第1600回 ワールドカップ予選でグルジア、ベラルーシと対戦(4) 深刻な得点欠乏症
おかげさまで第1600回の連載を迎えることになりました。2001年の連載開始以来、読者の皆様に支えられ、連載回数を重ねることができました。読者の皆様に改めて感謝するとともに、引き続きのご愛読よろしくお願いいたします。
■グループ2位が濃厚なフランス
これまで3戦して3勝してきたグルジア相手にまさかのスコアレスドロー、来年のワールドカップを目指すグループIはスペインもフランスも6試合消化し、スペインが勝ち点14、フランスが勝ち点11とちょうど1試合分の差がついた。
スペインの残り2試合は10月にホームで行われる。スペインがこの2試合で勝ち点3に届かない、すなわち1分1敗以下の成績でなければフランスの首位突破は残されていない。9月4日の試合を終了した時点でグループIは全5チームが6試合ずつ消化し、3位のフィンランドは勝ち点6、したがってフランスがこのグループで2位になる可能性が極めて高い。
■5試合連続、479分間無得点のフランス
首位突破の可能性はともかく、フランスにとって一番の課題は深刻な得点欠乏症である。今年3月のスペイン戦から始まり、5試合連続無得点、スペイン戦の前のグルジア戦から通算して479分間となり、これらはいずれも第二次世界大戦後のフランス代表にとっては不名誉な新記録更新となってしまった。また、昨年夏のディディエ・デシャン監督就任以来の1試合当たりの平均得点は0.85、これもフランス代表が監督を置くようになった1964年以降最低の数字となった。
この得点欠乏症の元凶と目されるのが1トップを任されてきたカリム・ベンゼマ、ついに最後にゴールをあげて以来1217分無得点である。この1217分の間、ベンゼマ自身は58本のシュートを放っている。すなわち、ベンゼマの放ったシュートは58本連続してゴールネットを揺らすことなく、ファンのため息を誘ったわけである。
デシャン監督は基本的に4-3-3システムあるいは4-2-3-1システムを採用し、トップをベンゼマ1人に託してきたが、このグルジア戦では4-4-2システムを採択し、ベンゼマとオリビエ・ジルーの2人をトップに配置したが無得点に終わっている。
デシャン監督が2トップを配置したのは3月のグルジアとのホームでの試合、この試合でもベンゼマとジルーが2トップを組み、ジルーが得点をあげている。この次の試合のスペイン戦以降は1トップで無得点ということもあり2トップに戻したわけであるが、功を奏さなかった。
■ゲームメーカー不在、左サイドからのクロスも得点に結びつかず
この得点欠乏症はトップのベンゼマ、ジルーだけの問題ではない。フランスのサッカーを象徴するいわゆる「10番」、ゲームメーカーが不在であることも見逃せない。フランク・リベリーは左サイドに位置し、マルセイユでゲームメーカーを務めているマチュー・バルブエナは代表チームではそのポストを与えられてはいない。
また、左サイドはリベリーが高い位置にいるが、その後方の左サイドバックの攻撃も気になる。デシャン監督就任以来、左サイドDFはパトリス・エブラ、ガエル・クリシー、ブノワ・トレムリナス、ジェレミー・マチューが務めてきたが、この4人から上がったクロスが1回も得点に結びついていない。4人あわせて40本のクロスが記録されているが、ゴールに全く結びついていないのである。
■フランス代表では不調なカリム・ベンゼマとオリビエ・ジルー
このように得点欠乏症の原因はトップに配置しているFWの選手だけの課題ではないが、やはり一番責任が重いのはベンゼマを中心とするFWの選手である。
ベンゼマは所属するレアル・マドリッドでは2012-13シーズンは30試合出場で10得点、チームのエースにふさわしい働きで、年収はフランス人スポーツ選手で最高の600万ユーロ。しかしながらフランス代表では無得点が続く。
ジルーは2011-12シーズンのフランスリーグ得点王であり、イングランドのアーセナルに移籍し、2012-13シーズンは34試合で11得点とまずまずの成績を残しているが、フランス代表ではわずか2得点である。アーセナルでは1試合当たり3本以上のシュートを放っているが、フランス代表では半分以下の1.3本となってしまう。
この2人の所属チームと代表チームでの数字の違いを見るとフランス代表という特殊な心理的圧力がかかっていると思わざるを得ないのである。(続く)