第1391回 2012年フランスカップ決勝(3) 盛り上がるクビリーのファン

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■チャンピオンズリーグ出場が遠のいたリヨン

 ナショナルリーグのクビリーと1部のリヨンの顔合わせとなったフランスカップの決勝であるが、ナショナルリーグのクビリーの快進撃にファンは注目し、フランスを代表するビッグクラブの1つであるリヨンも影が薄くなっている。前回の本連載でリヨンは2週間前のリーグカップ決勝でマルセイユに延長戦の末敗れたことを紹介したが、この直後に行われたリーグ戦のトゥールーズ戦でも0-3と完敗している。このトゥールーズ戦での敗北により、リヨンはリーグ戦の順位は4位のままであるが、3位のリールと勝ち点の差が6に開いてしまった。リヨンは続くロリアン戦でも前半は1-2とリードを許し、後半に逆転したものの、来季のチャンピオンズリーグ出場のためになんとか3位以内に入りたいところである。

■フランスカップ優勝に付随するシーズン後のタイトル

 フランスカップ優勝に付随するシーズン後の大会への参加について紹介しよう。フランスリーグからは上位3チームがチャンピオンズリーグ、4位のチームがヨーロッパリーグに出場できる。さらにフランスカップとリーグカップの勝者はヨーロッパリーグに出場できる。
 もし、現在リーグ4位のリヨンがリールを逆転してリーグ戦で3位になった場合、フランスカップ決勝でクビリーが敗れたとしてもフランスカップの準優勝チームとして来季のヨーロッパリーグに出場することができる。
 一方、リーグ戦の優勝争いはモンペリエとパリサンジェルマンに絞られたが、リーグ戦の優勝チームとカップ戦の優勝チームで争われるチャンピオンズトロフィーが今年は7月28日に米国のニューヨークで行われる。しかしこのチャンピオンズトロフィーはプロチームしか出場することができず、カップ戦勝者として決勝戦の結果に関係なくリヨンが出場することになる。
 しかし、両チームともフランスカップ決勝で勝利してこれらのタイトルに臨みたいところである。

■アマチュアチームに巨額の富をもたらしたフランスカップの快進撃

 そして、85年ぶりに決勝に進出したクビリーに対する関心は高い。クビリーは年間予算わずか190万ユーロで、1億5000万ユーロのリヨンのほぼ80分の1の予算のアマチュアクラブである。26人の選手のうち、クラブと契約を結んでいるのは14人、それ以外の12人はアマチュアである。契約選手の場合はクラブから給与が支給されるが、それ以外に勝利給(1勝につき180ユーロ)、引き分け給(1引き分けにつき90ユーロ)がクラブから支給される。アマチュア選手の場合、給与はもらえないが、勝利給、引き分け給は契約選手と同様に同額を受け取ることができる。スポンサーには自動車保険ではフランス国内の学生に人気を誇るマットミュット、スーパーマーケットのルクレール、そしてクラブが遠征する際に使用するバスを所有するベオリアという企業が名を連ねている。
 そのようなクラブにとってこのフランスカップでの快進撃は思わぬ収入をもたらしている。主催者であるフランスサッカー協会からの支援金は100万ユーロを超えた。さらに入場料収入に関しても主催クラブに入場料の25%がまず入り、経費を除いた残りを出場チームで半分ずつに分配するようになっている。ベスト16決定戦、ベスト8決定戦、準々決勝、準決勝を主催したクビリーは、80万ユーロがクラブの収入になっており、フランスカップだけで通常の年間予算に近い収入を記録している。

■高まるファンの期待、バス120台でスタッド・ド・フランスへ

 準々決勝のマルセイユ戦あたりからファンのボルテージも高まり、試合ごとに製作する1枚5ユーロのマフラーが、マルセイユ戦では1000枚、レンヌ戦では500枚売れ、決勝戦では1万2000枚販売され、このマフラーは1枚につき1ユーロがクラブの懐に入る仕組みになっている。
 前述のとおり、スポンサー企業にバス会社があることからこのノルマンディーからサンドニまでの応援バスツアーの料金はわずか5ユーロと格安である。そして4月28日の決勝戦の日、クビリーからバス120台を連ねた大応援団がスタッド・ド・フランスを目指すのである。(続く)

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