第1684回 フランスカップ準々決勝(2) 旧ソビエト連邦の富豪がオーナーのモナコとRCランス

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ホームゲームの続くカンヌ、アウエーゲームの続くギャンガン

 3日間にわたって行われたフランスカップ準々決勝、初日の3月25日は2部のアンジェが4部に相当するCFAのムーランをPK戦で下して3年ぶりの準決勝進出を決めた。
 2日目の26日は18時45分からカンヌ-ギャンガン戦、20時55分からモナコ-RCランス戦が行われた。前日に敗れたムーランと同じCFAに所属するカンヌは4回戦から参戦し、8回戦以降の4試合は同格または上位のリーグのチームと対戦し、1部勢2チーム(サンテチエンヌ、モンペリエ)を含む4チームをいずれもホームゲームで下している。今回の相手のギャンガンは1部であるが、カンヌはまたホームゲームである。一方のギャンガンはフランスカップでは準優勝した2009年以来アウエーの試合が続き、今回もまたアウエーゲームである。

■CFA最後の望みのカンヌ、ギャンガンに敗れる

 カンヌのピエール・クーベルタン競技場には6000人のファンが集まったが、カンヌは38分にレッドカードを受け、1人少なくなってしまう。試合はここからギャンガンのペースとなる。なかなかギャンガンは得点をあげることができなかったが、71分にムスタファ・ヤタバレが先制点、ヤタバレは83分にも追加点をあげ、ギャンガンは2-0と勝利し、5年ぶり4回目の準決勝進出を決める。一方、今回旋風を巻き起こしたムーラン、カンヌのCFA勢はここで姿を消すことになったが、ベスト8のうち2チームがCFA勢という記録は長く語り継がれるであろう。

■アゼルバイジャン人富豪ハフィス・ママドフ氏がオーナーとなったRCランス

 そしてこの日のメインとなる試合がモナコとRDランスである。パリサンジェルマン、リヨン、マルセイユというビッグクラブが姿を消してしまった今年のフランスカップで残っているビッグクラブがモナコである。モナコについては改めて紹介する必要もないが、ロシア人富豪ドミトリー・リボロフレフ氏による大型補強の成果があり、1部復帰1年目で2位につけている。
 対するRCランスは1990年代末から2000年代にかけて欧州カップの常連であったが、2011年に2部に転落し、今季が2部での3シーズン目となる。
 経営面も苦しくなり、これまでRCランスを支えてきた地元の銀行のクレディ・アグリコール・ノールにかわり、アゼルバイジャン人のハフィス・ママドフ氏がオーナーとなる。ママドフ氏はアゼルバイジャンのFKバクーのオーナーであり、RCランスは2チーム目のオーナー、さらにママドフ氏はスペインのアトレチコ・マドリッド、ポルトガルのポルトのスポンサーになっており、アゼルバイジャンの広告がユニフォームに入っている。ママドフ氏はサッカークラブに対する投資をメセナや社会貢献ではなく、ビジネスととらえており、サッカークラブがもたらす富を追及している。富を追求するためにはそのための投資が必要である。

■2部で最大の予算となったRCランスがモナコに挑戦

 このアゼルバイジャン人の投資により、RCランスの今季の予算は2500万ユーロとなった。これは現在の2部チームの中では最も多く、昨年のモナコが3000万ユーロであったから、2部のクラブとしては相当の規模と言えよう。もっとも、今季のモナコは昨季の4倍以上の1億3000万ユーロ、さらに現在リーグ首位のパリサンジェルマンは4億3000万ユーロである。
 リーグ戦ではメッスに次いで2位、このペースでいけば4年ぶりの1部復帰も可能であるが、この試合でモナコに勝利し、弾みをつけたいところである。またモナコに勝てば、さらなる資金の出資と大型補強も考えられ、第2のモナコを飛び越して第2のパリサンジェルマンとなる可能性もなくはない。
 1990年代であれば、モナコ-RCランスというのは欧州カップの常連国同士の好カードととらえられていたが、今回はロシアとアゼルバイジャンという旧ソビエト連邦の富豪がオーナーを務めているチーム同士のダービーとなったのである。(続く)

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