第1439回 ディディエ・デシャンの新生フランス(2) リーダーとして期待されるリオ・アントニオ・マブーバ

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ストッパー陣に新顔を加える

 8月9日にウルグアイ戦に向けての22人のメンバーを発表したディディエ・デシャン監督、約50人の候補の中から22人を選んだわけであるが、メンバーの選出にいくつか特徴的な点がある。
 まず、このところ弱点とされてきたストッパー陣、欧州選手権ではフィリップ・メクセス、アディル・ラミ、ローラン・コシエルニーの3人がこのポジションを務めたが、メクセス、ラミが外れている。ラミは体調が不良であるため外れたが、メクセスはデシャン監督の意向でチーム編成から外れている。代わりのストッパー候補は復帰したママドゥ・サコ、欧州選手権直前に招集されながらメンバーから外れたマプー・ヤンガ・エムビワ、初招集のラファエル・バランである。またコシエルニーは招集後、負傷のため、メンバーから外れたが、デシャン監督は追加招集を行うことなく、ウルグアイ戦に臨んだ。

■2004年に代表にデビューしたリオ・アントニオ・マブーバ

 そして中盤ではアルー・ディアラ、フローラン・マルーダの名前がない。メクセス同様、デシャン監督の構想から外れているようである。アルー・ディアラは前任のローラン・ブラン監督の信頼が厚い中盤のリーダー格の選手であり、マルーダも同様に攻撃的中盤を率いる存在である。
 デシャン監督が中盤のリーダーとして期待するのがリオ・アントニオ・マブーバである。父親はザイール(現在のコンゴ民主共和国)代表として1974年のワールドカップ西ドイツ大会に出場し、アンゴラ人の母親との間に生まれたマブーバであるが、アンゴラ内戦のため公海上を避難していた船の上で生まれたという数奇な運命の持ち主である。
 最初に代表に入ったのは2004年8月のボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合である。2大会前の欧州選手権の準々決勝で敗れたフランス、レイモン・ドメネク監督の最初の試合で、春のトゥーロン国際大会で最優秀選手となった20歳の若者に声がかかり、先発出場したのである。ちなみにこのボスニア・ヘルツェゴビナ戦は本連載第362回から第364回で紹介しているが、先発メンバーのうち4人、交代選手のうち1人合わせて5人が代表デビューとなった。ちなみにマブーバはエリック・アビダル、セバスチャン・スキラッチ、パトリス・エブラ、ガエル・ジベという顔ぶれであり、時代を感じさせる。この中で2年後のドイツのワールドカップに出場したのはアビダルとエブラの2人、そして今なお代表のメンバーに名を連ねているのはエブラだけである。

■リールの主将として57年ぶりのリーグ制覇に貢献

 当時ボルドーに所属していたマブーバはその後たまに代表の試合に出場するが、父の出場したドイツでのワールドカップに出場する夢はかなわず、2007年3月のオーストリア戦を最後に代表から離れ、スペインのビジャレアルに移籍する。
 1年でフランスリーグに復帰し、2008年からリールでプレーする。リールでは主将としてチームを率い、加入前は7位だった古豪を、2008-09シーズンは5位、2009-10シーズンは4位と順位を上げ、ついに2010-11シーズンは57年ぶりの優勝、さらにはフランスカップとの二冠と栄光へと導いた。そのリールでの実績を評価しての5年ぶりの復活である。

■驚きの選出となったジミー・ブリアン、バフェタンビ・ゴミスの復帰

 また初選出のクリストフ・ジャレは28歳でパリサンジェルマンの右サイドDFで今季は主将を務める。そしてエチエンヌ・カプーはトゥールーズに所属する守備的MFでアルー・ディアラの後継者、ヤン・エムビラやヨアン・カバイエの代役として期待されている。 さらに、驚きといえば、攻撃陣のジミー・ブリアン、バフェタンビ・ゴミスの復帰であろう。2人ともリヨンに所属する27歳の選手である。ブリアンは2010年8月にワールドカップ組を除いて戦ったノルウェー戦以来の代表入り。ノルウェー戦を例外とするとその前の代表での試合は2008年11月のウルグアイとの親善試合にさかのぼる。ゴミスも昨年10月7日のアルバニア戦以来であるが、その前の代表での試合は2009年10月の消化試合となったオーストリアとのワールドカップ予選以来となる。
 このように幅広い世代からのタレントをそろえ、ブラジルに向けた航海が始まるのである。(続く)

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