第113回 低迷するブルターニュの雄レンヌ(2) 新監督フィリップ・ベルジェロ、ようやく初勝利
■新監督はフィリップ・ベルジェロ
上位進出を狙うレンヌが新監督として招聘したのは日本の皆さんにもおなじみのピレネー出身のフィリップ・ベルジェロである。ベルジェロは1984年のキリンカップで訪日したトゥールーズのGKである。フランスのクラブとして初訪日であり、注目を集めたが、キリンカップではステファン・ダンジェロに出場を譲った。1986年のワールドカップ・メキシコ大会にも第3のGKとしてメンバー入りしたが、結局ジョエル・バツが準決勝までゴールを守り、3位決定戦でアルベール・ルストの控えとしてベンチ入りしただけであり、プレーヤーとして日本の皆さんにその姿を見せることはなかった。1988年に現役から引退した後、フランス代表のGKコーチを務め、ワールドカップ初優勝に貢献し、1998-99シーズンの終盤にパリサンジェルマンの監督に就任する。
■トルシエ・ジャパンの臨時GKコーチ
ところが、2000年12月には成績不振のためパリサンジェルマンの監督の座を追われることになる。失業者となったベルジェロに声をかけたのが日本代表のフィリップ・トルシエであった。トルシエは2001年2月に日本代表の臨時GKコーチとしてベルジェロを福島県のJヴィレッジでの代表合宿に招聘した。このとき、8人のGKを指導し、日本のGKが世界の流れに追いついていないことを指摘しながらも、正GKとして楢崎誠剛を抜擢している。フランス戦で自信を失ったかに見えた楢崎であるが、今回のワールドカップでは全試合にフル出場した。ベルジェロはこの臨時コーチにより日本でも有名になったが、その後は監督の座につくことができなかった。そのベルジェロを重宝したのがトルシエである。トルシエが欧州で試合を観戦する際は同行して情報収集やゲーム分析を行っている。本連載の第54回と第55回で取り上げた今年5月のベルギー戦もスタッド・ド・フランスで一緒に観戦している。
■開幕から7戦連続で勝利に見放される
そのベルジェロに託してリーグ初優勝を狙ったレンヌであるが、大誤算で開幕以来低迷を続けている。開幕戦はモンペリエとアウエーで戦い0-1の最少得点で敗北する。第2節はホームでの初戦であり、トロワとスコアレスドロー。第3節は同じブルターニュのガンガンとアウエーで戦い0-3と完敗。第3節を終了して依然無得点である。ようやくゴールネットを揺らしたのは第4節、地元でのマルセイユ戦。10分にフレデリック・ピキオンヌが先制点を決め、実にシーズンが始まって280分目の歓喜である。しかしこの歓喜もそう長く続かなかった。33分にシリーユ・シャプイスに同点ゴールを許し、62分にはアルゼンチンから移籍してきたガブリエル・ロースボールが2枚目のイエローカードを受けて退場する。守りの要を失ったレンヌはその後2点を失い、1-3とまた敗れる。第5節でバスティアに1-3と敗れた段階で、最下位に沈む。第6節は地元でソショー相手に2点を失いながら、85分、90分にオリビエ・モンテルビオが連続ゴールをあげ、同点に追いつく。勝ち点こそ1しか得られなかったが、地元での見事な同点劇で、チームは変身するかに見えた。しかし、第7節はランスで0-1と敗れる。第7節を終了した時点で2分5分けという成績である。過去10年間で第7節までに勝ち星が挙げられなかったチームはわずか17チーム。新しいところでは昨年のマルセイユとナントが思い出される。昨シーズンのナントはディフェンデリングチャンピオンでありながら、第7節までの成績は今季のレンヌと同じ2分5敗。ベルジェロの責任を問う声もあがった。
■ナントを下し、今季初勝利
そのナントとレンヌは第8節で対戦した。西部のライバルチームを迎え、マルセイユ戦に次ぐ2万人の観衆を集めて試合は始まる。両チーム無得点のまま終盤を迎えたが、この試合唯一のゴールは79分、主将でありベテランDFのドミニク・アリバージュが今季初勝利を呼び寄せた。
昨年の場合、序盤低迷したナントも結局持ち直し、10位に入っている。初勝利をあげたものの、依然として最下位のレンヌは最下位脱出、そして上位進出を目指して9月28日にモナコと対戦するのである。(この項、終わり)