第1368回 リヨン、アポエルに敗れる(1) グループリーグ首位チームに与えられるアドバンテージ

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■アポエルにスコア的には辛勝だったリヨン

 前回までの本連載ではフランス代表がアウエーで行われたドイツ戦で2-1と快勝し、18戦無敗という快進撃を続けていることを紹介した。代表チームの活躍と裏腹にフランスのクラブチームはチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグという欧州カップ戦でなかなか上位に進出することができない。今季も欧州カップの決勝トーナメントに残ったフランス勢はリヨンとマルセイユだけである。
 リヨンは今年で9年連続のチャンピオンズリーグでの決勝トーナメント進出であるが、近年は1回戦敗退が目立つ。リヨンの成績を振り返るならば、初めてチャンピオンズリーグの決勝トーナメントに進出した2003-04シーズンから3年連続してベスト16の壁を破り準々決勝に進出しているが、その後は決勝トーナメント1回戦での敗退が多く、過去5シーズンは準決勝に進出した2009-10シーズンを除く4シーズンは初戦敗退が続いている。
 そして今年はキプロスのアポエルが決勝トーナメント1回戦の相手であり、本連載第1359回と1360回で紹介したとおりリヨンでの第1戦はリヨンが1-0と勝利している。この試合はリヨンが一方的に攻め、アポエルのシュートは終了間際のわずか1本というワンサイドゲームであった。しかしながら、結果は1-0と僅差であり、予断を許さない結果である。

■グループリーグ首位のアポエルと2位のリヨン

 また、グループリーグの戦績はリヨンはグループDの2位であり、一方のアポエルはグループGの首位である。チャンピオンズリーグの決勝トーナメントの1回戦はグループリーグを首位で通過したチームにアドバンテージが与えられ、グループリーグを2位で通過したチームと対戦し、さらに第2戦をホームゲームで戦うことができる。第2戦をホームで戦うというメリットはまず第1戦の結果を受けて第2戦のゲームプランをホームという有利な立場で組み立てることに加え、第1戦、第2戦とも90分ずつの戦いで同じ結果になった場合、延長戦やPK戦をホームで戦うことができる。

■アドバンテージを活かせないグループリーグ首位通過チーム

 過去の事例を見ると決勝トーナメント1回戦で第2戦が90分終了した段階で第1戦と同じスコアになったケースは過去5年間で4回あるが、グループリーグ首位チームはそのアドバンテージを活かしていない方が多い。一番近いところで3年前の2008-09シーズンのASローマ(イタリア)-アーセナル(イングランド)戦、第1戦はアーセナルが1-0で先勝し、第2戦は90分終えた段階で1-0とASローマがリードし、試合は延長戦へ。延長でも決着がつかず、PK戦となったがアウエーのアーセナルが7-6と勝利している。その前年の2007-08シーズンも同様であった。グループリーグで2位だったシャルケ04(ドイツ)はグループリーグ首位通過のポルトにアウエーでPK戦勝利、またフェネルバフチェ(トルコ)もグループリーグ首位通過のセビリア(スペイン)をPK戦で下している。

■延長戦での決勝ゴールで勢いに乗った5年前のACミラン

 グループリーグ首位通過チームがそのアドバンテージを結果に結びつけたのは5年前の2006-07シーズンのACミラン(イタリア)までさかのぼらなくてはならない。グループリーグでリールを勝ち点1の差で抑えて首位通過したACミランの決勝トーナメント1回戦の相手はスコットランドのセルチック・グラスゴー、当時は日本の中村俊輔もセルチック・グラスゴーに所属していたことから日本のファンの皆様もこの試合の結果についてはよくご存じであろうが、改めて紹介しよう。
 グラスゴーのセルチックパークでの第1戦はスコアレスドロー、ミラノのサンシーロ競技場での第2戦も圧倒的にACミランが攻め続けるが、90分終わったところで両チーム無得点、試合は延長戦に入る。延長前半の93分、ACミランはブラジル代表のカカが均衡を破るゴールをあげる。セルチックもここで追いつけば、アウエーゴール2倍ルールで優位に立つことができる。セルチック・グラスゴーは延長後半には背番号25の中村をベンチに下げ、勝負に出るが、ACミラノの赤と黒の壁を破ることができず、ホームアドバンテージの30分間に決勝点をあげたACミラノが勝ち抜き、準々決勝以降は勢いを加速し欧州チャンピオンとなったのである。(続く)

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