第117回 スロベニア、マルタと連戦(2) 3大会連続出場を狙うスロベニア

■東欧の自由化が影響した1996年欧州選手権イングランド大会

 フランスは中3日でスロベニア、マルタと連戦するが、最初に対戦するスロベニアはグループ1に所属するフランスにとって最大のライバルである。スロベニアは東欧諸国の自由化によって1991年に独立した国である。1990年前後に欧州ではたくさんの国が誕生したが、それらの国がワールドカップや欧州選手権にチャレンジするようになったのは1996年欧州選手権イングランド大会からのことである。スロベニアもサッカーの母国で行われる欧州選手権を目指してエントリーした。このときにエントリーしたチームは47チーム。前回のデンマーク大会の予選は33チームしかエントリーしておらず、サッカー界にも東欧諸国の自由化が影響してきたのである。

■惨敗に終わった最初と2回目の挑戦

 イングランド大会の予選はチーム数の増加により、ワールドカップ米国大会が開催される前から行われている。初陣のスロベニアはグループ4に入るが、このグループのメンバーを見るとイタリア、リトアニア、クロアチア、ウクライナ、エストニアであり、イタリア以外の5チームは初めての欧州選手権予選の参加となる。(ワールドカップ予選についてはバルト三国のリトアニア、エストニアは第二次世界大戦前のイタリア大会予選、フランス大会予選には出場していた。)スロベニアは初戦をホームで戦い、イタリアと1-1のドローと好スタートを切ったが、結局3勝2分5敗という結果でグループ5位に終わった。イングランドを目指した東欧からの初参加国のうち、結局サッカーの母国を踏むことができたのはクロアチアだけであり、ロシア、チェコは新しく独立した国に戦力を供給しながら、古豪の意地を守った。
 スロベニアにとって2回目の国際舞台への挑戦は1998年ワールドカップ・フランス大会であったが、この予選では1勝もすることができず、1分7敗と惨敗している。

■老獪な戦い方で勝ち抜いた2000年欧州選手権予選

 新興国の中でも出遅れた感があったスロベニアであったが、ようやくチャンスが巡ってきたのが2000年欧州選手権ベルギー・オランダ大会予選のことであった。スロベニアはノルウェー、ギリシャ、ラトビア、アルバニア、グルジアと同じグループ2に入る。上位2位までに入れば本大会出場の可能性がある。このグループの中で力が一つ抜けているのがノルウェー、続いてギリシャであろう。スロベニアは初戦をアウエーでギリシャと対戦、引き分けに持ち込む。続く第2戦はホームのノルウェー戦で負けるが、2位を狙うためにはホームでの敗北は現実的な結果である。この後、上位国相手には負けても下位国にはホーム、アウエーとも確実に勝つ、というホームアンドアウエーのリーグ戦の鉄則を守った老獪な戦い方を続け、ラトビア、アルバニア、グルジアには5勝1分と勝ち点を重ね、第9戦のノルウェー戦、最終戦のギリシャ戦を残して早々とプレーオフ進出を決めたのである。ちなみに最後のノルウェー戦、ギリシャ戦は連続して大敗する。
 プレーオフの相手はフランスと同じグループ4の2位のウクライナ。大混戦となったグループ4のウクライナがスロベニアを研究する余裕はなく、スロベニアが1勝1分と旧ソ連の主力であったウクライナを破り、東欧革命以後に誕生した国としてクロアチアに次ぐ国際舞台への登場となったのである。本大会ではユーゴスラビアと3-3と引き分けた後、スペインに1-2と敗れ、決勝トーナメント進出をかけた最終戦は予選で対戦した際は「死んだふり」を決め込んだノルウェー。結局スコアレスドローでスロベニアの決勝トーナメント進出はならなかったが、この経験は続く2002年ワールドカップ韓国・日本大会にも受け継がれていく。

■堂々とした戦い方で勝ち抜いた2002年ワールドカップ予選

 ワールドカップ初出場を目指すスロベニアはロシア、ユーゴスラビア、スイス、フェロー諸島、ルクセンブルグと同じグループ1に入る。それまでの欧州選手権、ワールドカップの予選で最も厳しい組み合わせであろう。しかし、スロベニアは強豪のロシア、ユーゴスラビアに対しても全く臆すことなく挑み、リードされても必ず追いつくという戦いをする。終わってみれば5勝5分と負けなしの成績で2位に入る。そしてプレーオフの相手は東欧の古豪ルーマニアである。まずホームでは先制を許しながら逆転勝ちし、アウエーで引き分け、ワールドカップへのチケットを手に入れたのである。本大会ではグループリーグで敗退したが、過去2回連続して予選を勝ち抜いた人口200万人のスロベニアは第2シードとしてフランスにとって注意が必要な国である。(続く)

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