランスは東欧遠征最後の最後の試合であり、今シーズン最後の試合でもある。したがって有終の美を飾りたいところである。
 フランス代表の先発メンバーであるが、GKはセドリック・カラッソ、DFは右からバカリ・サーニャ、ユネス・カブール、エリック・アビダル、パトリス・エブラ、守備的MFは1人でアルー・ディアラ、攻撃的なMFにヨアン・カバイエとマルバン・マルタン、FWは右にシャルル・エンゾグビア、左にマチュー・バルブエナ、中央はギヨーム・オラオと言う布陣である。

■3連戦で初出場の4人の選手

 このメンバーを見ていただき、ローラン・ブラン監督の思想が2つお分かりかと思う。まずはこの3連戦で出場機会のない選手にチャンスを与えたということである。ウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダに次ぐ第3GKのカラッソ、エンゾグビア、オラオ、バルブエナなどはこのカテゴリーであろう。特にカラッソはこれが代表初出場となる。エンゾグビア、オラオも東欧3連戦で初出場となる。エンゾグビアは昨年夏の南アフリカ組以外で戦ったノルウェー戦以来代表2戦目であり、ベストメンバーでの代表戦はこれが実質的には初めてと言える。オラオも代表デビューは昨年8月のノルウェー戦、所属チームのパリサンジェルマンで活躍しており、期待されながら代表の試合は昨年11月のイングランド戦以来である。バルブエナは南アフリカのワールドカップに出場しているが、オラオ同様今年になって代表の試合に出場するのはこれが初めてとなる。

■ウクライナ戦で衝撃の代表デビューをした2人

 一方、この東欧3連戦で発掘したタレントを今後のためにこのポーランド戦で再びテストしようという試みもみられる。それがマルタンとカブールである。前々回の本連載で紹介したとおり、3日前のウクライナ戦でこの2人は代表にデビューし、勝利に貢献した。マルタンはいきなり2得点、カブールも1得点をあげた。試合終了間際まで1-1と言うタイスコアを2人の活躍で4-1と広げて快勝している。代表デビュー戦で2得点と言うとジネディーヌ・ジダンを連想させるが、実は代表デビュー戦で2ゴールをあげた選手は他にも複数いる。例えば近いところでは2008年のエクアドル戦のバフェタンビ・ゴミス、しかしながらゴミスを含め大成した選手はおらず、ジダンだけが例外であった。また、カブールも本職の守備ではまずまずの評価であったが、近年フランス代表の弱点と言われるストッパーは、期待の若手が華々しくデビューしながらレギュラーに定着しない。
 上記2つの例に当てはまらないが代表経験が豊富なアビダルを久しぶりにストッパーで起用しているのもテストであると言えるだろう。

■シャルル・エンゾグビアの先制点を守った第3GKのセドリック・カラッソ

 さて、ほぼ満員の3万1000人の観衆で埋まったポーランド陸軍競技場、青のファーストユニフォームで戦ったフランス代表の選手は、ブラン監督の思惑通りは動いた。マルタンが右サイドをオーバーラップしてきたサーニャにパス、サーニャのクロスを26という重い背番号をつけたエンゾグビアがシュート、ポーランドのGKの身を呈したセービングも届かず、先制点。代表2試合目で初ゴールとなった。
 試合は両チームが積極果敢に攻撃する好ゲームとなった。近年のフランスとポーランドの試合はロースコアの試合が多く、内容的にも低調なものが多かったが、ひとえにポーランドが守備的な試合展開に徹したからである。この日はポーランドは伝統のショートパスを繰り出すとともに、攻撃をシュートに結び付け、シュート数ではポーランドがフランスを上回った。
 しかしそのフランスの守備陣を支えたのが代表デビューとなるカラッソであり、カブールであった。カブールは負傷のために25分でピッチから離れたが十分に能力を見せた。ストッパーが本職ではないアビダルもいい動きを見せてポーランドを完封した。
 3連戦の最後は1-0と言うロースコアの試合であったが十分に見応えのなるものであり、何よりも新戦力が次々に活躍し、ブラン体制2年目となる夏以降が楽しみである。(この項、終わり)

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