第1634回 ワールドカップ予選終了(1) 予選10試合を戦った選手たち
一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■5か月ぶりの代表戦で2ゴールをあげたママドゥ・サコー
ウクライナとのプレーオフで第1点での2点差の敗戦を、第2戦で3点差勝利と逆転し、5大会連続の本大会出場を決めたフランス、これまでにない得点差を逆転し、1994年大会以来の予選落ちを免れた。
第2戦でメンバーを大幅に変えたディディエ・デシャンの選手起用が見事に的中したと言えよう。特にママドゥ・サコーは代表では5か月ぶりの試合であり、経験の少ないラファエル・バランとストッパーを組むことに懸念の声は上がったが、見事にウクライナを完封するだけではなく、代表初ゴールとなる先制点、本大会出場を決めた決勝点と値千金の2ゴールをあげた。
■勝利を呼ぶストライカー、カリム・ベンゼマ
2点目を決めたカリム・ベンゼマも忘れてはならない。長い間、4-2-3-1システムを採用してきたフランスの1トップを任されてきたが、昨年6月のエストニア戦を最後に得点をすることがなく、実に1221分間無得点が続く。ベンゼマの不調がそのままチームの不調となり、今年の3月からはチーム全体でも無得点が続いた。そして秋になるとCFの座をオリビエ・ジルーに奪われる。ようやくベンゼマがゴールネットを揺らしたのは10月11日の豪州との親善試合のことであった。この豪州戦でフランスは6-0と大勝し、プレーオフ前最後の試合となる10月15日のフィンランドとのワールドカップ予選でも3-0と勝利したが、フィンランド戦、プレーオフ第1戦に先発したCFはジルーであった。
そのジルーがプレーオフ第1戦では不発に終わったことからデシャン監督はベンゼマを起用した。いわゆる破れかぶれの選手起用であったが、ベンゼマが期待に応えた。34分に2点目を決めてこのプレーオフを振り出しに戻したが、ベンゼマがゴールを決めた試合はこれで16試合連続で勝利している。エースのゴールが勝利を手繰り寄せた形になるが、この34分のゴールはオフサイドポジションからのシュート、そしてその4分前にもベンゼマのシュートがゴールインしたが、これはオフサイドの判定となった。前回のプレーオフに続き、微妙な判定がフランスを本大会に導いた。
さらに得点こそ決めていないが、この試合でフランスの優位性の原動力となったのはヨアン・カバイエであり、カバイエもまた第1戦には出場していない選手である。
■予選全試合に出場したウーゴ・ロリス、フランク・リベリー、マチュー・バルブエナ
そして今回の予選で全ての10試合(グループIで8試合、プレーオフで2試合)に出場したのはウーゴ・ロリス、フランク・リベリー、マチュー・バルブエナの3人であり、ゴールを守った主将、そして両翼の攻撃の選手という3人がチームを継続して支えてきた。なお、デシャン監督になってからワールドカップ予選10試合のほかに親善試合を8試合行ったが、バルブエナはこの8つの親善試合にも出場しており、デシャン監督就任以来、すべての試合に出場している。
■4年前のプレーオフにも出場したロリス、パトリス・エブラ、エリック・アビダル
また、4年前のアイルランドとのプレーオフにも出場していた選手はGKのロリス、DFのパトリス・エブラ、エリック・アビダルだけであり、ロリスとエブラは4年前も今回も2試合とも出場している。ベンゼマは4年前はベンチには入っていたが試合には出場せず、ロイック・レミー、ムーサ・シソッコは4年前も今回もベンチで戦況を眺めた。ロリスはGKであり、4年前のプレーオフに出場していたエブラが今回もまた2試合に出場したことを考えると、10月下旬にテレビ番組で解説者を批判したため、規律違反で代表入りが微妙だったエブラをメンバーに入れ、2試合とも出場させたデシャン監督の選手起用は見事としか言いようがない。
そして特筆すべきはこのプレーオフ第2戦の3ゴールがいずれもゴール前の混戦のこぼれ球を押し込んだ得点であったということである。選手、スタッフの執念を感じさせる試合であった。(続く)