第1457回 厳しい結果となったチャンピオンズリーグ第2節(2) ハンドボールスキャンダルに揺れるモンペリエ、値千金の勝ち点1
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■モンペリエの第2節はアウエーのシャルケ04戦
チャンピオンズリーグの第2節でバレンシア(スペイン)に敗れたリールは連敗、ポルト(ポルトガル)に敗れたパリサンジェルマンは1勝1敗となった。
昨季リーグチャンピオンとなったモンペリエも第1戦でアーセナル(イングランド)に敗れているが、相手が第1シードであることを考慮すれば、敗戦はやむを得ず、アーセナル以外の相手に勝ち点を重ねて決勝トーナメントを目指したいところである。モンペリエの第2節の相手はドイツのシャルケ04、第2シードとのアウエーゲームである。シャルケ04は初戦を敵地でギリシャのオリンピアコスを下しており、ホームでモンペリエ相手に勝ち点3を狙ってくるであろう。
■リーグチャンピオンのハンドボールが起こしたスキャンダル
前回の本連載でも紹介したとおり、昨季リーグ得点王のオリビエ・ジルーを移籍で失い、その穴を埋めることができず、リーグ戦では中位以下である。そしてモンペリエには新たな衝撃が走った。
サッカーの世界では日本の鮫島彩がプレーし、昨季はリーグで初優勝したモンペリエであるが、フランスのスポーツファンにとってモンペリエと言えばサッカーではなくハンドボールのイメージが強い。モンペリエのハンドボールチームであるモンペリエ・アグロメラション・ハンドボールは1982年設立、1部昇格は1992年であるが、1995年にリーグ初優勝を飾って以来、実に14回優勝し、フランスのハンドボールを代表するチームである。2011-12シーズンもシーズン最終節を待たずして優勝をしている。モンペリエの優勝が決まったのは5月3日、この日モンペリエは試合がなかったが、追うシャンベリーがナントに敗れて14回目のリーグ優勝が決まった。ところが5月12日のセッソン戦、モンペリエは主力6人が負傷のため欠場、それまでリーグ戦で1敗しかしていないチームは降格のかかっていた9位のチームに28-31で敗れる。優勝が決まっていたとはいえ、不可解な選手の負傷、試合結果に対して疑問を持つのが自然である。
9月中旬以降、クラブの首脳陣、選手が捜査を受けるようになり、捜査当局の調査の結果、モンペリエの選手もこの賭けに参加し、利益を得ていたことが明らかになった。9月の末には賭けに参加していた選手が次々に逮捕された。
競技は違うとはいえ、モンペリエを代表するスポーツクラブのスキャンダルにモンペリエのサッカー選手が動揺しないわけがない。
■先制点をあげたが逆転されたモンペリエ
このような状況の中でモンペリエのイレブンはゲルゼンキルヘン入りした。急勾配のアレーナ・アウフシャルケでのアウエーゲーム。モンペリエは個人技で勝負、シャルケ04はスペースに縦パスを狙う。モンペリエは攻撃的な布陣を敷き、先制点はモンペリエがあげる。パスを左右に展開し、レミ・カベラ、スレイマン・カマラとつなぎ最後はカリム・アイトファナが鮮やかにゴール。ホームのシャルケ04は若いユリアン・ドレクスラーが大活躍、26分に同点に追いつく。
前半は拮抗した内容であったが、後半に入るとモンペリエは攻撃の機会を摘み取られる。53分にはガリ・ボカリがペナルティエリア内でのファウルでレッドカード。PKは仕方ないとしても、この日が初めてのチャンピオンズリーグの主審を務めるロシア人はこの判定以外にもイエローカードを多発し、厳しい判定である。シャルケ04はクラース・ヤン・フンテラールが決めて逆転する。
■ロスタイムの後半初めてのシュートが同点ゴール
後半はモンペリエはボールを保持しても前方に運ぶことができず、攻撃の機会は全くなくなる。シャルケ04は何度か得点機を逃したが、後半開始からはモンペリエのシュートをゼロに抑え、勝利は確実と思われたが、ロスタイム、後半初めて敵陣ペナルティアエリア近くまでボールを運んだモンペリエはカマラがミドルシュート、きれいなアーチを描いたシュートはシャルケ04のGKラルス・ウネルシュタルの左手をかすめ、ゴールネットを揺らす。
ハンドボールのスキャンダルに揺れるモンペリエは敵地で貴重な勝ち点1を記録したのである。(この項、終わり)