第144回 欧州チャンピオンズリーグ、フランス勢全滅(5) 最後の望みのランスも届かず

■上り調子のランスに期待

 11月12日にオセールがPSVアイントフォーフェンをかわして3位になりUEFAカップ3回戦出場を果たし、リヨンがアヤックスを抜くことができず3位にとどまり2次リーグ進出を逃した。その翌日の11月13日にはグループEからグループHまでの最終節が行われた。グループGの最終節は、ミュンヘンのバイエルン・ミュンヘン-ランス戦、ミラノのACミラン-デポルティーボ・ラコルーニャという2試合である。最終節を迎える段階の順位は1位ACミラン(勝ち点12)、2位デポルティーボ・ラコルーニャ(勝ち点9)、3位ランス(勝ち点7)、最下位バイエルン・ミュンヘン(勝ち点1)である。ランスの第5節までの戦いについては本連載の第141回で紹介しているが、第3節までの前半戦は1分2敗と精彩を欠き、2次リーグ進出は不可能だと思われていた。ところが第4節でデポルティーボ・ラコルーニャをホームに迎えて初勝利、第5節では4連勝のACミランに勝ち、上昇気流に乗っている。第5節で足踏みし、前日の最終節でも引き分けてしまい2次リーグ進出を逃したリヨンとは対照的なこと、フランス国内では地上波での中継もあることから最後のフランス勢であるランスへの期待は高まった。

■最終節の相手は最下位が確定しているバイエルン・ミュンヘン

 最終節の結果に関わらず、ACミランの1位とバイエルン・ミュンヘンの最下位は確定している。首位を争うと見られた両チームの成績は対照的なものになった。そして2位争いをするチームはいずれもアウエーでの最終戦を迎えた。
 1位と4位の順位は確定しており、2位争いに注目が集まった。2次リーグ進出を狙うチームがすでに順位が決定しているチームのホームに乗り込むことになった。ランスとデポルティーボ・ラコルーニャの勝ち点の差は2。ランスは勝つことが条件であり、デポルティーボ・ラコルーニャが負けた場合は勝ち点で上回り2位となるが、デポルティーボ・ラコルーニャが引き分けた場合、勝ち点で並ぶ。該当チームの直接対決が全くイーブンであったため、1次リーグ全体の得失点差で順位を決定する。最終節を迎える段階でランスの得失点差は0であり、-2のデポルティーボ・ラコルーニャを上回っている。

■外国人選手が活躍する「オールドイツ」バイエルン・ミュンヘン

 勝利以外にファンの期待に応えることができないランスはミュンヘンのオリンピックスタジアムに「血と黄金」と呼ばれる黄色と赤のユニフォームで乗り込む。ワールドカップ準優勝のメンバーを数多く抱えるとは言ってもここまで1分4敗と全くいいところがなく、6万9000人収容の大スタジアムにはわずか2万人の観衆。試合開始早々の6分、バイエルン・ミュンヘンが名門の意地を見せるかのごとく、クロアチア代表としてワールドカップでも活躍したニコ・コバチが先制点、そして19分にはボスニア・ヘルツェゴビナ代表のハサン・サリハミジッチが追加点をあげる。オールドイツと言われるバイエルン・ミュンヘンの外国人選手が活躍する。ところが20分にバイエルン・ミュンヘンのドイツ人DFのトルシュテン・フィンクがオウンゴール。1999年の欧州チャンピオンズリーグでローター・マテウスと交代出場した直後にマンチェスター・ユナイテッドに逆転劇を演じさせてしまったフィンクにとって、どうもこのチャンピオンズリーグは相性がよくないようである。バイエルン・ミュンヘンが2-1とリードしたままハーフタイムを迎える。そしてミラノでの試合はACミラノがヨン・ダール・トマソンの先制点でリード、ランスは後半の逆転を期する。

■ランスも2次リーグ進出ならず、フランス勢の歴史的な敗北

 そして後半、53分にはダグイ・バカリが同点弾。逆転への気勢もあがるが、その5分後ミラノでもアウエーチームが同点に追いつく。さらにミラノではデポルティーボ・ラコルーニャが逆転する。ミラノでの試合の途中経過が選手やスタッフに影響しないはずがない。87分にバイエルン・ミュンヘンに勝ち越し点を奪われ、ロスタイムにジョスリン・ブランシャールが同点に追いつくが、2次リーグ進出には役に立たないゴールと勝ち点1。閑散としたスタジアムでフランス勢の欧州チャンピオンズリーグは終わったのである。
 前身の欧州チャンピオンズカップ以来このタイトルでフランス勢がベスト16に入ることができなかったのは1986-87シーズン以来16年ぶりの屈辱である。また1次リーグは1999-2000シーズンに導入され、1999-2000シーズンはボルドー、マルセイユ、2000-01シーズンはリヨンとパリサンジェルマン、2001-02シーズンはナントが2次リーグに進出してきた。その一方、1999-2000シーズンはなかった1次リーグで敗退したチームが、2000-01シーズンはモナコ、2001-02シーズンはリヨンとオセール、そして今年は3チームと増えてきたこともフランス勢の地盤沈下を象徴している。(この項、終わり)

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