第1358回 アフリカ選手権決勝トーナメント(4) ザンビア、PK戦を制し初優勝を飾る

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■フランスの国籍法の特徴である二重国籍

 前回の本連載では今回のアフリカ選手権に出場している4人のフランス人監督と、それ以外にアフリカ諸国の代表監督となっている6人のフランス人を紹介したが、フランス人監督はこの10人だけではない。
 それはフランスでは珍しくない二重国籍によるものである。自由・平等・博愛を旨とするフランスの精神はその国籍法に顕著に表れている。国籍を決めるのは両親がどの国籍を持っているかという血統権、どこで生まれたかという生地権、誰と結婚したかという婚姻の権利、どこに住んでいるかという居住の権利、さらには個人の意思など、様々な要因がある。フランスの国籍法はこれらの国籍を決定する権利の中から個人がどれを選ぶかを尊重するとともに、親から引き継いだ国籍や、生まれたときに獲得した国籍を放棄することを要求しない。したがって二重国籍が容認されるのである。

■フランスの二重国籍を持つ監督たち

 この二重国籍の持ち主は今回のファイナリストであるコートジボワールのフランソワ・ザウイ監督はコートジボワール人として初めてイタリアのクラブでプレーした選手であるが、フランスでもナンシー、トゥーロンでも活躍し、フランス国籍も有している。またガボンのゲルノト・ロール監督はドイツ出身であるがドイツとフランスの国籍を有している。
 また、今大会に出場しなかった国でもコモロのアリ・エムバエ・カマラはコモロ出身でフランスに10年在住し、トップチームには昇格できなかったがRCランスに所属していたことがあり、コモロとフランスの二重国籍である。そしてアルジェリアのバヒド・ハリホジッチ監督はフランスのオールドファンにはおなじみの名前である。1980年代にナント、パリサンジェルマンに所属し、フランスリーグの得点王に2度輝いている。指導者としてもフランスのクラブを率い、ボスニア・ヘルツェゴビナとフランスの二重国籍である。
 このように現在のアフリカのサッカーの指導者がフランスに大きく依存していることがわかる。

■34歳のディディエ・ドログバ、痛恨のPK失敗

 2月12日、ガボンのリーブルビルでコートジボワールとザンビアの間で決勝戦が行われた。初優勝を狙うザンビア、そして1992年以来20年ぶり2度目の優勝を狙うコートジボワール、アフリカの中で世界ランキングが最高位のコートジボワールはここまで5戦全勝で9得点で無失点、一方のザンビアは世界ランキングは71位、アフリカの中で16番目のランキングでありグループリーグでは2勝1分、得点5、失点3であったが決勝トーナメントは準々決勝3-0、準決勝1-0とコートジボワールと同じスコアで決勝に進出してきた。
 コートジボワール有利という前評判の中で試合はキックオフされた。試合はエレファントというニックネームのコートジボワールが優勢に試合を進める。両チーム無得点の中で69分、コートジボワールはジェルビーニョが倒されてPKを得る。このPKのキッカーはディディエ・ドログバである。34歳のドログバにとってこれが最後のアフリカ選手権であろう。しかしボールはバーを越し、痛恨の失敗。ドログバは今大会2度目のPK失敗となった。

■7人目まで全員が成功、9人目で決着

 その後もコートジボワールが攻め続け、88分にはビッグチャンスが訪れるが、ゴールならず、試合は延長戦となる。延長戦に入ると守勢に回っていたザンビアがカウンターアタックを仕掛けるシーンが見られたが、決勝点は生まれない。コートジボワールも延長後半に決定的なチャンスをつかむが、得点ならず、アフリカ王者の座はPK戦によって決定することになった。
 決勝のPK戦は過去6回あるが、そのうち4回はスコアレスドローである。コートジボワールは決勝のPK戦は過去1勝1敗、ザンビアは決勝では初めてのPK戦である。
 PK戦は最初の5人は両チームとも全員が成功させ、サドンデスとなる。6人目、7人目も成功させ、8人目となる。ここで両チームとも失敗し、9人目となる。コートジボワールの10番ジェルビーニョが失敗、そしてザンビアのストピラ・スンズが成功させ、ザンビアに初めての栄冠をもたらしたのである。(この項、終わり)

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