第1518回 ヨーロッパリーグ決勝トーナメント1回戦(1) フランスのクラブも選手も栄光から遠いタイトル

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■チャンピオンズリーグと微妙に異なるヨーロッパリーグの決勝トーナメント

 年が変わり、フランスカップ、アフリカ選手権、ドイツとの親善試合を取り上げてきたが、いよいよ2月の中旬からはチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの決勝トーナメントが始まる。
 昨年末の本連載で紹介したとおり、フランスから決勝トーナメントに残ったのはチャンピオンズリーグのパリサンジェルマン、ヨーロッパリーグのリヨンとボルドーである。
 決勝トーナメントの出場チーム数はチャンピオンズリーグが16に対し、ヨーロッパリーグは32である。したがって、優勝するためにチャンピオンズリーグは4つの相手を倒すのに対し、ヨーロッパリーグの場合は5つの相手を倒さなくてはならない。決勝トーナメント1回戦はホームアンドアウエーの2回戦制で行われるが、チャンピオンズリーグの場合、第1戦と第2戦の間が3週間離れているのに対し、ヨーロッパリーグは1週間しか間隔があいておらず、2月14日と2月21日に行われる。また、決勝トーナメントの組み合わせについても、チャンピオンズリーグはその都度抽選が行われるが、ヨーロッパリーグの場合は3月7日と3月14日に行われる2回戦までまとめて抽選が行われている。

■フランスのクラブが優勝したことがないヨーロッパリーグ

 国内リーグでチャンピオンズリーグ出場チームに次ぐ成績のチームがヨーロッパリーグに出場すること、チャンピオンズリーグのグループリーグで3位になったチームがヨーロッパリーグに転戦してくること、このような観点からヨーロッパリーグはチャンピオンズリーグよりも下のタイトルと思われているが、フランス勢は前身のUEFAカップで優勝したことがない。かつて欧州三大カップと言われた中で、チャンピオンズリーグは1993年にマルセイユが優勝、カップウィナーズカップでは1996年にパリサンジェルマンが優勝しているが、UEFAカップ、ヨーロッパリーグでのフランス勢の優勝はない。

■選手レベルでも優勝から遠ざかっているフランス

 また、チャンピオンズリーグでは近年は欧州を代表するビッグクラブが優勝しているが、必ずと言っていいほどフランス人選手が所属し、ビッグイヤーを持ち上げている。記憶に新しいところでは2012年に優勝したチェルシー(イングランド)にはフローラン・マルーダがおり、2011年に優勝したバルセロナ(スペイン)にはエリック・アビダルがいた。2010年優勝チームのインテル・ミラノ(イタリア)にはフランス人選手がいなかったが、2009年優勝のバルセロナにはティエリー・アンリ、2008年優勝のマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)にはパトリス・エブラとミカエル・シルベストルがいた。
 しかし、最近のヨーロッパリーグではフランス人選手が所属するチームが優勝したことがない。フランス人選手でこのタイトルを獲得したのは2006年にミドルスブラ(イングランド)を下したセビリア(スペイン)のストッパーだったジュリアン・エスクデが最後である。そしてフランス人選手で決勝戦に出場した最後の選手は2008年の決勝でゼニト・サンクトペテルブルク(ロシア)に敗れたグラスゴー・レンジャーズ(スコットランド)に所属していたジャン・クロード・ダルシュビルである。すなわち、フランス人選手はヨーロッパリーグと改称してからは決勝戦に出場したことすらないのである。

■35シーズンぶりにベスト32に残ることができなかった昨季のフランス勢

 そして昨季のヨーロッパリーグはフランスサッカーにとっては歴史的な屈辱のシーズンであった。本連載でも紹介したが、ソショー、レンヌ、パリサンジェルマンの3チームが出場、ソショーはプレーオフでウクライナのメタリスト・ハルキウに敗れグループリーグに参加できず、レンヌはグループリーグで最下位、パリサンジェルマンもグループリーグで3位となり、3チームとも決勝トーナメントに進出できなかった。ヨーロッパリーグ、前身のUEFAカップを通じてベスト32にフランス勢が残ることができなかったのは、1976-77シーズン以来実に35シーズンぶりのことである。
 このようにヨーロッパリーグはフランスのクラブにとって優勝の経験がなく、フランス人選手もこのところ栄冠から遠ざかっているのである。(続く)

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