第1475回 本年最終戦、イタリアとの親善試合(2) カリム・ベンゼマが外れ、ヨアン・グルクフが復帰
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■マニュエル・アモロスが代表デビューした30年前のイタリアとの親善試合
今年の最終戦となるイタリアとの親善試合、ワールドカップ予選での順調な足取りを考えれば、思い切った選手の抜擢も考えていいところである。前回の本連載で紹介した1982年2月23日のイタリア戦はダニエル・ブラボーのデビュー戦であったばかりではなく、先発したマニュエル・アモロスにとっても代表デビューとなる記念すべき一戦であった。アモロスはその後代表の中心選手として活躍し、1982年ワールドカップ、1984年欧州選手権、1986年ワールドカップ、1992年欧州選手権と代表で活躍し、通算82試合出場、そして主将としてチームを統率した。
■10月と2人しか変更しなかったメンバー
11月14日に行われるイタリアとの親善試合に向けてディディエ・デシャン監督は23人のメンバーを発表した。GKはウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダ、ミカエル・ランドローの3人、DFはマチュー・ドビュッシー、ガエル・クリシー、パトリス・エブラ、クリストフ・ジャレ、ローラン・コシエルニー、ママドゥ・サコ、アディル・ラミ、マプー・ヤンガ・エムビワの8人である。MFはヨアン・カバイエ、マキシム・ゴナロン、ヨアン・グルクフ、ブレーズ・マツイディ、マチュー・バルブエナ、エチエンヌ・カプー、ムーサ・シソッコの7人、FWはディミトリ・ペイエ、ジェレミー・メネス、オリビエ・ジルー、バフェタンビ・ゴミス、フランク・リベリーの5人である。
10月の日本戦、スペイン戦のメンバーと比較するとGK陣、DF陣は全く変わらず、MFでラッサナ・ディアラの代わりにグルクフが入り、FWではベンゼマが外れてペイエが入るにとどまる小規模なメンバー変更であった。
■負傷も抱え、メンバーから外れたカリム・ベンゼマ
小規模であるとはいえ、ベンゼマが外れ、グルクフが入ったことは大きな変化であると言えよう。ベンゼマに関しては負傷していることもあるが、メンバーから外れた理由はそれだけではない。デシャン体制になってからは攻撃の中心として重用されてきたが、所属チームのレアル・マドリッド(スペイン)では試合出場の機会が少なく、今季はまだ5試合にしか出場しておらず、得点も3にとどまっている。さらに代表チームでも期待されながら、新体制になってからはいまだに得点をあげることができない。アシストの数は多いものの欧州選手権直前のエストニア戦以来、得点が生まれていない。日本戦では再三得点機を得ながらゴールネットを揺らすことができなかったが、これは日本戦に限ったことではなく欧州選手権以来続いていることであり、本人にとっても不本意であろう。
■本調子でないヨアン・グルクフが半年ぶりに復帰
一方、グルクフの復帰は半年ぶりのことである。本連載第1406回で紹介したとおり、グルクフは今年の欧州選手権の直前の合宿まで参加したものの、5月29日に最終メンバーから外れてしまっている。
グルクフの復帰には、いろいろな要因があり、まずは今回の欧州選手権で規律を乱したサミール・ナスリが所定の出場停止処分の期間が終わってもデシャン監督が起用しないことが1つの理由であろう。さらに21歳以下の代表チームでも事件が起こっている。9月に21歳以下の欧州選手権予選に向けて合宿をしていた際に5人の選手が合宿を抜け出してパリのナイトクラブに出かけていたのである。この規律違反を重く見たフランス協会はそれぞれの選手に出場停止処分を課した。その中で最も重い処分となったのがすでにフル代表のメンバーにもなっているヤン・エムビラである。エムビラは22歳ですでに代表の試合に22試合に出場しているMFであるが、年長者であり、チームの規範となるべき立場であることから他の選手よりも重い2014年6月30日までの出場停止を言い渡された。
このようにMF陣に規律違反によって失われた人材がいるため、グルクフの復帰となったわけだが、グルクフ自身も決して好調ではない。所属チームのリヨンは好調であるが、今季になって出場はリーグ戦3試合、ヨーロッパリーグ1試合、選手層の厚いリヨンとは言えさびしい数字であるが、今回の代表復帰で再び輝きを取り戻せるであろうか。(続く)