第1690回 準々決勝、2つの逆転劇(5) 途中出場の選手の2ゴールで逆転負けしたパリサンジェルマン
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■デビスカップの逆転勝ちの余韻の残る中でチェルシーとの第2戦
4月最初の週末の4日から6日にかけて行われたテニスのデビスカップ準々決勝、フランスは2連敗から3連勝という18年ぶりの逆転劇を演じ、ドイツを下した。確かに相手は飛車角どころか金銀落ちというメンバーであったが、この逆転勝利はフランスを勇気づけ、準決勝は現在2連覇中で準々決勝で日本を破ったチェコをホームに迎える。
そしてこの逆転勝利の興奮の冷めやらぬ中でチャンピオンズリーグの準々決勝の第2戦が行われる。本連載第1686回と第1687回で紹介した通り、4月2日にパルク・デ・プランスで行われた試合ではパリサンジェルマンが3-1と勝利している。第2戦はチェルシーの本拠地、スタンフォードブリッジ、フランス時間で20時45分のキックオフである。
チェルシーに3-1の勝利というと、本連載の長年の読者の方であれば、第320回で紹介した2003-04シーズンのチャンピオンズリーグの準決勝を思い出されるであろう。当時チェルシーには当時のフランス代表主将のマルセル・デサイーをはじめとしてエマニュエル・プチ、ウィリアム・ギャラス、クロード・マケレレを擁し、対するモナコは現在のフランス代表監督のディディエ・デシャン監督が率い、モナコはレッドカードで1人少ないながらもフェルナンド・モリエンテスを中心とする攻撃陣の活躍で3-1で勝利する。モナコは第2戦では前半に2点を失い、チェルシーが優勢となったが、後半に2点を奪い、2試合通算5-3で3度目の挑戦で準決勝を突破する。
■ズラタン・イブラヒモビッチの代役はエディンソン・カバーニ
このころのチェルシーは大型補強を始め、欧州の強豪の仲間入りした頃であったが、現在ではチャンピオンズリーグの決勝トーナメントの常連、しかも名将の誉れ高きポルトガル人監督のジョゼ・モウリーニョは昨季までレアル・マドリッド(スペイン)の監督として3年連続ベスト4に進出し、その前の年はインテルミラノ(イタリア)の監督としてベスト4に進出、すなわち4年連続でチャンピオンズリーグの準決勝にチームを率いている。
しかし、パリサンジェルマンもチャンピオンズリーグの決勝に進出したモナコよりもはるかに充実した陣容である。ただし、心配なこととしては第1戦で負傷したズラタン・イブラヒモビッチが欠場することくらいであろう。イブラヒモビッチに代わるトップにはエディンソン・カバーニが陣取る。一方、チェルシーはパリでの第1戦に出場しなかったフランク・ランパードとサミュエル・エトーが戦列に復帰する。
■エデン・アザールの負傷のため途中出場したアンドレ・シュールレが先制点
スタンフォードブリッジは3万8000人の満員の観衆、その中にはニコラ・サルコジ前大統領の姿も見える。サルコジ前大統領の隣に座っているのは19年前の準決勝進出の立役者となったライーである。 試合はパリサンジェルマンペースで進み、17分にはチェルシーの攻撃の要、エデン・アザールが負傷退場する。アザールに代わりドイツ代表のアンドレ・シュールレが入る。このあたりからチェルシーも攻撃の糸口をつかみ、32分にはブラニスラフ・イバノビッチのロングスローからダビド・ルイスが背中でつなぎ、最後は交代出場のシュールレがシュートを決め、チェルシーは待望の先制点をあげる。
■フランス生まれのデンバ・バ、終了間際にゴール
同点に追いつけばチェルシー、このままでいけばパリサンジェルマン、緊迫したスコアとなる。後半に入り、52分と54分の2回、チェルシーのシュートがいずれもゴールのバーに嫌われ、パリサンジェルマンは命拾いをする。前係になったチェルシーに対し、パリサンジェルマンも好機をしばしばつかむ。
チェルシーはランパードを下げ、デンバ・バを投入する。バはフランスのセーブル生まれでフランス育ちのセネガル代表である。また、終盤にはオスカルに代えてフェルナンド・トーレスがピッチに入る。これらの交代が見事に的中、87分にチェルシーは左サイドからセザール・アスピリクエタがシュート、このシュートがこぼれたところをバが押し込んで2-0、2試合通算得点は3-3となったがアウエーゴールの差で交代選手が2ゴールをあげたチェルシーが準決勝進出、パリサンジェルマンはパリで先勝しながら、2点差を守れず、逆転され、19年ぶりの準決勝進出はならなかったのである。(この項、終わり)