第1269回 2011年女子ワールドカップ(7) PK戦でイングランドを下し、オリンピック出場へ

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■今大会グループリーグで最大の番狂わせ、日本-イングランド戦

 優勝候補ドイツとの対戦に健闘しながらも2-4で敗れたフランスはグループAの2位として決勝トーナメントに進む。グループAの2位はグループBの1位とレバークーゼンで7月9日に対戦する。グループBについては日本が所属していることから本連載の読者の皆様はその動向をよくご存じのことであろう。グループBの中で最有力と目された日本はグループリーグ最終戦でイングランドに0-2と完敗、グループBの首位はイングランドとなった。今大会のグループリーグで最大の番狂わせと言っていいだろう。

■オリンピック出場権を狙うフランス

 この恩恵にあずかったのがフランスである。大会前の予想では優勝争いの最有力候補がドイツであり、それを追ってブラジル、米国、スウェーデンが第2グループ、フランスは日本、カナダ、ノルウェーとともに第3グループであり、フランスが欧州勢の中で唯一勝利できるであろうと予想されていた相手がこのイングランドだからである。
 また、このワールドカップは来年のロンドンオリンピックの出場権争いも兼ねており、欧州勢の中で上位2チームに出場権が与えられる。相手のイングランドは英国として来年のオリンピックの出場権は確保している。フランスがイングランドに勝利してベスト4に進出すれば、念願のオリンピック初出場に近づくことになる。準々決勝の組み合わせはドイツ-日本、スウェーデン-豪州、ブラジル-米国であり、イングランド戦の直後に行われるドイツの試合、翌日に行われるスウェーデンの試合の結果もファンにとっては気になるところである。

■2009年の欧州選手権で準優勝したイングランド

 イングランドは2009年の欧州選手権で準優勝したチームであるが、フランスの選手たちは苦手意識を持っていない。というのもフランス代表のほぼ半数を占めるリヨンの選手たちは、本連載の第1264回で紹介した通り、今季のチャンピオンズリーグではイングランド代表の主力を抱えるアーセナルに勝利しているからである。2年前の欧州選手権は準々決勝でオランダにPK戦の末敗れたフランスであるが、準優勝したイングランドよりも実力は上回り、精神的にも優位に立っている。

■宿敵対決にふさわしいゲームはPK戦で決着

 しかし、宿命のライバルであるイングランド戦は、非常に高いレベルのゲームとなり、タフな戦いになった。フランスはドイツ戦で正GKのベランジェール・サポウィックスが退場となり、代役のセリーヌ・デュビルがゴールを守る。イングランドの中心選手はトップ下のケリー・スミス、今大会の開幕時点で108試合出場、43得点と言う32歳のベテランストライカーはイングランド女子史上最高の選手と言われ、背番号10がふさわしい。このスミスを止めたのが代役GKのデュビルであり、スミスの突進をカミカゼと呼ばれる勇敢な前進でストップし、スミスから闘争心を奪った。前半はフランスの守備陣の健闘もあり、両チーム無得点。
 先制点は白いユニフォームのイングランドがあげた。56分、イングランドらしいロングボールをフランスの守備陣が処理にもたつくところ、ジル・スコットがロブで前進気味のGKの頭上を抜ける得点をあげる。
 一方のフランスは準々決勝敗退かと思われた87分、守備でも活躍するエリーズ・ビュサグリアが左足で強烈なシュート、ポストに当たりながらも同点ゴールとなる。
 試合は延長戦でも決着がつかず、PK戦へともつれ込む。フランスが先蹴で、有利と思われたが最初のキッカーのアビリーが失敗する。しかし、2人目のビュサグリア、3人目のガエタン・ティネ、4人目のソニア・ボンパストール、5人目のユージェニ・ルソメが決め、代役GKのフランスは4-3でイングランドを下す。
 フランスは未踏の地であった準々決勝を勝ち抜き、準決勝に進出する。そして、フランス-イングランド戦の後に行われたドイツ-日本戦でドイツが敗れたことから、フランスは今大会で欧州勢のうちの上位2チームに入り、初のオリンピック出場権を獲得したのである。(続く)

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