第1469回 諸聖人の休暇の風物詩、BNPパリバ・マスターズ(1) 8人のフランス勢全員が2回戦進出
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■諸聖人の休暇に行われるスポーツイベント、BNPパリバ・マスターズ
10月31日はハロウィン、日本の皆様もサロンの会合の後はルンで夜遅くまでパーティーを楽しまれたであろう。しかしこのハロウィン、実はクリスマスイブ同様、実は前夜祭である。ハロウィンの翌日は11月1日、この日は諸聖人の日(万聖節)という価値リックの祝日である。フランスではこの諸聖人の日に、先祖の墓参を行う家庭も少なくない。すなわち日本でいうとお盆やお彼岸に似た形の休暇となる。したがって、学校や企業も11月1日だけではなく11月1日を含む週をイースターのように休暇にしてしまうところも少なくない。
フランス人にとっては11月1日を含む週は春のイースターと並ぶプチバカンスになることが多い。この諸聖人の休暇に行われるスポーツイベントがテニスのBNPパリバ・マスターズである。かつてはパリオープンと言われていたが、現在はローラン・ルノー率いるBNPパリバがスポンサーとなり、四大大会に次ぐATPマスターズ1000にランクされる9大会のうちの1つであり、ATPマスターズ1000の9大会の中では年間最後に行われる大会である。そして会場はセーヌ河岸にあるパリ・ベルシー総合体育館、したがってパリジャンはこの大会を「ベルシー」と呼ぶことが多い。ベルシー総合体育館ではテニス以外に多くのスポーツイベントが行われるが「ベルシー」と言えばこのテニスのBNPパリバ・マスターズを指す。日本の皆様にとってはマスターズというと10月に行われた上海マスターズを連想される方が多いが、3年前に始まった上海マスターズが3年前に始まったのに対し、このBNPパリバ・マスターズは1986年に始まった伝統のある大会であり、地元では定着している大会である。
■ATPランキング上位選手が勢ぞろいするマスターズ1000
ATPマスターズ1000はランキング上位選手は出場義務があり、ATPランキング上位の選手が勢ぞろいした。ランキング1位のロジャー・フェデラー(スイス)は直前に欠場し、ペナルティが課せられ、300週以上保ってきた世界ランキング1位の座から陥落する。しかしシード16人は1位のフェデラーと4位のラファエル・ナダル(スペイン)以外が勢ぞろいした。
■フランスから8人が本戦に出場、不戦勝を含め全員が1回戦を突破
もちろんこの中には日本の錦織圭、そしてフランス勢ではジョー・ウィルフリード・ツォンガ、リシャール・ガスケも名を連ねている。さらに地元フランス勢はシードこそ取れなかったものの世界ランキング20位のジル・シモン、34位のジェレミー・シェルディ、37位のジュリアン・ベヌトー、ワイルドカードとしてミカエル・ロドラ、ブノワ・ペール、ポール・アンリ・マチューと8人が本戦にエントリーした。
連日ベルシー総合体育館には諸聖人の休暇ということもあってたくさんの観衆が詰めかけた。この大声援を受けてフランス勢は健闘する。主催者推薦のワイルドカード3人組はそろって1回戦を突破する。ノーシードのシャルディ、ベヌトー、シモンも1回戦を突破する。またシード組のガスケ、ツォンガも1回戦は不戦勝で2回戦からの参戦となる。2回戦を戦う32人のうち4分の1にあたる8人がフランス勢ということで序盤からこの大会は大きく盛り上がった。
■錦織圭、2セット連取で、フランス勢のブノワ・ペールを下す
2回戦で日本の皆様が最も注目したのが10月30日に行われた錦織-ペール戦であろう。東京の楽天ジャパンオープンで優勝した錦織はその次のATPマスターズ1000の上海マスターズで負傷、バーゼル・マスターズを欠場している。今季最後のビッグトーナメントで躍進を世界のファンに見せたいところである。錦織は1回戦は不戦勝、ワイルドカードのペールは世界ランキング44位との対戦である。錦織は第1セットでセットポイントを握られたもののこれをしのぎ、タイブレイクを制して第1セットを奪う。こうなると後半に強い錦織の真骨頂が発揮され、第2セットは6-2と難なく奪い、錦織が3回戦に進出する。この大会初めてフランス人選手がフランス人以外の選手に敗れ、パリジャンを悔しがらせたのである。(続く)