第1357回 アフリカ選手権決勝トーナメント(3) アフリカ大陸に10人のフランス人の代表監督

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ザンビアの快進撃を支えたフランス人監督のエルベ・ルナール

 世界ランキングがアフリカ諸国の中で最上位のコートジボワールと、世界ランキング71位で今大会の出場国でも下位になるザンビアが決勝に残った。ザンビアはワールドカップに出場したことはなく、アフリカ選手権も初出場の1974年大会は準優勝しているが、1996年大会の3位を最後にこれといった成績を残すことができなかったが、前回の2010年大会は準々決勝に進み、ナイジェリアにPK戦で敗れている。
 このザンビアの快進撃を支えたのがフランス人監督のエルベ・ルナールである。ザンビアは第1352回の本連載で紹介したとおり、英国から独立した国であり、23人の登録選手のうちフランスのクラブに所属している選手はいない。しかし、監督はフランス人である。ルナールは2008年から2010年にもザンビアの監督をしており、前回のアフリカ選手権で14年ぶりの決勝トーナメント進出の原動力となっている。その後、アンゴラの監督になったが、給与が支払われず、ビザの発給にも手間取るなどのトラブルに見舞われ、半年でアンゴラの監督を辞している。

■ザンビア初のフランス人代表監督

 ザンビアの監督はこれまでも数々の外国人が務めてきたが、フランス人としてはエルベが最初の監督であり、それまでは英国人、ドイツ人。デンマーク人などが務めてきた。エルベがザンビアの監督に就任したのはエルベが2007年から2008年にかけてガーナのコーチを務めていたからである。エルベはアフリカにおけるフランス人名監督として活躍したクロード・ルロワの片腕として、ガーナをコーチとして3位に導いている。
 エルベはアンゴラの監督を辞し、昨年11月に本大会を目指すザンビア代表監督に復帰し、3度目のアフリカ選手権に臨むことになったのである。

■マリのアラン・ジレス、ギニアのミッシェル・デュスイエ、ニジェールのローラン・クルビス

 今大会はエルベ以外に3人のフランス人監督がいる。マリのアラン・ジレス、ギニアのミッシェル・デュスイエ、ニジェールのローラン・クルビスである。前回の2010年大会はガボンを率いたジレスとカメルーンのポール・ルグアンの2人のフランス人監督がいた。また2008年大会はこれまでで最多の7人のフランス人監督が指揮をした。しかし、今回の4人というのはその時の7人に勝るとも劣らない内容である。

■出場を逃したアフリカ諸国を率いる7人のフランス人監督

 今大会に出場できなかった国々にも注目しなくてはならない。昨年の予選敗退後に多くの国では新監督を迎えているが、その中に多くのフランス人監督が含まれている。常連国でありながら今大会の出場権を逃したカメルーンはそれまでカメルーンのクラブチームを指揮してきたドゥニ・ラバーニュを起用している。同じく予選敗退したトーゴは1980年代前半にフランス代表のFWとして活躍したディディエ・シスが監督として迎えられた。シスは1992年に選手生活を終えている。昨年11月にアフリカ選手権の出場を逃したと語の監督としてワールドカップ予選を戦っている。シスと同時期に代表でプレーしたことのあるマニュエル・アモロスは今年初めにベナンの監督に就任している。
 また今季は2部に降格してしまったRCランスであるが、1998年に初優勝した際の守備の要がジャン・ギー・ワレムであった。ワレムは2010年にRCランスの監督を辞し、昨年夏にコンゴ民主共和国の監督に就任している。そして中央アフリカのジュール・アコルシは2010年から監督を務めている。
 そして、忘れてならないのは、決勝に進出したザンビアのエルベの師匠のルロワである。1988年にカメルーンの代表監督としてアフリカ選手権で優勝したルロワは、その後これまでアフリカ諸国で多くン代表チームを率いてきた63歳のベテラン監督はアフリカ諸国で監督を歴任してきたが、2008年にアフリカを離れ、オマーン、シリアという中東の代表監督を務めてきた。そして昨年9月にコンゴ人民民主共和国の監督に就任している。
 このように現在のアフリカには10人のフランス人の代表監督がいるが、ザンビアのエルベがアフリカの頂点まであと一歩に迫っているのである。(続く)

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