第1461回 日本と6度目の対戦(2) 貴重な親善試合の日本戦でチャンスを得る選手たち
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■スペインとの大一番の前に立ちはだかる日本戦
10月16日のスペインとのアウエーでのワールドカップ予選、それに先立つ12日の日本との親善試合、この2試合をどのように乗り切るか、ディディエ・デシャン監督の手腕が問われる連戦となった。まず最優先とすべきはスペイン戦であることは間違いない。そしてこの連戦が中3日で行われることを考えるならば、23人のメンバーのうち、日本戦とスペイン戦の両方に出場する選手を誰にするのか、スペイン戦に注力する選手を誰にするのか、ということは監督にとって最大の課題であろう。
日本は決してスパーリングパートナーという立場ではなく、アジアチャンピオンであり、来年のコンフェデレーションズカップにはスペインとともに出場する。日本にとってはフランス、ブラジルという世界のトップレベルとの対戦はアジアで無敵となっている状況を考えれば貴重な経験である。
■純粋な親善試合での対戦の少ない日本戦
フランスと日本との対戦はこれが6戦目となる。これまでの両国の対戦の歴史には2つの特徴がある。まず、1990年代半ばから2000年代初めになるまでにその対戦が集中し、1994年から2003年前の10年間に5回も対戦しているということである。2003年にドイツで行われたコンフェデレーションズカップを最後に両チームの対戦がなくなっている。次にこれまで5回の対戦のうち、純粋なシングルの親善試合は2001年の1試合だけで、何らかのトーナメントでの対戦が4回を占めることである。具体的には2001年と2003年のコンフェデレーションズカップ、1994年のキリンカップ、2000年のハッサン2世杯である。つまりこれらのトーナメントの中では勝負を優先することになり、両チームの力を正確には結果が反映していない。唯一の親善試合での対戦が2001年3月でのスタッド・ド・フランスでの試合であり、この時はフランスが5-0と大勝している。
■親善試合の相手は格上の強豪国が中心
フランスにとって重要なことは、この日本戦が親善試合であるということである。親善試合の目的はもちろん両国の政治的、経済的、文化的交流をベースに行われることが多いが、純粋に代表チームの強化には有益である。例えば、公式戦といわれるワールドカップや欧州選手権の本予選では選手交代枠が3となっているが、親善試合では両国の決定にゆだねられ、このフランス-日本戦のように6人まで交代枠が認められている。
デシャン新監督就任後のフランスの親善試合の日程を見ると、8月にルアーブルでウルグアイ戦、10月にこの日本戦、11月にはイタリアとアウエーで対戦、年が明けて来年2月にはドイツとスタッド・ド・フランスで対戦する。親善試合は力の拮抗した相手と対戦することが多いが、この4か国はいずれも強国ばかりである。しかし、その中で力がやや落ちるのは日本の皆様には申し訳ないが、唯一、ワールドカップの優勝経験のない日本である。
■日本戦は代表歴の少ない選手に与えられたチャンス
したがって、ある程度主導権を持って進めることのできる試合の中で選手を試す唯一のチャンスであるといえるであろう。この日本戦で起用された代表歴の少ない選手は3日後のスペイン戦ではなく、むしろそれ以降の試合でレギュラーへ定着していくことが考えられるであろう。
今回の23人のメンバーを見渡すと、代表歴がまだ少ない選手が多い。23人のメンバー中、代表出場試合数が一桁の選手は10人もいる。さらにそれらの選手をポジション別にみていくとDFではクリストフ・ジャレ(2試合)、ローラン・コシエルニー(4試合)、ママドゥ・サコ(8試合)、マプー・ヤンガ・エムビワ(3試合)、MFではエチエンヌ・カプー(2試合)、マキシム・ゴナロン(3試合)、ムーサ・シソッコ(3試合)、ブレーズ・マツイディ(6試合)、クレマン・シャントム(0試合)、FWはバフェタンビ・ゴミス(8試合)となり、3人のストッパーのいるDF陣、MF陣の選手にチャンスが与えられるであろう。(続く)