第1299回 2011年ラグビーワールドカップ開幕(3) ベストメンバーで日本を倒す

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■準優勝の第1回大会も予選プール初戦では勝てなかったフランス

 前回大会の開幕戦でアルゼンチンに敗れ、フランスのラグビーワールドカップ史上初めてインターナショナルボード以外の国に敗れ、さらに3位決定戦でも再戦して再び屈辱の敗戦、地元開催でありながら4位にとどまったフランス、実は準優勝した第1回大会も初戦は引き分けている。
 第1回大会の初戦はスコットランド戦、相手も強豪ではあるが、引き分けに終わっている。結局得失点差でフランスが予選プールで1位になり、決勝に進出したが、もし予選プールで2位だった場合、決勝トーナメントの1回戦でニュージーランドと対戦しており、ベスト8どまりだったことも考えられるのである。その後は第2回大会から第5回大会まで予選プールでは全勝しているが、フランスにとって初めての予選プールでの黒星が前回大会の初戦だったのである。

■2強3弱のプールA

 今大会の大会方式であるが、5チームずつの予選プールの2位までのチームが決勝トーナメントに進む。予選プールAはニュージーランドとフランスに、トンガ、日本、カナダがチャレンジするという2強3弱と言う構成である。決勝トーナメント進出だけを考えれば最も無風のプールであろう。
 予選プールを1位で通過すれば、グループBの2位と対戦、2位通過の場合はグループBの1位と対戦する。プールBはイングランド、スコットランド、アルゼンチンの3チームが決勝トーナメントを争う。フランスとしては苦手のイングランド、アルゼンチンとの対戦は避けたいところである。
この無風の予選プールの初戦、フランスはベストメンバーで戦う。フランスにとって予選プールだけではなく、決勝トーナメントまで想定しても最大の敵となりうるニュージーランドとの対戦は第3戦、このオールブラックス戦にターゲットを合わせ、チーム力をあげていくという考え方もあるが、フランスはベストメンバーで日本戦に臨むことになった。

■上から下まで白一色のフランス

 上から下まで白一色のセカンドジャージーのフランスの先発メンバーであるが、第1列はファビアン・バルチェロ、ウィリアム・セルバ、ニコラ・マス、第2列はジュリアン・ピエールとリオネル・ナレ、フランカーは主将のティエリー・デュソートワールが左、右にはイマノル・アリノルドキ、そしてナンバー8は代表2試合目のラファエル・ラカフィアである。ハーフ団はスクラムハーフにディミトリ・ヤシビリ、スタンドオフはフランソワ・トラン・デュック、スリークォーターバックは左からマキシム・メダール、ファブリス・エストバネ、オーレリアン・ルージェリ、バンサン・クレルク、フルバックにはセドリック・エイマンと言うバックス陣である。

■試合の最初と最後の10分間でゴールラッシュ

 この試合の結果はすでに日本の皆様もご存じの通り、47-21とフランスがダブルスコア以上の得点差をつけて大勝した。しかしながら、振り返ってみると、一つ間違うと4年前のアルゼンチン戦同様、敗れる可能性もあった。フランスはこの試合で6つのトライをあげたが、試合開始直後と試合終了終盤に時間帯が集中しており、日本の陣形が整わない5分と12分、選手入れ替えで守備のフォーメーションが崩れた73分、77分、81分に偏っている。すなわちかなりの時間帯でフランスは劣勢であり、後半開始直後に日本に4点差に迫られてから15分間、フランスは追加点をあげることができず、ファンの脳裏には4年前のアルゼンチン戦がよみがえった。ボールキープ率、陣地双方とも数字の上では日本が55%、フランスが45%であった。その結果としてタックル数はフランスの方が多かった。フランスが勝利を呼び寄せたのは日本のお株を奪うタックルである。タックル数で日本を上回っただけではなく、タックル成功率もフランスが上回った。
 そして6本のトライのうち4本は日本ボールを奪ったものであり、集中力においてフランスが日本を上回っていたことが勝利の理由であろう。ベストメンバーのフランスは手ごたえを感じ、カナダ戦を迎えるのである。(この項、終わり)

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