第1285回 20歳以下代表、未踏峰への挑戦 (1) エクアドル、ナイジェリアを下し初の準決勝進出
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■今回が2度目の本大会出場となるエクアドル
コロンビアで開催されている21歳以下ワールドカップについては本連載1279回から第1281回でグループリーグの模様を紹介してきた。開幕戦でコロンビアに敗れたが、第2戦で韓国、第3戦でマリを倒し、グループAの2位として決勝トーナメントに進出している。
フル代表のチリとの親善試合について第1282回から第1284回まで紹介したが、今回から再びコロンビアに舞台を移し、若きブルーの活躍を取り上げよう。
カルタヘナで行われるフランスの決勝トーナメント1回戦の相手はグループCで2位となったエクアドルである。豪州と引き分け、優勝候補のスペインに敗れ、1分1敗となって迎えた最終戦でコスタリカに2-0と勝利して2位に滑り込んできた。20歳以下の南米選手権でベスト4に入り、今回が2度目の本大会出場となる。
■メンバーを入れ替え、苦戦するがエクアドルを下す
決勝トーナメント1回戦でフランスはメンバー変更を行う。まず、日系人選手のガエル・カクタ、イングランドのチェルシーに所属するゲームメーカーであるが、大会が始まってからは単純なミスが多く、グループリーグ最終戦のマリ戦もハーフタイムでピッチを去っている。フランシス・スメルキ監督はカクタと話し合い、カクタの才能を認めつつも、大会開幕以降のパフォーマンスについて考慮し、カクタは決勝トーナメント1回戦はベンチからのスタートとなった。それ以外には7月に右ひざを痛めたヤニス・タフェもその後の調子がよくなく、試合前々日の練習を離脱し、先発メンバーから外れる。さらに守備の要であるストッパーのカリデュー・クリバリーが累積警告で出場停止となり、クリス・マバンガに代わって追加招集したトマ・フォンテーヌを起用する。フル代表同様、この世代もストッパーは人材難である。
このように主力メンバーを入れ替えて臨んだエクアドル戦、フランスは苦戦を強いられる。エクアドルがゲームを支配する中でフランスを救ったのはGKのジョナタン・リガリである。フランスもアントワン・グリツマンがFKを直接狙うがエクアドルのGKのファインセーブに阻まれる。両チーム無得点が続いた75分に均衡を破ったのはグリツマンであった。主将のグエイダ・フォフェナからのパスを受けると相手GKと1対1、このチャンスを決めて決勝点となり、フランスはベスト8に進出した。
■終了間際の同点ゴールで延長戦に突入したナイジェリア戦
フランスが準々決勝に進出したのは1997年大会、2001年大会に続き、3回目のことである。これまで2回はいずれも敗れており、イングランドを破ったナイジェリアを下せば、このカテゴリーで史上最高の成績となる。マリと戦ったカリに戻り、8月14日に準々決勝は行われた。
ナイジェリアはアンダーエイジではアフリカの中でも素晴らしい実績を誇る。フランスは1回戦に続き準々決勝もカクタを先発から外し、ベンチに置く。前半はナイジェリアのペースで試合が行われるが両チーム無得点、後半に入り、50分に勢いよく飛び出したアレクサンドル・ラカゼットが縦パスを受け、見事に先制点をあげる。試合はこのまま終了かと思われたが、アディッショナルタイムの93分、ナイジェリアはGKのロングキックからヘディングでつなぎ、同点に追いつき、試合は延長戦となる。
■延長戦で2ゴール、フランス初めての準決勝へ
延長戦に入って102分にフランスはフォフェナが20メートルの距離からループシュートで勝ち越し点をあげる。そして後半から途中出場していたカクタがようやく活躍する。104分にはカクタがノーマークとなったラカゼットに横パスをだし、ラカゼットはナイジェリアのGKをかわしてゴールを決め、3-1と差を広げる。
ナイジェリアも延長後半の11分に1点を返したが、フランスは劣勢の中で3-2と勝利し、この年代として初めて準決勝に進出したのである。(続く)