第1591回 辛うじて敗戦を免れたベルギー戦(2) 好成績を残すマルク・ビルモッツ監督
一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ベテラン勢に立て直しを託すフランス代表
昨年夏のディディエ・デシャン監督就任以来、成績が振るわないフランス代表、ライバルベルギーとの1戦で体勢を立て直したいところである。前回の本連載で紹介したようにメンバーもトルコのU-20ワールドカップの優勝メンバーからジョフレイ・コンドグビアを招集し、ベテラン勢では肝臓移植手術でブランクのあったエリック・アビダル、昨年の欧州選手権でジャーナリストに暴言を吐いたサミール・ナスリを呼び戻した。これらのベテランをカムバックさせ、まさに背水の陣となった。
■驚異の17歳、ザカリア・バカリを招集したベルギー
一方のベルギー、最近は若手のタレントが次々と登場している。リールからイングランドのチェルシーに移籍したエデン・アザールはまだ22歳、すでにプレミアリーグのビッグネームとなっているが、アザールだけではない。1990年代生まれ、すなわち23歳以下の選手が8人もメンバーに選ばれている。
この中でもひときわ目を引くのが17歳のザカリア・バカリである。オランダのPSVアイントホーヘンに所属するバカリはベルギー生まれであるが、モロッコにルーツを持ち、モロッコ、ベルギー、オランダの代表選手になる資格を持っている。ベルギーのアンダーエイジの代表に選出されているが、プロの試合にデビューしたのは7月末のチャンピオンズリーグの予備戦3回戦のワレヘム(ベルギー)戦である。プロデビューして10日も経たない段階でフル代表に選出されたのである。
■昨年就任し、好調を維持するマルク・ビルモッツ監督
ところでベルギーの戦績であるが、2002年の日韓ワールドカップを最後にワールドカップ、欧州選手権の本大会に5大会連続して姿を見せていない。しかし、世界ランキングはフランスの23位に対し、10位と堂々のトップ10入りしている。ベルギーはフランスと対照的で昨年夏以降の戦績は11戦して9勝1分1敗、今年になってからは5連勝している。
昨年来快進撃を続けるこの赤い悪魔の指揮を執るのがマルク・ビルモッツである。2002年のワールドカップの際のベルギーの中心的選手であり、日本戦ではゴールをあげたことから日本のファンの皆さんであるならば印象深い選手であろう。ビルモッツは第2戦のチュニジア戦、第3戦のロシア戦でもゴールをあげ、グループリーグ全試合で得点をあげる。日本とともに決勝トーナメントに進出したが、決勝トーナメント1回戦の相手はブラジルとなる。神戸での試合でもビルモッツのシュートがゴールネットを揺らしたが、審判はファウルの判定でベルギーは0-2とブラジルに敗れる。この試合を最後にビルモッツはベルギー代表のユニフォームを脱ぎ、それと同時にベルギー代表は世界のひのき舞台から遠ざかってしまった。
ビルモッツはその翌年には選手も引退し、一時期は政治家になったこともあったが、2009年にベルギー代表のアシスタントコーチに就任、そして昨年夏に監督に就任、ビルモッツの監督就任とともに、赤い悪魔は輝きを取り戻した。ビルモッツ就任時のベルギーの世界ランキングは53位、それをわずか1年で10位にまで押し上げたのである。
■現役時代に2度対戦したことのある両監督
ビルモッツ監督とデシャン監督は年齢が近く、2人が対戦したことがある。最初の対戦は今から21年前の1992年3月25日のパルク・デ・プランスでの親善試合。デシャンは前半から出場、2-2のタイスコアの後半はじめからビルモッツは交代出場、出場した直後にゴールを決めてベルギーが3-2とリードする。壮絶な点の奪い合いの最後はジャン・ピエール・パパンの見事なボレーシュートでフランスは試合終了間際に追いつき3-3のドローとなる。そして2度目の対戦は1998年5月にワールドカップ直前にモロッコで行われたハッサン2世杯でのことである。この試合はフランスがジネディーヌ・ジダンのゴールにより1-0で勝利している。両監督の選手時代の対戦成績はデシャン監督が1勝1分とリードしているが、監督としての初対決はどちらに軍配が上がるであろうか。(続く)