第1284回 モンペリエでチリとドロー(3) 10年ぶりの対戦は追いつかれて引き分け

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■伏兵ベネズエラに敗れた南米選手権

 過去10戦は負けなしの8勝2分と好調のフランス、ローラン・ブラン監督は懸念されたストッパーに新たなメンバーを招集することなくチリ戦に挑む。一方のチリは本連載の第1回から第4回まで紹介した2001年9月1日のサンチアゴでの対戦以来10年ぶりの顔合わせとなる。
 これまでのチリとの対戦成績は2勝2敗であるが、2勝はいずれもフランス国内での勝利である。チリはアルゼンチンで開催された南米選手権ではグループリーグではメキシコとペルーに勝利し、優勝したウルグアイと引き分けてグループCの首位として決勝トーナメントに進出する。首位突破であることから、決勝トーナメント1回戦を勝ち抜くことは難しくないと思われたが、伏兵ベネズエラに1-2とまさかの敗戦となり、準決勝進出を逃してしまう。

■秋から始まるワールドカップ南米予選

 ワールドカップの南米予選は秋から始まるが、チリの初戦は敵地ブエノスアイレスでのアルゼンチン戦である。強敵との開幕戦を控え、チリはチーム力をあげたいところである。チリの先発メンバーは11人全員が国外のクラブに所属している。11人中8人が欧州のクラブで、ブラジル、メキシコ、アラブ首長国連邦のクラブに所属する選手がそれぞれ1人いる。4年間チリ代表を率いたマルチェロ・ビエルサ監督に代わり、2月からは同じアルゼンチン人のクラウディオ・ボルギが代表チームの指揮を執っている。1985年のインターコンチネンタルカップではアルヘンチノス・ジュニアーズの一員として訪日し、1986年のワールドカップでは優勝メンバーとなっている。
 南米選手権でその才能を世界に示し、イタリアのウディネーゼからスペインのバルセロナに巨額の移籍金で移ったばかりのアレクシス・サンチェスは試合の前日にようやくモンペリエ入りし、十分な練習時間が取れないことからベンチからのスタートとなった。

■注目のストッパーは主将エリック・アビダルとユネス・カブール

 一方のフランスであるが、GKはウーゴ・ロリス、DFは右はバカリ・サーニャ、中央はエリック・アビダルとユネス・カブール、左サイドはパトリス・エブラの負傷離脱によって追加招集されたガエル・クリシーというメンバーになった。MFは守備的な位置には東欧遠征で衝撃的なデビューを飾ったマルバン・マルタン、昨年夏のデビューし、この試合が11試合目となるヤン・エムビラの2人、この2人が今後しばらくはこのポジションのレギュラーとなるであろう。攻撃的なMFは中央にサミール・ナスリ、右にフローラン・マルーダ、左にロイック・レミー、そして1トップはカリム・ベンゼマである。
 この試合にはアルー・ディアラが先発しなかったため、本来はサイドバックでありながらストッパーを務めるアビダルが2年ぶりに主将を務めた。また通常は左サイドが多い、マルーダを右サイドで起用したが、これはレミーを起用したかったことに他ならない。

■ロイック・レミーのヘディングシュートで先制

 さて、実力伯仲のフランスとチリにふさわしい試合となった。ボール支配率、シュート数も互角の展開となったが、先にゴールネットを揺らしたのはフランスであった。19分、ベンゼマからのクロスをレミーがヘディングで得点する。直前のリーグ戦でもヘディングで得点を奪っているレミーは期待に応えた。
 前半はフランスが1-0とリードして折り返したが、後半の開始時点でチリはサンチェスを投入する。サンチェスのスピード感あふれるプレーはチリの攻撃の切り札となる。76分、そのサンチェスからのパスを途中から交代出場してきた32歳のベテランのニコラス・コルドバがゴールを決めて同点に追いつく。コルドバは、実に7年ぶりの代表招集で、試合途中から出場した10分後に大仕事をやってのけた。
 試合は1-1のドロー、フランスはこれで11試合連続負けなしとなる。
 フランスにとっては、アルバニア、ルーマニアとの連戦前の親善試合であったが、攻めながらも追加点が奪えなかったことに対するいらだち、懸案のストッパーはアビダルとカブールのコンビで臨むという不安、バカンスシーズンも終わりに近づいたファンの正直な感想であろう。(この項、終わり)

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