第1628回 ウクライナと運命のプレーオフ(3) ほとんどが国内のクラブに所属しているウクライナ代表

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■フランスのこれまでのプレーオフの戦績は2回敗退、1回勝ち抜き

 前回の本連載ではウクライナがこれまでワールドカップ、欧州選手権のプレーオフに4回出場し、8試合で4分4敗と1勝もできず、4回とも敗退している。
 一方のフランスであるが、これまでプレーオフを戦ったことは、ワールドカップでは1950年大会予選のユーゴスラビア戦、1962年大会予選のブルガリア戦、そして前回の2010年大会予選のアイルランド戦の3回である。しかし、1950年大会予選と1962年大会予選の場合はたまたま勝ち点で並び、当時はPK戦もなく、当時の大会規定では得失点差で優劣を決めるのではなくプレーオフで決着をつけることになっていたため、現在のように予選のグループで2位になったチームが次点としてプレーオフに出場したのは前回大会だけである。このプレーオフについては本連載第1027回から第1032回にかけて紹介したとおりであるが、フランスはアウエーの第1戦で1-0と勝利、ホームの第2戦は90分を終えたところで0-1、2試合とも同スコアになり、延長戦に入る。この延長戦での決勝点の際に、審判がティエリー・アンリのハンドを見逃すという誤審にフランスは救われ、1-1のドローになり、2試合通算得点で2-1としたフランスがプレーオフを勝ち抜き、ワールドカップに出場したのである。  次点がホームアンドアウエーで争う形式のプレーオフについていえば、フランスは1回出場し、1勝1分で勝ち抜いているが、苦い経験となっていることは事実である。

■国内3強の選手が中心のウクライナ代表

 フランスと対戦するウクライナのメンバーであるが、25人が発表された。25人中24人がウクライナのクラブに所属しており、残る1人もロシアのゼニト・サンクトペテルブルクの選手であり、全員が国内組であると言ってもいいであろう。国内組と言ってもチャンピオンズリーグに参戦しているシャフタール・ドネツクに所属している選手が5人、ヨーロッパリーグに参戦しているディナモ・キエフの選手が6人、ドニエプル・ドニエプロペトロフスクに所属している選手が6人おり、選手の3分の2は欧州でのタフな戦いを経験している。さらに注目すべきは、これらチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグに出場しているチームがウクライナ人選手ばかりで構成されていることではないことである。

■リーグ4連覇中のシャフタール・ドネツク

 現在ウクライナリーグを4連覇中のシャフタール・ドネツクも半数は外国人選手であり、多数の国外の代表選手を抱えている。ブラジル代表についてはベルナール、フェルナンドというビッグネームが今季加入し、クロアチア代表にはダリオ・スルナというベテランに加え、ブラジル出身のエドゥアルドも名を連ねる。ウクライナ代表としてこのチームを支えるのはGKのアンドリー・ピアトフ、DFのオレクサンドル・クチェル、ビアチェスラフ・シェフチェク、ヤロスラフ・ラオツキーなど守備陣が中心である。

■名門ディナモ・キエフと昨季躍進したドニエプル・ドニエプロペトロフスク

 ディナモ・キエフも多国籍軍である。ポルトガル代表のミゲル・ベローゾ、ナイジェリア代表のイディエ・ブラウン、クロアチア代表のドマゴイ・ビダ、オグニエン・ビコイエビッチなどが名を連ねている。ディナモ・キエフからウクライナ代表入りしているのはオレフ・フセフ、アンドリー・ヤルモレンコなど中盤より上の選手が多い。
 そしてドニエプル・ドニエプロペトロフスクはこれまでの国内リーグで4位が指定席であったが、昨季は2位に入った。この躍進の原動力となったのが、チェコ代表のオンドジェイ・マズフ、ブラジル代表のジュリアーノ、クロアチア代表のニコラ・カリニッチ、イバン・ストリニッチなどの若い他国の代表選手である。ウクライナ代表の選手は主将を務めるルスラン・ロタン、ロマン・ゾズリャなどである。
 このように見るとウクライナリーグの有力クラブには外国から若い代表選手が集まり、ウクライナ人の選手は国外へ行かずともある程度の高いレベルのサッカーをすることができると言えるであろう。もちろん、前回の本連載でしばしば登場したアンドリー・シェフチェンコのように国外で活躍する選手もいる。シェフチェンコが西欧からディナモ・キエフに最後は戻ってきた。唯一の国大のチームに所属しているアナトリー・ティモシュクも今季バイエルン・ミュンヘンから移籍し、ウクライナへ戻ってくる可能性もあるだろう。(続く)

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