第114回 輝きを失った欧州チャンピオンズリーグ(1) 低下する一方のテレビ視聴率
■毎年のように変わる大会形式
欧州クラブの頂点を目指す、欧州チャンピオンズリーグ。このところ毎年のように大会方式が変更されているが、それはこの大会に関するUEFAの切実な危機感から来ている。
本年度の大会形式について簡単に紹介しよう。UEFAは欧州カップの過去の戦績で各国リーグにランキングを策定している。この各国リーグのランキングの上位国はリーグ上位の複数チームが出場し、下位の国のリーグは優勝チームだけしか出場できない。今年は47か国の72チームが出場し、200試合以上が行われる大規模な大会となった。また、32チームで行われる本選に先立って予選が行われ、本選出場チームの半分にあたる16チームは予選勝ちあがり組である。ランキング下位のリーグのチームや上位国のリーグでの3位のチームは予選から出場しなくてはならない。一方、ランキングの9位までのリーグの優勝チーム、ランキングの6位までのリーグの2位チーム、前回優勝チームは本選からの参加となる。3回戦まである予選の1回戦は7月中旬に行われている。
また、本選はまず4チームずつの8つのグループに分かれて1次リーグを行い、各グループの上位2チームが次の段階に進出し、4チームずつ4つのグループに分かれて2次リーグが行われる。2次リーグの各グループの上位2位までに入った8チームが決勝トーナメントに進出し、ホームアンドアウエーのノックアウトシステムで準々決勝、準決勝を行い、決勝だけは1試合で行われる。
■前身の欧州チャンピオンズカップ
10年ほど前までは「欧州チャンピオンズカップ」という名称で、各国リーグの優勝チームがホームアンドアウエーのノックアウトシステムで戦っていた。しかし、上記のような「リーグ戦」の導入により名称も「欧州チャンピオンズリーグ」と改められ た。また、かつては東欧諸国の自由化の前であり、参加国も30数か国であったが、東欧の自由化に伴う小国の独立により参加国は激増した。
■チャンピオン以外の参加とリーグ戦方式の導入
出場チームを「チャンピオンである各国リーグの優勝チーム」以外に広げることは議論があったが、結局はレベルの高いリーグから複数のクラブが出場することによりレベルの高いチームが数多く出場し、人気を上昇させようと考えた。例えば昨シーズ ンのイングランドリーグ3位のマンチェスター・ユナイテッド、ドイツリーグ3位のバイエルン・ミュンヘン、スペインリーグ4位のバルセロナなど欧州の頂点を極めたチームはかろうじて今年のチャンピオンズリーグに参戦しているのである。また、リーグ戦方式を導入することも議論となったが、レベルの高いチームの試合をより多く行うことからリーグ戦の導入に踏み切った。
■全欧州的に低下する視聴率
この結果、強豪国のビッグクラブに有利な大会規定により、数多くのビッグクラブ同士の試合を見ることができることになった。しかしながら、この興行優先の大会規定が、逆にファンの関心を下げてしまっている。
例えば、過去5年間、テレビの視聴率は下がる一方である。フランスにおけるサッカー番組の視聴率については本連載の第25回で取り上げたとおりであり、昨年のフランスのテレビ視聴率ベスト100に欧州チャンピオンズリーグの試合は入っていない。過去5年間のフランスにおける欧州チャンピオンズリーグの視聴率は下降の一途をたどり、毎年前年の視聴率を下回るという状態が続いている。5年前は16%あった視聴率が昨年は10%に落ち込んでいる。
この視聴率の低下はフランスだけの傾向ではなく、イタリア、イングランド、スペイン、ドイツでも同様に視聴率の低下が続いている。イタリアは全くフランスと同じ状況で完全な右肩下がり、イングランドはマンチェスター・ユナイテッドが劇的な逆転勝ちをおさめた4年前を頂点に下がりつづけている。スペインもレアル・マドリッドの優勝以降、同じであり、ドイツは一昨年バイエルンが優勝、昨年レバークーゼンが準優勝と好成績を残して若干持ち直したが、それでも5年前と比べればはるかに低い視聴率である。
テレビの視聴率の低下に象徴されているように、国民の注目度も下がっているのである。(続く)