第1459回 ヨーロッパリーグ第2節(2) フランスリーグでもヨーロッパリーグでも首位のマルセイユ
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■国内リーグで開幕6連勝のマルセイユ
フランスからヨーロッパリーグに出場している3チームはいずれも国内リーグで好調であるが、その中でも最も良い成績を残しているのがマルセイユである。マルセイユは開幕戦で1部に復帰した名門スタッド・ド・ランスをアウエーで1-0と下し、第2節はホームでソショーを一蹴、さらに第3節は昨季のリーグチャンピオンのモンペリエをアウエーで下す。第4節は今季初失点したもののレンヌを3-1と退け、第5節はナンシーをアウエーで1-0と下す。第6節まで6戦全勝、得点9、失点1という安定した成績である。
本連載でも紹介したとおり、ヨーロッパリーグは予備戦の3回戦、プレーオフと戦い、いずれも1勝1分で勝ち抜いている。ヨーロッパリーグ第1節は本連載第1455回で紹介したとおり、フェネルバフチェ(トルコ)とドロー、すなわち今季のマルセイユは公式戦で11試合負けなしで9月の末を迎えた。このマルセイユが今季の公式戦で初黒星を喫したのが9月30日のアウエーでのバランシエンヌ戦である。
■10月初めにタフな日程を迎え、バランシエンヌに大敗したマルセイユ
9月末から10月にかけてのマルセイユのスケジュールを見ると、9月30日にバランシエンヌ戦、翌週の木曜日の10月4日にはヨーロッパリーグのAELリマソール(キプロス)戦がホームで行われ、3日後の10月7日には宿敵パリサンジェルマンをホームに迎える。すなわち、週の半ばに外国のチームと戦い、その直後に強敵と対戦するというタフなスケジュールである。そしてこのパリサンジェルマン戦を乗り切ると、代表チームのインターナショナルマッチデー(フランスは日本、スペインと対戦)が控えているため、パリサンジェルマン戦の次の試合は21日のトロワ戦まで2週間の間隔があく。
マルセイユのイレブンにとってはどうしてもパリサンジェルマン戦に神経が集中し、その次にヨーロッパリーグのAELリマソールとの戦いに目が行き、バランシエンヌ戦には精神を集中することができなかったのであろう。バランシエンヌ-マルセイユ戦は本連載でも何回も紹介しているが、1992-93シーズンの終盤に行われたこの試合で八百長事件が起こり、この事件で両チームとも長い低迷に入った因縁のカードである。バランシエンヌのエノー競技場は史上最多の観客数となる22,584人の観衆が詰めかける。この大観衆の期待に応え、バランシエンヌは16分に先制した後ゴールを重ね、前半だけで3点、後半にも4点目、片やマルセイユは後半のロスタイムにアンドレ・アユーが1点返しただけで1-4と大敗を喫した。
■キプロス王者のAELリマソールに先制を許したマルセイユ
この敗戦が尾を引くかと思われたが、本拠地に戻ってきたマルセイユは本来の姿に戻った。ベロドロームは国内リーグ戦とは異なり、閑散としたスタジアムで、観客は1万2000人。キプロスのクラブというと昨季のチャンピオンズリーグの準々決勝でリヨンを下したアポエルを思い出されるだろうが、AELリマソールはそのアポエルをおさえて昨季のキプロスリーグを制している。22分にCKからAELリマソールが先制する。閑散としたスタジアムであるが、キプロスの1000人のファンは歓喜する。 ゲームを押し気味に進めながらなかなかゴールの生まれなかったマルセイユであるが、前半終了間際の43分にゴール前の混戦からロッド・ファンニが同点ゴールを決める。
■後半はゴールラッシュで首位に浮上
後半に入ってマルセイユは本領を発揮する。激しい当たりの試合で負傷者の多い展開となったが、61分にマチュー・バルブエナのCKからルーカス・メンドスが逆転ゴール。76分にはそれまで惜しいシュートが続いたロイック・レミがついにゴールを決めて、2点差とする。そして圧巻は試合終盤であった。ゴール前でレミがアラン・ジニャックにつなぎ、最後は見事なボレーシュート、90分に4点目が生まれ、その直後にロスタイム5分と表示される。このロスタイムの間にレミが得点をあげ、終わってみれば5-1とマルセイユが大勝、バランシエンヌ戦のショックを払拭し、ヨーロッパリーグでは首位浮上、そして心は3日後のパリサンジェルマンとの宿敵対決にあるのである。(この項、終わり)