第1268回 2011年女子ワールドカップ(6) ドイツ相手に健闘、決勝トーナメントへ手ごたえ

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■オリンピック出場権がかかる女子ワールドカップ

 実力互角とみられていたカナダとの戦いを4-0と完勝し、グループリーグ2戦目で決勝トーナメント進出を果たしたフランス、第3戦の相手は開催国ドイツである。
 フランスにとって、このワールドカップには2つの意味がある。まずこのワールドカップそのもので好成績を残すこと、これについてはこれまで唯一の出場であった2003年大会ではフランスはグループリーグで敗退しており、この決勝トーナメント進出で新たなページを切り開いたことになる。
 もう1つの意味はオリンピック出場である。男子と異なり、女子サッカーの頂点はワールドカップと言いきれない。オリンピックも同レベルで行われており、女子のスポーツにおけるオリンピックのブランドは高い価値がある。このワールドカップで欧州勢のうちで上位2チームに入った場合は来年ロンドンで開催されるオリンピックの出場権を獲得することができる。女子サッカーは1996年のアトランタ大会で採用されたが、オリンピック発祥の地ともいえるフランスの女子サッカーは4大会連続で予選敗退、本大会にはいまだ出場したことがないのである。

■圧倒的な力を誇るドイツ

 今大会に出場する欧州勢は、開催国ドイツ、北欧勢のスウェーデンとノルウェー、サッカーの母国イングランド、そしてフランスの5チームである。この中で抜群の力を誇るのがドイツであり、ワールドカップ2連覇中であり、国際試合ではほとんど負けていない。欧州選手権では1995年大会以来5大会連続優勝、世界ランキングも欧州勢の中では2003年以降8年間、首位を譲っていない。このドイツとの戦いを通じて欧州2位の座を狙うためのステップとしたいところである。
 開催国ドイツもフランス同様、カナダとナイジェリアに連勝し、決勝トーナメント進出を決めているが、いずれも1点差の勝利であり、地元ファンにはやや物足りない試合内容である。プレッシャーのかからないフランスとのグループ首位決定戦で、エンジンをフル回転させたいところである。
 若手選手の多いフランスと比較し、ドイツはベテラン選手がチームを牽引する。その中心がFWのインカ・グリングスとビルギット・プリンツである。グリングスは32歳、プリンツは33歳といずれもベテラン選手であるが、代表入りはグリングスが1996年、プリンツは1994年と15年以上ドイツ女子サッカーの屋台骨を背負ってきた。ベテラン選手の存在も女子サッカーの特徴であろう。

■ドイツに先行を許すが猛反撃

 7月5日に行われたメンヘングランドバッハでの試合には4万5000人以上の観客が集まり、会場の雰囲気はようやくワールドカップらしくなってきた。フランスはエースのマリー・ロール・デリーに代えて、カナダ戦に途中出場して得点を決めたエロディ・トミをCFに起用する。立ち上がりからドイツが攻め続け、ドイツは25分に先制、32分にも追加点をあげてフランスは2点のリードを許してハーフタイムを迎える。
 後半開始時にトミに代わってデリーを投入、ハイスコアの試合の多い女子サッカーでは2点のビハインドは追いつけない点差ではない。そしてそのデリーが56分に主将のサンドリーヌ・スーベイランの放った右サイドからのCKをゴールに決める。フランスの主将スーベイランは実に37歳の大ベテラン、劣勢だったフランスがこのチームの支柱のCKで息を吹き返した。

■優勝候補ドイツをひやりとさせたフランス

 しかし、同点に追いつこうとしたフランスは68分にGKのベランジェール・サポウィックスが1対1となったドイツの選手を倒してしまい、レッドカードを突きつけられ退場する。フランスはセリーヌ・デュビルをピッチに送り込むが、PKをストップすることができず、再び2点差となる。
 ところがフランスは決してゲームをあきらめず、72分にはCKをカミーユ・アビリーが蹴り、これをアビリーのリヨンでのチームメイトのローラ・ジョルジュがヘディングで決め、1点差に迫る。しかしながら、1人足りないフランスは運動量の差が出てしまい、88分にドイツにダメ押しのゴールを奪われ、2-4と敗れてしまったが、強豪相手に健闘したフランスは決勝トーナメントへの手ごたえをつかんだのである。(続く)

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