第1287回 ラグビーワールドカップ、30人の代表が決定(1) イタリアに6か国対抗で初黒星
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■代表チームが入念に準備できるラグビーワールドカップ
ワールドカップも欧州選手権もない奇数年の今年、フランスのスポーツファンにとって最大のイベントがラグビーのワールドカップであることは間違いない。1987年に始まったばかりの大会であるが、伝統国中心の運営などの戦略によって確固たる人気を博すに至った。
サッカーのワールドカップと異なるのは、各国の代表ともかなり入念な準備を行ってこの4年に1回のワールドカップに挑むことである。本家ワールドカップのサッカーの場合は、代表チームの活動は各クラブの活動の合間に行われ、合宿の機会も本大会前など限定される。ラグビーの場合は代表チームが活動する期間は国内外のリーグ戦が中断し、代表チームの強化に専念することができる。フランスをはじめとする欧州強豪国の場合は、11月に南半球のチームを迎え撃ち、2月から4月にかけては欧州域内で6か国対抗が行われ、6月には南半球を遠征するのが例年のスケジュールである。
■北半球の盟主フランス、地元開催で4位に終わった2007年
フランスのラグビーに関しては、北半球では最もワールドカップでの成績が安定している。1987年の第1回大会は決勝でニュージーランドに敗れ、1999年の第3回大会でも決勝で豪州に敗れている。20世紀においては北半球の盟主であったが、21世紀になりワールドカップではイングランドの活躍が目立つようになる。2003年大会、2007年大会とフランスは準決勝で敗退し連続して4位であるが、イングランドは2003年大会は北半球勢として唯一の優勝を果たし、フランスを主会場として行われた2007年大会でも準決勝でフランスを破り決勝に進出している。
前回大会については本連載第762回から第763回、第765回から第779回で取り上げたとおりであるが、大会自体は大成功をおさめたが、開催国のフランスは、直近の2年連続で6か国対抗で優勝を収め、優勝を狙ったが、開幕戦でアルゼンチンに敗れ、準決勝でイングランドに敗れ、さらに3位決定戦でアルゼンチンに再び敗れるという失態を演じてしまった。
■イングランドとの全勝対決に敗れて迎えたイタリア戦
フランスは2011年大会に向けて立て直しを図り、2010年の6か国対抗は5戦全勝で優勝を飾る。また、クラブレベルでも欧州をリードしていることは本連載の第1236回から第1237回ならびに第1242回から第1245回で紹介した通りである。しかし、ワールドカップイヤーである2011年大会、フランスは開幕からスコットランド、アイルランドに連勝し、ロンドンでのイングランドとの全勝対決で敗れてしまう。
そしてローマでのイタリア戦を迎える。イタリアは2000年から6か国対抗に参戦したが、従来の5か国との力は明白であった。過去11年間の6か国対抗の戦績は7勝1分47敗、勝ったことがあるのはスコットランドとウェールズだけである。そして今季もアイルランド、イングランド、ウェールズに対して3連敗でスタートしている。
■接戦の末、イタリアに金星を献上
ランスは敗れたとはいえ、イングランド戦と負傷者以外はほぼ同じメンバーで挑むが、このイタリア相手にフランスは苦戦を強いられる。開始2分に先制のPGを決められて、3点のビハインドとなる。フランスは14分にバンサン・クレルクがトライをあげて5-3と逆転する。21分にはモルガン・パラがPGを決めて8-3とリードを広げたが、その3分後にはイタリアはPGをすかさず決めて2点差に詰め寄る。32分にフランスはPGのチャンスを得るが、パラの蹴った楕円球はポストに嫌われ、点差を広げることができず、前半はフランスが圧倒的に攻めるが、わずか2点のリードにとどまる。
後半に入ってフランスは45分にPGで3点を追加、さらに50分にはパラがトライをあげて、自らゴールも成功させて、18-6と12点差をつける。ところが、59分にイタリアは反撃のトライとゴールに成功、64分にPGが決まってあっという間に2点差になる。逃げ切りを図るフランスは66分にPGを成功させ、5点差とするが、イタリアは69分にPGを決め、76分には逆転のPGを決める。フランスは21-22と競り負け、史上初めてイタリアに敗れ、監督のマルク・リエーブルモンは激怒したのである。(続く)