第1630回 ウクライナと運命のプレーオフ(5) 第1戦勝利チームが圧倒的に有利なプレーオフの歴史
一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■グループ2位チームはプレーオフに回るようになった1998年ワールドカップ予選
ウクライナとホームアンドアウエー方式のプレーオフ、アウエーでの第1戦をフランスは0-2と落としてしまう。アウエーであるから敗戦も考えられなくはなかったが、2点差、無得点という結果はショッキングである。ワールドカップ予選、欧州選手権予選で欧州域内のグループの2位同士がプレーオフで最後の本大会出場権をかけて戦うようになったのは1998年のワールドカップ予選からのことである。それまでは予選で2位になったチームにも本大会出場権が与えられていた。例えば1996年欧州選手権予選でフランスはルーマニアに次ぐ2位であったが、本大会出場権を得ている。またワールドカップでは1982年大会はベルギーに次ぐ2位で本大会に出場している。なお、2008年の欧州選手権予選は例外的であり、グループの2位のチームまでが本大会に出場しており、フランスはイタリアに次ぐ2位突破である。
■第1戦をアウエーで落としながら本大会に出場した前回大会のスロベニア
予選2位同士が欧州域内で対戦するようになった1998年ワールドカップ以降、プレーオフの戦績を見るとアウエーでの第1戦を落としてホームの第2戦で逆転したケースは非常に少ない。ワールドカップ予選については前回大会までに15回のプレーオフが行われてきたが、第1戦をアウエーで落としたチームが第2戦で勝利したというケースは2回しかない。まず、2006年大会予選のスイス-トルコ戦だけである。この時は第1戦をホームで戦ったスイスが2-0と先勝し、第2戦はホームのトルコが4-2と勝利する。2試合通算で4-4となったがアウエーゴール2倍ルールでスイスが本大会出場を果たす。
そして2回目は前回の2010年大会予選のロシアとスロベニアとの争いである。第1戦はロシアのホームゲームでロシアが2-1と勝利するが、第2戦でスロベニアが1-0と勝利する。この時も2試合通算得点で両チームは並んだが、アウエーゴール2倍ルールで当時のFIFAランキングで49位とプレーオフ出場国中で最下位だったスロベニアが本大会に出場する。
■地元の第2戦で大勝した2004年欧州選手権予選のオランダ
一方、欧州選手権予選であるが、2008年大会を除き、2000年大会以降13回のプレーオフが行われてきた。このうち第1戦をホームチームが勝利し、第2戦もホームチームが勝利したケースは2004年大会のスコットランドとオランダの対戦だけである。第1戦はスコットランドがホームで1-0と勝利するが、第2戦でオランダは6-0と大勝する。
■圧倒的に優位に立つ第1戦の勝利チーム
そしてこのようなホームアンドアウエー形式のノックアウトシステムでは第2戦をホームで戦う方が有利と言われ、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントの1回戦はグループリーグでトップのチームがシード扱いということで第2戦をホームで戦うことになっている。
しかし、1998年ワールドカップ予選以降の欧州域内でのプレーオフの結果を見ると、第1戦をホームで勝利したチームはワールドカップ予選では7チームあり、そのうちの6チームは第2戦も勝利または引き分けで本大会に出場している。(唯一の例外が先述した2010年大会予選のロシアである)
また、欧州選手権予選についてもこの傾向は変わらず、第1戦をホームで勝利したケースは5回あるが、そのうち4回は第2戦も勝利または引き分けで本大会出場を果たしている。(唯一の例外は先述した2004年大会予選のスコットランドである)
このように1998年ワールドカップ予選以降、28回のプレーオフが行われたが、第1戦でホームチームが勝利すると、その勢いでアウエーの第2戦でも引き分け以上の成績を残し、本大会に出場している。また、第1戦をホームで落としたチームは8回あるが、そのいずれもが本大会出場に至っていない。
第2戦で逆転した2回のケース(2004年欧州選手権予選のオランダ、2010年ワールドカップ予選のスロベニア)は、いずれも第1試合の敗戦は1点差であった。
これまでのプレーオフで第1戦を2点差で落としたチームが第2戦で逆転したことはなく、フランスはこれまでに誰もなしえなかったことに挑むのである。(続く)