第1385回 フランスカップに驚きのファイナリスト(4) 史上初、3部リーグから4強に2チーム
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■もう1つのアジャクシオのクラブ、GFCOアジャクシオ
ナショナルリーグのクビリーがマルセイユを延長戦の末破るという波乱の起こった翌日の3月21日、フランスカップの準々決勝の残り3試合が行われた。テレビ中継の関係で、17時からGFCOアジャクシオ-モンペリエ、19時15分からバランシエンヌ-レンヌ、20時50分からパリサンジェルマン-リヨンと時間をずらしてキックオフされる。
この中でビッグクラブ同士の対戦のパリサンジェルマン-リヨン戦が注目を集めていたが、前日のクビリーの勝利で同じナショナルリーグのGFCOが1部リーグ2位のモンペリエに挑戦する試合が注目を集めることになった。アジャクシオのサッカーチームといえば、1部で現在16位のACアジャクシオが有名であるが、そのライバルチームがこのGFCOアジャクシオである。GFCOとはガゼレック・フットボール・クラブ・オランピックの略であり、このクラブは1960年にFCアジャクシオとガゼレックFCが合併して誕生したクラブである。ガゼレックはガスと電気、すなわちこのガゼレックFCはフランスでガスと電気を供給していた公共企業体であるEDF-GDFの社内のクラブチームなのである。1部に所属したことはないが、2部で16季プレーしており、今季1部に復活し、1部で通算11シーズン目となるACアジャクシオには及ばないものの、アジャクシオではACアジャクシオと人気を二分するクラブである。
ナショナルリーグで2位につけ、来季は2部に復帰することも夢ではない。アジャクシオからフランスカップの準々決勝に進出したのは1966年のACアジャクシオ以来であり、GFCOアジャクシオは本来の本拠地であるアンジェ・カサノバ競技場(6,000人収容)ではなく、ライバルACアジャクシオの本拠地フランソワ・コティ競技場(13,500人収容)を借りてモンペリエを迎える。
■地元ファンの期待に応え、GFCOアジャクシオがモンペリエを圧倒
平日の夕暮前のキックオフとあって、観衆は5000人以下であったが、異様な雰囲気の中でのキックオフとなる。そしてファンの期待通りの試合となった。試合は勢いに乗るGFCOアジャクシオがモンペリエを圧倒する。前半は両チーム無得点で折り返すが、ホームチームの先制点は時間の問題であった。後半も終盤を迎えた75分、GFCOアジャクシオの右サイドのDFのヨアン・ボコニャノがゴールをあげるとGFCOアジャクシオのライバルチームの本拠地はかつてないほどの興奮に包まれる。モンペリエは得点を返すことができず、GFCOアジャクシオが前日のクビリーに続いて準決勝に進出する。3部リーグ以下のチームが2チーム準決勝に進出したのはフランスカップの長い歴史の中でも初めてのことである。
■3日後のリーグ戦の前哨戦を制したレンヌ
そのアジャクシオの試合結果はフランス全土を瞬く間に知れ渡った。残る2試合は1部勢同士の対戦である。バランシエンヌとレンヌは週末のリーグ戦でも対戦する。レンヌが先制し、バランシエンヌはいったんは追いついたが、後半に入ってレンヌが2点をあげて突き放し、3日後に行われるリーグ戦第29節の前哨戦で勝利したのである。
■ビッグクラブ対決はリヨンがパリサンジェルマンに今季初勝利
準決勝最後の試合はパリサンジェルマン-リヨン戦である。パリサンジェルマンが最後に公式戦で敗れたのは昨年12月1日にヨーロッパリーグの第5節のレッドブル・ザルツブルク戦である。ほぼ4か月負けておらず、カルロ・アンチェロッティ監督招聘は吉と出たようである。リーグ戦のライバルであるモンペリエが姿を消し、パリサンジェルマンには昨年のリールに続く二冠の期待がかかる
両チームはすでにリーグ戦での戦いを2試合とも終え、パリサンジェルマンの1勝1分、そしてこの日も19分にネネがPKを決めて先制する。4万2000人のパリジャンは熱狂するが、リヨンは25分にキム・カールストロームが25メートルのFKを直接決めて同点、さらに39分にはカールストロームからのパスをリサンドロ・ロペスが決めて逆転、後半ロスタイムにはバフェタンビ・ゴミスが右足のシュートを決めて、リヨンは3-1とパリサンジェルマンを下し、4強最後の座をつかんだのである。(続く)